造られたワタシ
「ネオ」と呼ばれたワタシ。
ワタシは、この無機質な灰色の施設の中で造られたのだそう。
「ギル博士もここで造られたの?」
ワタシの問いかけた先には、ヒトの背丈ほどの大きさの機械。その陰であれこれをひねっては押してを繰り返す白衣の老人がいた。
「いんや、わしらはおまえとは違って、おかあさんから産まれてきたんじゃよ。」
「おかあさんってなあに?」
わからないことがあれば些細なことでもすぐ尋ねるのがワタシだった。
ギル博士はそれを疎む素振りなど一度も見せず、いつだって辛抱強く答えてくれた。
「おかあさんというのは、もうひとつ、おとうさんという男の人と一緒に、こどもを育てる女の人のことじゃよ。」
ワタシはこの回答を受けて、とてもワクワクした気持ちになった。
おかあさん。おとうさん。そして、おかあさんから産まれるこども。
きっと、そのこどもは他のこどもと一緒におかあさんとおとうさんになるんだろう。そしたら、またおかあさんからこどもが産まれる。そうしてどんどんこどもが沢山になるんだ、と。
でも、そしたら——
「ネオは産まれてないけど、ネオのおかあさんとおとうさんは?」
きっとこの時、ワタシはギル博士にとても残酷な質問をしたのだ。
「……おまえは、おかあさんとおとうさんが欲しいかの?」
とても、とても優しい宣告だった。
その意味を深く悟らず、目を輝かせてワタシは強く肯定した。
「そうか……、あいわかったぞ!」
ギル博士は、ワタシの製造研究の責任者となって以来、様々な生体実験を繰り返していた。その過程で倫理観は激しく欠損し、その良心は痛みを感じることを放棄していた。
「おまえのおかあさんとおとうさんも、造ってやろう!」
ネオ りび @livilivi_answer
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