紗季 6
私はもうすぐ死ぬのだろう。
思い出が走馬灯のように浮かんでは消えていった。
うちの部のホルンは3人しかいなかった。
だから、私が時々4人目を兼任して演奏していた。
4人目のパートを吹く時、私は「かすかに現れる」という意味で「穂乃果」と名乗っていた。
初めはおふざけのつもりだった。
けれど、別人を演じるのは快感でもあった。
穂乃果になっている時の私は、幼少期の辛い思い出から解放されていた。
そうして私の人格は分裂し、私の体はしばしば「穂乃果」に乗っ取られるようになっていった。
穂乃果の人格は、私ができなかった同世代の異性との恋愛に憧れ、拓也に告白までしていた。
トラウマで屈折した私の人格とは違い、穂乃果の人格はトラウマの影響を受けていない。
だから、穂乃果は私の凶行を阻止しようとしていたのだろう。
けれど、穂乃果は私には追いつけなかった。
この体は元々、私のもの。
だって、私が
人格のルームシェアは、これで終わり。
私と穂乃果は、この世での生を終えた。
< 了 >
ルームメイト 神楽堂 @haiho_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます