反省会

第33話 失恋記念日

 紙飛行機の殺害予告を解決して、事務所に戻った。弟子が落ち込んでるだろうな、と思って途中でケーキを買ってみた。適当に……今日は俺の失恋記念日だとか言っておけばごまかせるだろう。


「ただいま」俺は事務所の扉を開けて、「ケーキ買ってきたぞ」

「ケーキ?」ソファで寝ていた弟子が目を覚まして、「お誕生日か何か、でしたっけ?」

「失恋記念日だよ」

「へぇ……あの喫茶店の店員さんにフラれたんですか?」

「まだあの人には告白すらしてねぇよ」なんで俺が店員さんのこと好きなの知ってんだよ。「とにかく……あれだよ。俺にも若かりし頃の恋愛事情があってだな……」

「ふむ……まぁ、ご厚意はありがたく頂いておくッス。ありがとうございます」


 慰めようとしていることがバレたようだ。相変わらずカンが良い弟子である。

 いや……今回は折れの嘘が適当すぎたな。なんだ失恋記念日って。未練タラタラかよ。


 俺がケーキを机の上において、スプーンやら飲み物を準備していると、

 

「さて師匠。1つだけ言っておくッス」

「なんだ?」

「なに真面目な事件をシリアスに解決してるんですか?」


 気になっていたことをつつかれて、動きが止まってしまう。


「ダ、ダメか? 一応ミステリージャンルなんだし、たまにはシリアスなのが必要かなって思って……」

「別に求めてないッスよ」やっぱり……? 「ほらPVを見てくださいよ。明らかに『死を呼ぶ紙飛行機』で減ってるでしょ。長々と10話くらいかけて、訳の分からないものを投稿して……」

「ま、まだ投稿前だからPVは確認できなくてだな……」

「そうッスね。じゃあ、投稿のときに確認しましょう。0PVから0PVになった、という悲しい報告はしないで済むようにがんばってくださいね」

 

 最初からPVが0なら減りようがないからな……


(元から1話に1PVくらいしかなかったので、大して変わってないッス。この物語を最初から最後まで読んだ人がいたのなら、おそらく画面の前のあなただけッス。感謝ッス)


「そもそも……作者の悪い癖ッス。話が脱線して、本編が進まないッス。ムダに長くなっちゃうし……もっとテンポよく書けッス」

「わかってはいるんだがな……」それでもなお、止められない。「今の作者は……とりあえず完結させることを目標にしているんだ。面白くなさそう、って理由で途中で書くのをやめてたら、毎回途中で終わっちまうからな」


 結果として無理やり終わらせようとして、ハチャメチャな展開になることも多い。終わらないよりはマシだと思っているのだが……


「まぁ、わかってるなら良いッス」弟子はケーキに口をつけて、「あ、美味しいッスね」

「そうだろ?」メタ発言は嫌いなので、話をケーキに戻していく。「最近、駅前にケーキ屋ができてな……これがまた美味しいんだよ」

「ありがとうございます。甘いものが苦手という初期設定は、なかったことにします」

「え……苦手だったのか?」

「師匠がですよ」


 俺、甘いもの苦手だったの? そんな初期設定だったの……? 俺も知らなかったんだけど。


「さて……」弟子がジュースを飲んで、「せっかく私の過去編というか……その辺もあったので、そろそろ最終回にします?」

「ネタもないからな」

「ネタは最初からありませんでしたけどね」適当に謎を作って、めちゃくちゃに解決っぽくしただけである。「じゃあ……これで最終回ってことで」

「そうだなぁ……」


 結局この話……なんだったんだよ。最初から最後までメチャクチャで……まともな事件なんてなくて……


 まぁあれだな……


 この弟子と出会えただけでも満足しておくか。初期設定にもいなかった謎のキャラだったし、弟子になるなんて作者も思ってなかったが……まぁ楽しませてもらった。


 というわけで……えーっと……


 最終回です。

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あまりにも適当すぎるバカミス 嬉野K @orange-peel

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