第13話


部屋にノック音が響く。

重い頭を持ち上げ出れば、ローエンさんが目を擦りながら欠伸をしていた。


「おはようございます」

「おはよぉ〜」


どうやらまだ眠たいようだ。


「なんかね、レオルのところに行ったらリアンちゃんも連れて来いってさ。急にごめんね」

「大丈夫ですよ。着替えるので少し待っていてもらえますか?」

「うん」


私は部屋に戻ってクローゼットを開ける。

その後ろからさも当然かのようにローエンさんも入ってきた。


こんな栄養失調の体でも一応女なんだけどな…。


そんなこと言っても無駄だろうと思いそのまま着替え始めようかとボタンに手をかければローエンさんは真後ろに立っており、気づいたときには手首を持たれて壁に押さえつけられていた。

ローエンさんは見たことないぐらい真顔だ。


「あのさ」

「なんでしょう」

「…君、僕の事嫌いでしょ」


……バレていたのか。

でもここで折れるわけにはいかない。

素直に答えれば何されるか分かったものじゃないし、対抗できる手段も持っていない。


「そんなことないですよ」

「でも好きって言ってくれないんだ」


苦笑され手首を離される。

強く掴まれたわけでもなかったから痕は残っていない。

それに安心しているといつもの優しい顔に戻ったローエンさんは眉を下げていた。


「僕はリアンちゃんのことが好きだよ。だからもっと仲良くなりたいなって思ってるけど、僕のこと嫌いみたいだし諦めようかなぁ……」

「だから嫌いではありませんって」

「でも好きではないんでしょ?」

「まぁ…」

「そっか。じゃあ振り向いてもらえるように頑張ろうかな」

「…レオルさんに呼ばれているのでしょう?早く行きましょう」

「そうだったね。じゃあ僕部屋の外で待ってるから着替え終わったら出ておいで」

「分かりました」


パタンと閉じられた扉を見届けてから着替え始める。

なんでうちに執着してるんだろ。

まぁ、愛玩動物に向ける感情を恋愛感情と間違えてるんだろうけどね。


「…あの人に抱かれた女性も可哀想だな」


…男色も好むのかな。


男受けよさそうな顔してるしな。

別にいいんだけど巻き込み事故だけは本当にやめてほしい。

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