【season1】 -War 3- 【不発弾】

【Phase1:実験体】



某日/とある紛争地帯


「まずいわね…ナツキ,残弾どのくらい?」


「ドローン含めてあんまりないわ…シア…借りるわね!」


「こっちはもう鉈で応戦してますー!」


普段の任務であれば何も問題は起こらなかった


偵察,及び殲滅が今回の依頼だ


敵の規模もそこまで多くはない


楽な依頼だった筈だ


だが実際楽な仕事というのは存在しない


数時間前 V.P.B.C拠点/ブリーフィングルーム


「よーしお前らー…って集まり悪いな,私は任務で招集かけたんだけど?」


「Vは荒川の治療,ジーナは先日大破した車輌の修理,カルネスヴィーラはコミケ?とか言うのに出かけてるよ」


「あいつらぁぁ…」


今回V.P.B.Cに舞い込んだ依頼内容とは最近巷で不穏な動きをしているとある傭兵組織に関しての偵察任務


更に敵対する様であれば殲滅までが任されている


「まぁそんな訳で敵の規模もデカくないから少数精鋭で行ってもらう,ただ…妙な事があってなぁ」


「妙な事……ですか?」


「依頼してきたのはダミー会社でね,どっかの下請けなのか色々な会社を経由して私らに依頼が飛んできた…って事は…」


「回りくどいやり方…十中八九世界政府って事ね」


「そういう事,そもそもなんで世界政府が私らに…って思うけどこの依頼…なーんか嫌な予感がね」


「それで…メンバーは?」


「一先ず偵察能力に長けたソフィー,ナツキの2人は確定…あとは万が一にも戦闘になった時の為に…エミリーと…」


あと1人


誰か人手が欲しい


黒崎自身が今回任務に出向かないのには理由がある


午後からはジャックと共にとある企業との会談があるからだ


本来なら偵察任務の際に荒川もしくはジーナを随伴させるのだが2人とも現在は任務に出れる状況ではない


かと言って偵察任務の経験が浅いシルファやロスを使う訳にはいかない,世界政府からの依頼なら尚更だ


「話は聞かせて貰ったっス!」


「お前は呼んでないが?シア」


偵察任務に絶対行かせてはいけない隊員と言えばシアだ


こいつは何でもかんでも爆発させる事しか脳がない


「いいじゃないっスかぁ!もし殲滅ってなったら私がいれば楽勝っスよ!」


「まぁ一理あるが…見てみろソフィーの顔,心底嫌そうな顔してるぞ?」


「もしかしてスコーン食べたからっスか!?」


「死にたいのかしら?」


「んー…データベースにある情報だと…先日も銃器を仕入れているし…何か得体の知れない物も搬入してる…ほぼほぼ黒だし殲滅戦になる事を予想して有りじゃない?」


「私嫌なんだけど…シアは偵察出来ないし…」


「たまにはいいだろ?面白い組み合わせだ」


「私は面白くないけど?」


「普段お前がやってる事と同じだよ」


ソフィーは度々間接的にトラブルを引き起こす


というよりトラブルを誘発させてその様子を楽しんでいる


所謂サディスティックだ


大体ゲラゲラと笑い転げているので誰の仕業かは容易に判断できる


度重なる減給を受けても辞めないのは愉悦を優先しているからだろう


なので今回のは黒崎のちょっとした仕返しだ


「安心するっスよソフィー!私がいるっスから!」


「いるから嫌なのよ…誰かガムテープ持ってきて…」


そんなこんなでソフィー,ナツキ,シア,エミリーの4人での偵察任務が開始された


とある紛争地帯/倉庫


夜間での作戦行動


その為普段とは違い皆黒い装備をしている


闇夜に紛れる為だ


「んー…この服胸キツイっス」


「エミリー,鉈借りてもいい?」


「ソフィー…もしかして私の事嫌いっスか?」


「静かにしてれば好きよ」


偵察任務を主に任されているのはソフィーとナツキの2人だ


ソフィーはV.P.B.Cへ来る前から偵察任務の経験が長く,ナツキはドローンによる偵察及び戦闘を得意としている


