4 僕と始まりの橋

会計を済ませ店から出た。ビルの廊下を歩きエレベーターを使い、出口へと向かった。

なぜか僕は衝動的に建物から出て橋へと歩き始めた。

自分でも説明できないが、いかなければいけない気がしている。

歩道に沿い真っ直ぐ歩く、街はイルミネーションで飾られて粧いをこらしている。


かつて自分は何でもできると思っていた。何者にもなれてないわけだが。

「他人を見下している 下に見ている」 

そう言われてきて20幾年。

「君の書くものには何もないんだ。空っぽだ

リアリティーも伝えたいことも何もない」

なぜだろう無性に思い出すのは

誰にも会いたくないが

誰かしらと話したい

人でも猫でも猿でも家でもいい、誰か僕の話を聞いて欲しい。


街外れの廃墟にたどり着くまでそんなに時間はかからなかった。

息を大きく吸い、吐き出した。

張り詰めた空気が肌に刺さる。身体は何もない。

どこか気の抜けた炭酸のような僕の意識は

少しづつだが生気を帯びてきているようだ。


「やあ」


…猫に話しかけられるとは


「自己紹介をしておこう、私は君であり君の意識であり君の先生である。」


なぜだろう無性に小説チックなのが鼻につくのは


「まあ…あまり時間もないんだが、君は映画は好きかい?。」


まあ、人並みには


「なら、早い君は今から世界を滑る。」


は?


「君は寝て起きたとき同じ世界にいると思っているか?」


ああ、まあ


「よく考えると世界の賞味期限なんてものは1日しか持たないと思わないか?。」



「まあ、分かりやすく言えば違う世界に君は移動しているんだよ。1月1日の世界から1月2日の世界へね。今からそれを意図的に行う。」


平行世界への移動ってことかい?


「我々は、滑ると使うんだがここでは移動が一般的らしい。」


意図的ではないから滑るで意図的なら移動じゃないか?


「君よくつまんないこと気にするって、言われない?。」


そりゃどうも


「なら僕からも皮肉を一つ」


なんだ?


「この物語は君のだが、この世界は君のものじゃない。」


そこで意識が途切れた。


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lie @ryu_nukkr_

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