ぞうもつの森

夕日ゆうや

Zウィルスに感染した俺。

 俺はゾンビになったらしい。

 目の前の姿見を見て、確認する。

 青ざめた顔。包帯の巻かれた腕。

 覇気のない猫背。おっと、これに関しては前々からだ。

 基本ローテンションで生きてきたせいか、俺はゾンビになっても人を襲わずにいる。

「お主、自分の臓物ぞうもつを探さないか?」

「俺の臓物?」

「ああ。それがあれば元の姿に戻れるかもしれない」

 医者である彼はそう言った。

 それなら可能性があるかもしれない。

 俺はさっそく家の外に出て、周囲に視線を巡らせる。

 いた。

 カラスだ。

 カラスが臓物を運んでいる。

 慌ててそのカラスのいる森につっこむ。

 ぞうもつの森だ。枯れた木々に臓物がぶら下がっている。

 ゾンビになってから、力がみなぎってくる。

 でも、これは身体に負荷を与えているのかもしれない。

 ま、いっか。

 俺はカラスの止まった木に向けて跳躍する。

 カラスを捕らえて、その口から臓物を吐き出させる。

「これで、いいんだよな……?」

 俺は戸惑いながらも、臓物を医者に差し出す。

「ほう。ならさっそくやってみるか」

 そう呟く医者を前に、なぜか食欲が沸いてきた。

 俺はその欲に負けて――食った。


 その日、俺は本当のゾンビになった。


                         ~完~

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ぞうもつの森 夕日ゆうや @PT03wing

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