エミリーは基本的に何でもこなせるオールラウンダー


ただ少々頭のネジが緩んでいるので専ら拠点での待機が多い


問題なのはシアだ


殲滅戦においては数々の戦績を上げる…のだが,使う物が使う物だ


不必要な被害を出してしまう事がある


更に言えば偵察任務を任せられる様な奴ではない


現に今だって偵察任務用の装備にこれでもかと重火器を持ってきている


まぁ元々殲滅戦になった時って事で今回メンバーに選出されたから仕方ないと言えば仕方ない


「…ナツキ,どう?」


「やっぱり黒いわね…でも気になる点がある,傭兵って言う割には白衣の人が多い…研究者かしら?」


「…バイオテロ…かもね」


最も悪質なテロはバイオテロだ


容易に作れ,大量虐殺を行える


そう言った連中は自滅するか,V.P.B.Cではないもっと専門的な組織が殲滅を行う


V.P.B.Cには対バイオテロに対する手段がないからだ


Vの手にかかれば解毒剤を作る事は出来るが時間がかかり過ぎる


使われる前に潰すしかない


「はぁ…良かったわねシア,出番よ」


「任せるっス!」


この倉庫を爆破するしかない


当然リスクは高いが幸いにもここには人は寄りつかない


万が一にも薬品が流出したとしても被害は出ないだろう


「Fire!!」


倉庫目掛けてRPGを発射


大きな爆炎が上がり倉庫内にいた敵兵が姿を現す


「わらわらと出てきたわ…ねっ!」


「わぁ…先輩の銃凄いですね…」


「対物なんて人に使う物じゃないからね,ドローンでも援護するわ」


闇夜の奇襲


敵は傭兵と聞いてはいたが随分とお粗末だ


統率がまるでとれていない


妙だ


「……待って,何か変よ…」


「もう1発いくっス!」


「ちょっと…シア!?」


再度RPGによる爆撃


倉庫は粉々に吹き飛び火柱があがる


「これだけやっておけば生存者はいないっスよ,あとは確認するだけっス」


「はぁ……まぁいいわ…」


人の気配はしない


恐らく敵は全滅している筈だ


念には念を入れて爆破された倉庫へと近づき生存者を確認する


「…クリア,人の気配がしないわね」


「それなら任務完了…早く帰って……変ね…」


「変って…何がっスか?」


「……ナツキ,さっき科学者は何人いた?」


「少なくとも8人はいたわね」


「ここにある死体で白衣を来ているのは1人…残りはどこに行ったのかしら…」


「燃え尽きてしまったのでは…?」


「そんなに早くは燃え尽きない…嫌な予感がするわ…」


そもそも科学者がいる事自体にソフィーは違和感を感じていた


バイオテロ,それなら何故今までは行わなかった?


次からバイオテロに切り替えるつもりだった?


そんな偶然があるのか


「………6人…ここが連中のアジトであるなら護衛が少な過ぎる…」


全てがおかしい


嫌な胸騒ぎがする


「…先輩…これ……吹き飛んだ倉庫の破片ですけど…このエンブレム…」


「…世界政府…つまりここは世界政府の施設って事…?」


間違いない


この悪趣味なエンブレムは世界政府のものだ


「……データベースにありました,ここは世界政府の科学施設…何十年も前に閉鎖されていますね」


「そこを偶然にもこいつらが使っていた……?いえ…科学者がいたとなると…まずいわね…」


世界政府の技術は何世代も先をゆく


閉鎖された施設とは言えそれを悪用されたら被害がどれだけ出るか分からない


「…データベースによるとここの倉庫…いえ,施設には地下が存在してるわね」


「突入するわよ」


「かしこまりっ!」


ここに死体がないのなら科学者は地下に逃げた筈だ


地下に一体何があるのか?


(何この感じ…あの時と同じ…絡みつく様な嫌な空気が通路一帯を支配している…)


