第17話
「それで、どうしてこんな時間に?」
「……あのね、」
「あ、ちょっと待って」
急にベッドから立ち上がって窓に近寄ったかと思えばリアンお姉ちゃんは窓を開けた。
寒い夜風が部屋に吹き込んできて思わず身を縮こませる。
「あなたたち、もう帰りなさい」
「え」
何もない空間に話しかけるその異様な光景に驚く。
でも、確かに何かがいる気配は感じていた。
「あのねぇ、花嫁花嫁ってうるさいよ。うちらは」
「お姉ちゃん、何と話してるの…?」
思わず声をかける。
振り向いたお姉ちゃんは迷ったように眉を顰めると再び虚空に話しかけた。
「ねぇ、この子うちの妹なの。早く帰って…」
「女王様の願いでもそれは聞けません~」
「女王様の妹君なら挨拶せねば~」
一瞬の瞬きの間に見たことのない小さな人間が現れた。
しかし異様なのはその背中に霧のようなものでできた羽が生えていることだ。
しかも浮いているし…2人もいるし…
「なにこれ!!!」
「あ、何して…!?」
「お姉ちゃん、これなに!?」
動揺した様子のリアンお姉ちゃんに聞くと唸ってから渋々答えてくれた。
「うーん、精霊、かな…」
「わっちらはここの森に住んでいる精霊でっす~!」
「うちは生まれつきこの子らが見えるんだよね。そのせいで女王なんて呼ばれちゃってて」
「わっちらの女王様なのに…嫁入りされて…しかも吸血鬼なんかと~!!」
「よ、嫁入り?」
「あーもー、うるさい。ややこしいこと言うな!!」
「「女王様~…」」
なんなんだこれ。
きっと花嫁はパートナーのことだろう。
勝手にそう結論付けてしまう。
精霊を名乗る2人はふよふよとリアンお姉ちゃんの周りを飛んでいる。
よく分からないけどリアンお姉ちゃんは凄い人なんだなってことは分かった。
2人の精霊はあたしの方にも近づいてきた。
そして飛びながら全身を見られる。
なんだか品定めされている気分だ。
「大丈夫。クロエには何もしないよ」
お姉ちゃんはそう言って私の横に再び座った。
2人の精霊は満足いったのかあたしとお姉ちゃんの太ももに1人づつ座ってきた。
「この子も花嫁様ですか~」
「でも幸せじゃない花嫁様です~」
「え」
心臓が跳ねた。
全て見透かされたような感覚に陥る。
「でもまだ間に合います~」
「心を捧げ、もう一度契約を結ばなけば~」
「「わっちらの花嫁様に!!」」
その言葉に一瞬何も聞こえなくなる。
精霊の…花嫁?
あの人から逃げられる?
アリッサお姉ちゃんとリアンお姉ちゃんならレオルさんとローエンさんが守ってくれるはずだ。
なら私は…
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