第12話 リアンside


「リアンちゃん!」

「何ですか?」

「んーん、呼んだだけ♡」


何なんだコイツは…。

申し訳ないがこんなにウザい奴だと思わなかった。


共同部屋を出てからローエンさんは私につきっきりだった。

そして何故か私たちはこのお屋敷に来た日に貰った私の私室にいる。

今まで使っていないせいか、私も何となくこの部屋に慣れない。


っていうか、本当に意味が分からない。

早く自分の部屋に帰ればいいのに。


でもそんなこと口に出すわけもなく、社交辞令的に微笑んでおく。


「ねぇねぇ、僕に質問したいこととかない?」

「契約を結んでいるからと言ってそんなに気を使わなくていいですよ。うちは言われたことやるので」

「そんなの召使と変わらないじゃん」


唇を尖らせて素寝たふりをする彼に呆れる。

いや、普通に考えてパートナーとはいえ他人にあれこれ聞かれたくないだろう。


「あの、じゃあ1ついいですか?」

「うん!何でも!」

「女性を連れ込むのは構いませんがうちを巻き込まないでください」

「へ?」


キョトンとした顔のローエンさんには申し訳ないがこれだけは譲れないので続けさせてもらう。


「香水の混ざった匂いや首元のキスマーク。それとツィガさんに比べて丁寧に短く切られた爪を見れば分かりますよ」

「は、ははっ…えと、これは…」


焦りだすローエンさんに次はこちらが首を傾げる番だった。


「何を焦っているんですか?うちは構いませんよ」

「…女性ってこういうの嫌なんじゃないの?」

「他の人は知りませんが、そういうことをしないと明日を生きていけない人は沢山見てきました。それに、パートナーと言えど恋愛感情もないこの関係に何の支障もないでしょう」


そういうとローエンさんはポカンとしていた。

それから肩の力を抜いて苦笑いを浮かべた。


「君は強いね」

「強くないとやっていけなかったので」

「そっか……あ、まだ眠たいよね。ごめんね」

「…じゃあ寝させてもらいます。お休みなさい」

「うん、お休みリアンちゃん」


そう言ってローエンさんを部屋から見送るとそのままベッドに入った。

やっぱりまだ慣れない。

あたしはこれから先、ずっとこうなのかな……。


「…………」


寝返りを打っても一向に睡魔は襲ってこなかった。

きっとこのまま朝まで眠れない気がする。


「…強いってなんだろうね」


ふと思った疑問を口にするとそれが合図になったかのように瞼が落ちていった。


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