ソフィーは一種の直感の様な感覚が他人に比べ鋭い


それ故に優秀な兵士ではある


だが今はそれが裏目に出ている,この得体の知れない気配


恐怖心を煽られる


恐怖心は体をこわばらせ,引き金を引く指を鈍らせる


ソフィーに限らず他の3人も感じ取っていた


「……死体っスね」


「えぇ…地下に逃げた科学者…被弾してここで息絶えた…って訳じゃなさそうね…」


通路には白衣を着た死体が転がっている


銃撃や爆撃によって死んだ訳ではなさそうだ


「…何かいるわね…」


「…ドローンで施設内の偵察をします」


地下は狭いうえに視界も悪い


こんな場所で戦闘になったら部が悪い


先にこちらから敵を発見した方がいいだろう


「どう?ナツキ」


「全機反応無し…特に怪しい影は…いえ…3番機が何か発見しました,この先の通路を曲がった部屋です」


「確認に行くわよ」


敵影ではないがドローンが何かを発見したみたいだ


偶然にもここから近い


実際にこの目で確認した方がいいだろう


「…クリア…ここは……培養室…?」


「……ツッ!総員直ちに地下から脱出するわよ!」


廃棄された培養カプセル


間違いない


ここは世界政府の実験施設,よりにもよって生物兵器の類だ


恐らくここの物を使っていたのだろう


明らかに最近まで使用されていた形跡がある


そして床には培養液


得体の知れない空気の正体


それはこの培養カプセルの中にいた"ナニカ"だ


「シア!地下室への入り口を爆破して!」


「了解っス!」


脱出した後に入り口を破壊


得体の知れないナニカがいるのであればここで封じ込める必要がある


「はぁっ…はぁっ……」


「何なんですか…今の……」


全員が感じた殺気


あの場にいたら確実に殺されていただろう


「…そう簡単にはいかない…わね…」


あの殺気


あれは地下室から放たれたものではない


「え………」


1人の人影


もう既に外へと出てきていた


「…………」


歪だ


人の形はしているが人ではない


「データベース該当あり…!カテゴリーB……ツギハギです…!」


「カテゴリーB……厄介ね…」


カテゴリー


その生物の危険度を現す単位だ


そしてこの単位を使用しているのは世界政府だけである


そこから導き出された答え


目の前のこの生物は世界政府の作り出したバケモノだ


「…………」


「…シア?」


「私がやるっス…!」


「馬鹿っ!1人で飛び出すなっ!?」


シアが急に単独で仕掛けた


咄嗟にカバーに入る


しかし…


「…………」


「こいつ…やっぱり…!」


銃弾を受けて尚も反応がない


それもその筈だ


目の前の生物は通称ツギハギと呼ばれているバケモノだ


カテゴリーB,その危険度は一体で街が滅びる程の危険度を指す


「目よ…!目を狙って!」


目を潰せば戦闘も楽になる


だが問題なのはその数だ


「こいつ…背後まで…!」


全身にまで広がる夥しい数の瞳


ツギハギ


世界政府が作ったこのバケモノのコンセプトは人体強化だ


優れた人間の部位をバラバラの状態にしてより強い部位のみを繋ぎ合わせた生物


目の数,腕の数,足の数


それらを意のままに増やせる


「私が…私がやらないと…駄目っス…!」


「落ち着いてシア!シア!!!」


「ァ……ガッ………!?」


「え………」


何かが飛んでいく


それも凄まじい速度でだ


目の前にいた筈のシアがいない


「…………」


足だ


ツギハギの足が転がっている


「シア……さん……?」


背後には倒れているシアの姿がある


ピクリとも動かない


「今の音…自分の足が吹き飛ぶ勢いで蹴ったっていうの……!?」


「私…目が覚めてから頭イタイ…お薬……俺の薬…」


「エミリー!ナツキ!来るわよ…ッ!」


ふらふらと歩いていたかと思えば急にこちら側へと急速に接近して攻撃を仕掛けてくる


「僕の家族ドコ?明日は仕事あるノに…私のバッグないヨォ……」


「な…なんなんですか…さっきから支離滅裂な事言って…!」


「エミリー落ち着いて,あいつの言葉に耳を傾けちゃダメ!」


言動が不安定だ


いや,言動だけではなく動きもだ


まるで多重人格の様にコロコロと変わっていく


それが更に不気味さを増している


「イタイ……いたた……悪い…?アハハ」


「足が再生してる…?」


「この特徴…"アメーバ"の個体と酷似してます…!」


「くっ……面倒な生物を作り出してくれたわね…」


「アソぼ?鬼ごっこ…私の番ネ」


「避けて!エミリー!」


「うわわっ!でも腕の一本くらい…!」


「アー…」


ただ闇雲に本能のままに攻撃するのが唯一の救いだろう


これだけの強さを持ちながら傭兵の様に戦い方を知っていたらそれこそ手がつけられない


「通信は…駄目ね,援軍を呼ぶ事も出来ない……ナツキ!核はどこにあるの!?」


「分かりません…ツギハギは個体で核の位置が違います…!」


「…探りながら戦うしかないわね…」


これまでもバケモノとの戦いはあった


しかしそんな事は稀だ


確実な手段という物が存在しないのだからタチが悪い


しかしここで武器を下ろせば殺されるのはこちら側だ


死ぬ為の戦いはしない


決して


【Phase2:造られた魂】



ここはどこだろう


確かさっきまで私は戦場にいた筈


なのに静かだ


もしかして死んだ?


