愛され過ぎて本気で困ってます
仲仁へび(旧:離久)
第1話
人から愛され過ぎて困っています。
割と本気で困っています。
のろけとかじゃないんです。
冗談とかでもないんです。
自慢なんかじゃもっとない。
だって、相思相愛じゃないから。
だって愛の方向性が一方通行だから。
昔から、愛され体質だった私。
身の回りには、仲良くしたいという男の子たちが多いけれど。
ちょっと彼等は普通じゃないので。
困っています。
通っている学園からこっそり帰宅しようと、足音忍ばせて玄関に到着した私の元に、男子生徒がやってきた。
イケメンだ。
しかし性格はちょっと残念。
「逃がさないよ、俺の子猫ちゃん」
「ひえええええ」
耳元でそんな事を言われるけど、大して好きでもない相手にそんな事されても背筋が震えるだけです。
顔はいいけど、中身が残念な人ってたまにいますよね。
彼は、自己中で、相手の事を考えない男。
やばいですよね。
「俺の事、惚れちゃった?」
違います。
「逃がしてkださ〇×」
私は声にならない叫びをあげて走り出した。
習い事で地域を歩いていると、話しかけてくる男性の影。
私は中学生だけど、相手は立派なサラリーマン。
眼鏡をかけた、知的な雰囲気のする人だがーー。
「ちょっと俺ん家によって、ゲームでもしていかないか?」
「いえ、けっこうです。というか習い事があるんで」
世間体を気にしない。
愛されあれば関係ない。
そんな事を考えて近づいてきて来るこの人は、もうちょっと将来とかを考えた方が良いと思うんですが。
悪い人じゃないんですけどね。
ほら、男女が一緒にいると、間違って過ちが起こってしまったら大変じゃないですか。
そこんとこ、理解していないというか。
危機感がもっとヤバい人なのかも。
「習い事の先生が厳しいんでっ、ほんと失礼しますっ」
私は先生を引き合いにだして全力でお誘いを断った。
「お姉ちゃん、僕とあそんで!」
習い事の帰り道。
公園の前を歩いていたら、あまあまな声のショタに話しかけられた。
この子も、私に色々話しかけてくる子だ。
時々公園で遊んでいる。
一人で。
他にも子供はいるけど。
なぜか一人で。
「あのねできればだけど、これからずーっと、お姉ちゃんと一緒にいたいなっ」
上二匹、ではなく二人と比べて安全なように見えるが、ところがそうでもない。
ヤンデレだ。
小学生にもかかわらず、ヤンデレらしい暗い瞳をした少年は、隙あれば二人きりの世界を望んでくる。
ちょっと怖い。
でもそれ以上に、
お姉さんは君の将来が心配だ。
周りの大人さん、だれかこの子のヤンデレ街道を止めてあげて。
私には体質があるので無理です。
極めつけは、家で待っている血の繋がらないお兄さん。
この人、身内なのに結構やばい。
「遅かったじゃないか。帰宅予定時間を五分も過ぎているぞ。それにGPSで確認したら、コンビニに寄り道なんかして」
やたら私のスケジュールを管理したがるし、プライバシーなんてないようなもので、GPSを使って行動を監視してくる。
「悪い虫がくっついたらどうするんだ」
自分でどうにかしてますので、大丈夫です。
お兄さんの方がもっとやばい。
というか。
もうすでにお兄さんが悪い虫です。
なんて言ったら、心配しているだけなのに、ひどい。と言われるに決まっている。
私は呆れた様子で、お兄さん苦言をやりすごし、自分の部屋に逃げ込んだ。
一日がものすごい疲れる。
ベッドに倒れ込んだら、すぐに睡魔がやってきた。
数秒もせずに、すぐに夢の気配がおとずれる。
夢の中は、男性が存在しない世界だ。
すこぶる安心できる。
そっちの道に目覚めてしまったらどうしよう。
別に悪い事じゃないけど、急にそんな道に行ってしまったら大変だろうし。
なんで私の日常は、こんなに気苦労が多いのだろうか。
誰か私の体質、もらってほしい。
人から愛される体質は、とても便利なものに見えるけれど、相手が盲目的な愛に陥りやすいのが欠点。
この様子だと、誰か一人生涯のパートナーを決めた時に、血の雨が複数降り注ぎそうで怖いな。
愛され過ぎて本気で困ってます 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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