第15話


そこにはクロエの腕を雑に引くツィガさんと腕を引かれたクロエがいた。


「クロエ!?」

「あーあー。女の子にそういうことするのやめなって言ったよね?」

「こいつが抵抗するのが悪い」

「だからって力づくはよくないってば」


2人の会話を聞きながらうちは急いでクロエの元へ駆け寄った。


「大丈夫?怪我してるんじゃ……」

「…だい、じょうぶ。ありがとうリアンお姉ちゃん」


目元を腫らしたクロエは無理やり笑っていた。

ツィガさんを見ると不機嫌そうにこちらを睨んでいた。

クロエが何をしたって言うんだ。


「……ねぇ、クロエ泣いてるじゃん。あんたが泣かせたんでしょ?謝るべきじゃないの」

「なんで俺が謝る必要があるんだよ」

「なんでって…」

「リアンお姉ちゃん!…いいの」

「クロエ…」

「あたしは大丈夫だから」


その言葉を聞いてツィガさんは嬉しそうにうなずいていた。

何でそんな嬉しそうな顔しているんだ。

クロエを無理矢理従わせたことがそんなに嬉しいのか?

そう思うと段々と腹が立ってきた。


「……ツィガさん、もうやめてください。これ以上やったら許さない」

「はぁ?」

「あんたの事なんて知らないけどさ、クロエの事を自分の所有物みたいに扱うなっつてんの」

「……お前には関係ないだろ」

「関係ある。だってクロエはうちの妹だから」

「……は?血がつながってないのに?」

「それが何か問題なの?」

「ま、まぁまぁ2人とも…」


ローエンさんが止めに入ったところで我に返った。

アリッサ姉さんはレオルさんと何か話しているが、その顔には焦りが浮かんでいた。


「…素直に従う人間が欲しいならうちが従う。だから…!」

「誰が他の吸血鬼のパートナーなんて欲しがるんだよ」

「でも、なんでクロエが…」

「リアンお姉ちゃん。ありがとう。あたしは大丈夫だよ」

「…いい子だな」


まるで子供を褒めるかのようにクロエの頭を撫でるツィガさん。

入ってきたときと明らかに違う態度に気持ち悪さを覚える。


「……ねぇ、あんた本当に最低だよ」

「そうかよ」


もっと悪態をついてやろうかと思った時にちょうどレオルさんが手を叩いた。


「それぐらいにしておきなさい。皆を呼んだ本題に入りたいと思う」

レオルさんの言葉に全員が静かになる。


「本来の予定ではお嬢さん方にそろそろ家事をしてもらおうと思っていたが、お前たちの問題行動はあまりにも目に余る。アリッサさんからの要望で皆が慣れ、落ち着くまでは家事は無しにしたいと思う。」

「今のまま家事をしてもきっと対価の返済にはまだまだ時間がかかるらしいの」


レオルさんの言葉を補足するようにアリッサ姉さんが言った。


「…分かった」


この現状で生きやすくするにはローエンさんに媚びを売るしかないように思えた。

ローエンさんの方を見れば不思議そうに首を傾げるだけだった。

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