いや…私自身が分かっている


そう簡単に死ねない身体なのを


体を起こし辺りを見渡す


何もない空間にぽつんと椅子だけが置かれていた


「懐かしいっスね…これ私が子供の時にお気に入りだった椅子っス…なんでこんな場所に……?」


子供の時よくこの椅子に座ってゆらゆらと揺られていた


それだけの事が楽しくて私はこの椅子が大好きだった


「…!この花…これは私が育ててた……」


段々と周囲の景色が鮮明になっていく


小さな子供部屋


窓がなく,ここが地下である事を嫌でも突きつけられる


扉の横に付けられた機械,カードキーがなければ開けられない


この場所の事をよく覚えている


ここは私が"造られた"場所なのだから


「は……ははっ…まさか走馬灯ってやつっスか…?」


人は死の直前,今までの人生がフラッシュバックの様に蘇るという


まさに今私が経験してる現象がそれなのだろう


「通路も同じっスね…」


通路へと出る


同じだ,あの時と同じ


蛍光灯の一本が切れたまま放置されている所まで同じだ


記憶が確かならここの施設には私がいる


確信がある訳じゃない


けれど私自身に会ってみればこの状況が変わるかも知れないという根拠のない希望だった


「7番はどうだ?」


「まるで駄目ですね,不良品です」


「ふむ…しかし8番の個体はなんなんだ?」


「分かりません…我々の想定外の個体ですね…」


「……………」


廊下を歩いていると何人もの科学者とすれ違う


大体話している事は実験体の事だ


何故私自身が知らない記憶を辿れるのかは分からない


けれどこの8番の個体というのは分かる


「……ここっスね」


エリア11


ここは生体実験室と呼ばれている区画


幾つもある扉の中から私は迷わず一つの扉を開き,中へ入った


「どういう事だ!我々は多額の資金を援助した!なのにあの個体達はまともに成果もあげられない!それどころか8番の個体はなんだ!?私は戦士を作れと言ったんだぞ!」


「分かっています,しかし実験は失敗の繰り返しです,寧ろあの8番の個体は私達が目指していたものとは違いますが優れた耐久度を見せています」


「どうせ使い捨てなのに耐久性がなんだって?いいか,闘争本能こそ戦士に必要なものだ!なのに人も殺せない様なあの個体は失敗作もいいとこではないか!」


「では昔の様にバケモノを生み出しますか?分かっているでしょう?あの方はそれを望まないと」


「ちっ………!」


懐かしい姿


懐かしい声


今でも覚えている


この人を,この声を


「シア……博士……」


「はぁ……全く上層部は無能ね…」


博士は私を造り出した世界政府の科学者だ


強い兵士を,戦士を,兵器を


その為に様々な研究をしていた


「はかせー!」


「あら貴女達…今日の実験は終わったの?」


「つかれたー!」


「今日は昨日程いたくなかったよ!」


何人もの子供が部屋に入ってくる


そしてその中の1人


「そう,ライリー?大丈夫?」


「さっき変な人に殴られたっス…失敗作って…」


「…違うわよ,貴女は失敗作なんかじゃないわ」


ライリーと呼ばれた少女


それが私だ


私はここで造られた人工的な生物


実験の成果を出して役にたつ為に生み出された


その事に疑問を持った事はなかった


それが私の造られた意味でもあったからだ


私は人間ではない


人間に限りなく近い姿の生物だ


異能体…そう呼ばれていた


その名前から異能と関連性があるのか…その考えは正しい


人ならざる力を持った人工的な生物の精製


それが目的で私…いや,私達は造られた


けれど研究は難航していた


当初は人の形を保っているだけでも奇跡だった


けれど不完全な個体が多く,その多くが封印,破棄された


私達異能体は第五世代の生物だ


「博士…私外に出たいっス…」


「外出は明日でしょ?もうちょっとだけ我慢してね…」


「……うん」


私達第五世代の異能体の特徴は人間のDNAから生み出された事だ


それ故に皆同じ顔をしている


性格も同様だ


けれど私だけが他の個体とは違った性格,口調,行動を見せた


突然変異,失敗作,不完全…と様々な呼び方をされた


この時点ではまだ異能を持った生物を生み出す技術は世界政府にはなかった


何度も生物を生み出す度に稀に能力を持った個体が現れる程度だった


それが偶然にも私だった


「記録:No27,個体番号8番:エイト=ライリー,DNAの突然変異によって生まれた個体,他個体よりも闘争本能の数値は低く本プロジェクトにおいては失敗作であるとも呼べる,しかし耐久性の数値が異常に高く,これは過去に造られたどの個体よりも優れている,偶然の産物とも呼べる,だが非常に優れた個体と私は考える」


