第3話 鬼に金棒、悪女にオタク


「王〜妃〜さっまぁ〜♡」


ぬるり、と窓の隙間から落ちてきた。


従者は軟体動物だったのか、とあまりの驚きに意味のわからない思考になる。


「どうやって入って来たのよ、ここ3階なんだけど」



「どこへでも駆けつけられてこその王妃様の下僕ですよ〜」


「ああそう、気持ち悪いわね」


「はい!ありがとうございますっ」


ありがとうございます??・・・


「・・・とりあえずいいわ、それより頼んでおいた調べ物は済んだ?」


「はい、もちろん!王妃様が以前鏡で見た女性ですが、村はずれにある小さな屋敷の令嬢でした。」


おすわり、と指示された犬のように瞳をぱあ、と明るくして、尻尾が見えそうなくらいに上機嫌で束になった資料をこちらへと差し出す。


一番上の資料を手に取って数ページさらさらと読み進めていると


「なぜこの令嬢を?王妃様の鏡に映った事と関係があるのですか?」


「この国で1番美しいのは、と私は鏡に聞いたのよ」


この質問はいくつかある私の日課のうちのひとつだった、あの日も真実を語る鏡に聞いたのだ。


1と。


そしていつものようにそれは私だと返ってくるはずだった。


だけどその日返ってきた答えは


「・・・マリアンナ嬢」


静かにアロイスが呟いた。


「そうね、だからこそこの目で確かめて対処しなければならないの・・・この国で私は1番美しくなければいけない」


そう話しながら視線は自ずと床へ落ちる。


「王妃様は、世界で1番美しいです!!誰がなんと言おうと・・・鏡の言ったことは戯言だと聞き流してどうか穏やかにお過ごしください・・・!」


「なら、どうして王はこの城へ帰ってこないの」


薄氷はくひょうの上を歩くように静かで張り詰めた空気が部屋の中に広がると、いつもは剽軽ひょうきんなアロイスの言葉が詰るのを感じたが私は話すのをやめない。


「アロイスがこの城に来る2年前の春だったかしら、執務に出たっきりほとんど帰って来てないのよ、帰ってきたとしても顔すら見に来ないわ。まぁ、執務というのが嘘だなんて、ずっと前から知っていたけど」


「それは本当に執務が忙しくて、嘘というのは誤解だということもあり得るでしょう?」


「ありえない、私は自分の魔力を練り上げてを作ったのよ・・・その鏡に映ったの、煌びやかなパーティーで色んな国の美しい女性を傍に置いて笑うあの人が」



「また・・・鏡・・・」


そう一言呟いたかと思えば、アロイスはグッと拳を作り掲げて見せる。


「?」



「わかりました、王妃様・・・私、アロイスは下僕の人生に掛けてその鏡を言ってることを覆します!!世界で1番美しいのは王妃様であり、誰からも愛されていると鏡に問わずとも当たり前だと思わせてみせます!!」


「は・・・?」


「覚悟してください!!!本日から、入念なを始めます!!」








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童謡に載るくらいの悪女なのに過激派オタクがいるんだが? 環 哉芽 @tamaki_kaname

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