第16話 クロエside


「…えらく従順になったもんだな」


レオルさんの話が終わってから早々にツィガさんの自室に連れ帰られた。

ツィガさんの部屋に入るなりいきなりベッドに押し倒され、首筋に噛み付かれる。


「痛い!」

「うるさい」

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ昼間ですよ?」

「だからどうした」

「い、嫌ですってば……!」」

「は?何言ってんだお前。人間って皆発情期なのか?」

「ち、違います、けど」

「じゃあ黙れよ」


抵抗虚しくツィガさんに噛まれ、血を吸われていく。

痛みに耐えながら必死にツィガさんを押し退けようとするがビクともしない。


「離してくださ……」

「お前は俺の所有物なんだ。勝手なことするんじゃねえ」

「…」

「返事しろよ」

「……は、い」

「いい子だ」


ツィガさんが満足そうに笑う。

そんな笑顔見たくない。

むしろ憎らしく思える。



「…馬鹿なこと考えるなよ」



首元から口を離したツィガさんは血濡れた口を拭いながらそう言った。


「もう一度言うが、お前が反抗したらあいつら全員殺すぞ」

「……」

「おい、聞いてんのか」

「……はい」

「よし、いい子だ」


またあの笑顔を向けてくる。

吐き気が止まらない。


「お前が俺のことを嫌っていてもいいさ。」

「……」

「俺はただお前が居ればそれでいい」

「……そうですか。今日はもう、いいですか?」

「…まぁいいさ。これからずっと一緒だからな」


そう言うとツィガさんは部屋を出ていった。




ベッドから起き上がって辺りを見る。

ツィガさんの面影なんてないのに面影を覚えるほど一緒にいないはずなのに。

この部屋にいることさえも腹立たしく思えてきた。


「…寝る時に帰ってくればいいよね。」


今すぐお姉ちゃんたちに会いたい。


ふらふらと部屋を出て靴も履かないまま廊下を歩く。


アリッサお姉ちゃんよりも近いリアンお姉ちゃんの部屋をノックすればすぐに返事が返ってきた。

扉を開けたのはネグリジュにガウンを羽織ったリアンお姉ちゃんだ。


その服装に疑問を持って窓を見れば日は沈みきっていた。


「どうしたの?…って靴は!?」

「あ、え?」

「とりあえず廊下では寒いでしょ?中入って」

「うん……」


リアンお姉ちゃんがベッドに座って手招きしてくれたので素直に隣に座った。


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