「…………」


シア博士


私を造り出した人間


この頃は何も思わなかった


私の母親の様な存在だと思っていた


実際は違う


その事に気がついた頃には私は高校生くらいの年齢だった


「クリア!」


「こっちも!」


「お疲れ様,試験合格よ」


「……………」


この歳になると疑問に思う事の方が普通だった


けれど私以外の人は疑う事すらしない…いや,出来なかった


私達は幼い頃からこの施設でずっと暮らしてきた


博士やその他の科学者達に勉強も教えられてきた


今思えば教育という名の洗脳だったのだろう


私は他とは違っていた


反抗的なのが幸運だったのだろう


真面目に勉強もしていなかった


「何故他の者達と同じ事が出来ないんだ!」


「他と同じ…だとしたらあんた達はなんなんスか?同じじゃないっスよね?」


「なんだと!!」


「すみません,この子の教育は私が行いますから…」


「…………」


嫌だった


シア博士も,他の科学者も


私の事を道具としか見てくれていない


私は1人の人間だ


造られた異能体じゃない


知識も何もかも私は独学で勉強した


他よりも出来が悪い


それが普通だ


当たり前の様に皆と一緒の事が出来るなんて間違っている


「おい貴様!一体何をやっている!!」


「何って…言われた通りここにある武器で的を撃っただけっスよ?」


「ふざけるな!」


いつもの訓練


与えられ武器を使い的を撃つだけ


そんな訓練も私は嫌でまともにやらなかった


始まりは些細な反抗心


私が手に取った武器はロケットランチャー,爆破物だった


使い方もどれだけの威力を持っているのかも理解していた


手に持ち,撃つ


大きな爆音と爆風で辺りは騒然となった


ざまぁみろ


だがこの時の出来事は後に自分の首を絞める事となった


それは私が片手で,しかも全くの反動を受けた様子もなく撃ったからだ


この事から私の扱える銃器の適性はより重いもの,重火器系統だと判断された


重火器での戦い方を骨身に染みるまで叩き込まれた


元々反抗的だったのも相まってほぼ虐待に近い状態だった,しかし倒さなければ自分が殺される


何度も何度も繰り返していく内に私はある事に気がついた


痛覚が鈍い


いや,身体に傷がつく事がなくなっていった


変異したDNAが長い年月をかけて更に自分自身の身体を組み換えていっている


私は恐れた


人間でなくなっていく自分自身を


このままでは本当にバケモノになってしまうのだと


人間でいる内に死にたい


そう思う様になって私は無断で敵の殲滅を行う様になった


自分を殺してくれる相手を探して


けれどそれすらも奴らに利用された


バケモノを狩るバケモノ


世界政府が過去に造り出したバケモノを殺す道具として私は使われた


私を殺せる人間はいない


それならバケモノを利用してやろう


けれどそれも上手くはいかなかった


自ら死ぬ事が出来ない


DNAに刻まれた生存本能が身体を勝手に動かして死ぬ事を許さなかった


それどころか悪化の一途を辿ることにもなった


私達第五世代は闘争本能を高め,戦士として造られた


その闘争本能が次第に私の中で目覚めたのだ


バケモノを認識すると闘争本能が命じる


殺せと


この結果から私は異能体としての評価が上がっていった


科学者達の思惑通り,兵器として私は完成に近づいていった


「"ゲノム"討伐お疲れ様,次のターゲットは"ツギハギ"よ」


死にたい,けれど死ぬ事が出来ない


この矛盾は私の心を壊すのに十分な理由過ぎた


次第に考える事も少なくなっていった


「随分と悪趣味なバケモノっスね」


「ァ……僕ら……私は……嫌…だ」


「嫌だ?バケモノはバケモノらしく死んだ方がいいっスよ」


「…シテ……戦い……嫌……」


いつも通り引き金を引くだけ


それが出来なかった


気がついてしまった


目の前のバケモノが自分と同類なのだと


勝手に造られ,勝手に殺され


あまりにも理不尽過ぎる


私は…殺す事が出来なかった


みすみす見逃してしまった


今までの戦績のおかげで酷く罰せられる事はなかった


私は施設へと戻り過去のデータを漁った


博士の端末から


【カテゴリーB ツギハギ】

-人体強化を目的として製造された個体-

-個体を作るのに6〜10人の人間が必要-

-拒絶反応及び自我の崩壊を確認-

-人間としての感情が要因と考えられる-

-9年前にプロジェクトは凍結-


私は目を疑った


実験台となった人間の自我が,感情が残ったままなのだと


無理矢理バケモノにされた被害者だ


じゃあ今まで私が殺してきたバケモノは?


