落ち葉となき声。
@Sora_mari
会ってはいけない人。
空は高く、足は落ちた葉の床の上を歩いていく。
かさ、くしゃ。
心地よい枯葉のこすれる音がする。
あまり、枯葉で覆われた地面を歩いたことの無い私は心が足元に釘付けだった。
カサカサ、カサカサ。
先へ先へ。
人が少ないことをいいことに下を向いたまま足を進めていく。
だから私は他の方向から人が来ていることに気が付かなかった。
「あのっ。」
ふと前から何やら必死そうな声が聞こえた。私は思わずびくっとした。頭は心臓のドクドクする音が聞こえるほど真っ白になってしまう。
なぜならその声は、とても聞き慣れていたものだったから。
でも、まさか。
恐る恐る顔を上げる。その目の前に
半年前、私が一方的に別れを告げたあの彼が目の前に立っていた。
あの頃より少し痩せてみえる彼の顔があった。彼は驚きと微かな期待が混じった顔をしていた。
「さち……?」
名前を呼ばれた。知らないフリをしようとしたけども、身体が勝手に反応してしまう。逃げれるのに、彼の目を見たら動けなくなった。
「さち……だよね。」
自信なさげに彼はそう言った。
そっちに行ってはいけない。彼と一緒にいてはいけない。そう、わかっているのに。頭の中でガンガンとダメだと警告がなるのに。
私の足は勝手に動いた。その足は止まらなくて、どんどんの彼の方へ進んでいって、気づいたときにはもう彼が目と鼻の先になってしまった。
彼は素早く腕を動かして私を抱きしめるように掴まえた。
まれで、もう逃がさないかというように、
ここまできたら、もうどうしようもない。私は諦めて、彼の身体に頭を預けた。久々の彼の体温は悲しくなるほど優しくて温かかった。
ふわりと心地よい感触が頭にした。懐かしい感触、彼の手。
「さち……」
彼の声が弱く震えていた。上を向くと、彼の目には涙がいっぱい溜まって今にも溢れそうになっていた。
相変わらず泣き虫だなぁ。そんなに泣くことないだろうに。
…あぁ、でも、そっか。急にいなくなったから、無理もないのか。
頭の中で鳴り響いていた警報音はもう諦めてしまって、私は優しくて弱虫な彼の手の優しさの中で懐かしさに浸っていた。
落ち葉となき声。 @Sora_mari
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