罪悪感と嫌悪感が私の心を満たした


同じなんだ


私も,彼等も


「私もう戦えないっス…博士」


「優秀な戦士の貴女が…?」


「私は戦士なんかじゃないっス!!勝手に造って…勝手に殺して…!こんなのあんまりじゃないっスか!!!」


「………それが貴女自身の考え,答えって事かしら?」


「そうっス…もうこんな場所にもいたくない…こんな施設出てってやるっス…!」


「…警備,彼女を独房へ」


「離せ!!離すっス!!!殺してやる…殺してやるっス!!!!」


私は独房に入れられて長い時間を過ごした


ある日を境に私と同様に第五世代の異能体全員が独房の中へと入れられた


破棄が決定したのだと,博士はそう告げてどこかへ行ってしまった


偶然にもその時だった


施設が傭兵に襲撃を受けた,それがV.P.B.Cとの出会いだった


私はバケモノになりたくなかった


人間として,戦争を終わらせる戦争屋として戦う選択を選んだ


V.P.B.Cに入ってからは知っての通り


今までで1番使える武器を手に取り爆弾魔として戦ってきた


けれど私はやり残した事がある


世界政府のあの博士への復讐だ


任務では度々私と同様の存在,異能体との交戦もあった


殺したくはなかった


しかし殺さなくてはいけなかった


任務としてもある,だが異能体には全て追跡用のチップが埋め込まれている


入隊してすぐの頃に身体検査の時にそのチップが引っかかり摘出された


だが他の個体は違う


チップは位置情報を送信している,それならそのチップを回収出来れば奴らの居場所が分かる


異能体実験の責任者はあの博士だ


信号を送っているとすれば必ずあの博士の場所だ


見つけ出して復讐を果たす


だがチップには自己破壊機能が付いていた


取り出せばすぐに破損する仕組みになっているらしい


今日までに何体もの異能体を殺してきたが結局あの博士を見つけ出す手掛かりは何一つ得られなかった


ここまでは私の持っている記憶だ


「……………」


私が独房へと入れられた地点


私は変わらずこの走馬灯の様な空間を,時間を自在に動く事が出来た


死ぬ前にせめてもの神の贈り物だろうか?


丁度いい機会だ


知れなかった事が知れる


もしかしたらあの博士の行方が分かる発見があるかも知れない


向かった先は博士の自室だ


いかにもお偉いさんが与えられていそうな部屋だ


棚にある一冊の本を手に取る


過去に造られた異能体が記された標本の様なものだ


悪趣味過ぎて吐き気がする


これまでに何を造ってきたのか


私の知らない個体の事まで事細かく書かれている


その数は何百ページにも渡る


一体どれだけ好き勝手やれば気が済むのだろうか?


「……!」


博士が部屋へと帰ってきた


咄嗟に本を戻し隠れる


別に見られている訳でも気付かれる訳でもないのに


「…やった……やったわ………遂に造れた…これで…!」


随分と喜んでいる


そんなに嬉しいか?


勝手に造って


勝手に使われて


勝手に殺されて


出来るなら今すぐにでもこいつを殺してやりたい


シア・ライリーという名前


シアという名前は第五世代の私達全員に最後に付けられた識別名だった


個人を識別する為の識別名は私で言えばライリー


それまでは何番目に造られた個体かを識別する為の番号しか与えられていなかった


そしてこのシアという名前は博士の名前と同じだ


元となったDNAがこの博士自身の物だったからだ


自分のDNAすら研究の為の道具としか見ていない証拠だ


「えぇ,入ってちょうだい」


「失礼します」


また誰か部屋へと入ってきた


「手間をかけさせてごめんなさいね,貴女の様な記者にこそこの事実を伝えておきたくて」


「いえいえ,私は情報さえ貰えれば,寧ろお金を払ってまで取材を受けたがる人なんて稀ですよ?」


「私には時間が限られているから…ではさっそく始めましょう」


「えぇ…それで世界政府が…いえ違いますね,貴女自身の造り出した最高傑作…の件でしたね?」


「えぇ,私は何十年も私は異能体の研究を続けてきた,当初は奴ら…いえ,強大な敵が現れた時の為にそれに対応出来る存在が必要と判断して様々な生物を造ってきた」


「兵器の開発と同じ…しかし倫理観の方は…聞くのも野暮ですかね?」


「当然,私は科学者…倫理観なんか全く気にも留めなかった,研究に没頭して,研究の成果が見れる度に悦びを覚えた…それが科学者という生き物よ」


「深くは追求しません,そんな貴女が造った最高傑作というのは?」


「異能体…それは現在第五世代までになる…けれどそれが最後になる…そう確信出来る個体…いえ,人間を造れたのよ」


「…人造人間…クローンという事ですか?」


「私のDNAを元にした…強いて言うなら私の子供達,シアシリーズとでも呼称しましょう,その内の1人が思わぬ成果を遂げたの」


「その1人…というのは?」


「ライリーよ」


「……ツッ!」


挙げられた名前は私の名前だった


一体どういう事だ?


「ある時を境に私の考えは変わったの,より強い物を造り出すのが答えと…そう考えていた,けれど違う,貴女はこの戦争をどう思うかしら?」


「無益な争い…でしょうか?」


「えぇ…けれどもし,その戦争が仕組まれているとしたら?」


「…私には出せる答えがありませんね」


「賢いわね,戦争に終わりは見えない,だからこそ私は自分がやるべき事を決めた,それが未来よ」


「未来…」


「私は長く生きれない…だからこそ未来を生きれる自分を…いえ,人間を生み出す事にしたの」


「それが貴女自身のクローン…と」


「手頃に使えるのは自分自身のDNAだったから,そして生まれたクローン達の中で唯一他と違った反応を示したのがライリーだったの」


「ふぅむ…それでその子が最高傑作…って訳ですね?」


「えぇ…彼女は1人の人間として生きている,私のクローンだから私と同じであるというのは間違い,十人十色,皆が違うのが自然なのよ」


「……貴女自身の本心を教えてもらえます?」


「…私の夢…かしら」


「造り出して,戦わせる事が…ですか?」


「本当なら私自身が戦うべきよね…けどそれが出来ない…私だって酷な事をしていると思う…けど…ライリーには平和な世界をその手で掴んで…その目で見てもらいたいの…」


「なるほど,では本題に入りましょうか,私は何をすれば?」


「とある組織へ依頼を出してもらいたいの,そして彼女を…ライリーを必ず救い出してもらいたい」


……………


言葉が出ない


私は兵器として造り出された異能体


戦う為の道具


そう思っていた


そう思っていたからこそ戦えていた


卑怯だ


本当の事を伝えていれば済む話なのに


それをしなかった


いや…出来なかったのだろう


この頃の私に伝えても余計な負担を与えてしまう


自分で気付かせる為に敢えて黙っていたんだ


私は今まで復讐の為に戦ってきた


この博士を殺す為に


愚かだった


ただ復讐に支配され,視野が狭まっていた


これではただの道化だ


私自身のやっていた事


戦争そのものだ


私自身が戦争の種となりつつあった


けれど違う


今なら分かる


私自身が本当の意味で戦争を終わらせる戦争屋としてこれから戦っていくんだ


「シア…博士……」


「…私の役目はこれでおしまい,聞こえてるかしらライリー…ううん,シア,いつか貴女が平和な世界に生きる事を私は願っているわ…」


博士が何かを持っている


あれは…拳銃?


そんな…まさか……


「愛してるわ,シア」


「博士……っ!!!!」


【Phase3:シア】


「くっ…もう弾が……」


「ドローン破損!こっちももう手がありません…!」


「鉈も壊れかけ!てかシアのランチャーは!?」


「ごめん…さっき破壊されちゃったわ…」


「遊ボ?やだやだ…一緒ニ…」


「くぅっ……!」


「ソフィー!」


「ここまで…ね……」


「待たせたっスね…!」


「シア!?」


目が覚めた


ただ目が覚めただけじゃない


まるで今まで眠っていたみたいだ


今なら分かる


私が何の為に戦うのか


私が何の為に生きていくのか


「あとは私に任せるっス,寝てた分は働くっスよ」


「武器も無くて一体どうするって…」


武器ならある


博士が造ってくれたこの身体が,与えてくれた魂が!


「あグ?あ…?」


「効くっスよね?ツギハギ」


「嘘…素手で…」


ツギハギのベースは何人もの融合した人間だ


ならばするべき事はその全てを殺す事


「あは…アヒ…」


「これは……」


「気をつけてシア!そいつアメーバみたいに身体を再生させてくるわ!」


「だったら…!」


ランチャーはない


それならこうするまで!


「うわっ!?」


「シアっ!?」


弾頭で直接ぶん殴る


当然そんな事をすれば爆発は必然


「いつつ…こんな頑丈な身体にも感謝っスね…!」


こんな事で私の身体は動かなくなる程脆くない


私の異能体としての能力


闘争本能とは真逆に私が増強されたのは防衛本能だ


身体そのものが頑丈なだけではない


本能がそうさせる


爆風を真正面から受けている


だがそれは見た目だけだ


身体が頑丈なのに加えてもう1つの力


異能体が造られた理由


異能


不完全ながら私には異能としての力が宿っている


自分の身体を保護するように一種のシールドの様な物が存在している


爆風を受けて尚平然としているのはその影響だ


だがそれも万能ではない


銃弾を弾いたり相手の拳を防ぐ…なんて事は出来はしない


だが爆風の様な間接的な衝撃であれば威力を消せずともかなり軽減する事が出来る


身体の頑丈さと合わせて私が立っていられる理由だ


「ここからはタイマンっスよ,どっちが先に倒れるか試してみるっスか?」


「悲しイ…1人……どうシて…」


「1人?そんなたくさんくっ付いて何言ってるんスか?それともバケモノみたいな存在が自分だけだと思ってるんスか?」


「意味……?分かラな………」


「バケモノが1人だと思ったら大間違いっスよ…!!」


拳を握り思い切り殴り飛ばす


「身体が……再生していない……?」


「アメーバ,確か微生物がベースの異能体っスか?欠損した部位を再度構築して元に戻る…けどこれには欠点があるっス,体組織が再生する際には細胞が活性化してる必要があるっス,それなら細胞が悲鳴を上げる様な状況…この炎に囲まれた状態なら再生は不可能っスよ!」


あの記憶の中で見た1冊の本


あの中には今まで博士が作ってきた異能体の全てが記されていた


欠点が何なのかも事細かに!


「た…スケ……」


「…………」


段々と融合した人間達の数が減ってきて自我がしっかりとしてきたみたいだ


私が出来る唯一の救う方法は殺すしかない


せめてもの償いだ


博士の造り出した異能体


その全てに終止符を打つのは私だ


私でないといけない


勝手に造られて


勝手に殺されて


その気持ちを痛い程理解出来る


だからだ


同じ異能体として


他の誰でもない私が全て背負うんだ…!


「…………」


「…終わったっスね……」


「え……なに……あれ………」


「生身で身体を…」


今まで使っていた異能


私はこの日初めて攻撃へと転用した


爆風を逸らすくらいのシールドでもそれを防御だけでなく攻撃に使う事だって出来るはずだ


そしてそれは正しかった


どうやったのかは自分自身にも分からない


不思議と頭にあったのは博士が昔教えてくれた私の名前についてだった


"ライリー"


勇敢という意味を持つこの名前は戦士として,そして博士が私が平和な世界で生きるまでの戦いを案じて付けてくれた名前なのだろう


勇気が湧いてくる


必ずやれると


「…おやすみなさい,元人間だった人々達…」


私は人間じゃない


バケモノでもない


異能体だ


私は異能体でなければいけない


博士は私の事を人間として扱ってくれていたが私にはまだその資格はない


平和な世界


それを実現するまで私は異能体のままだ


「シア……」


「…ん,ソフィー……終わったっスよ」


「この馬鹿!勝手に倒れて勝手に1人でカッコつけて…あんたが何考えてるのかは私には分からない,けど仲間じゃないの!?」


「…それは分かって…」


「分かってないわ,今の戦いを見てて分かる,1人で抱え込むな,少しは仲間を頼りなさい」


「そうです!私達だっています!」


「そうよ,体を交えた仲じゃない」


「……!ありがとうっス…!」


そうだ


私は1人じゃない


支えてくれる仲間


共に戦ってくれる仲間達がいる


そしてその仲間達と共に目指す


平和な世界を


その為に戦争を終わらせる戦争屋として戦うんだ


「さて…なんか終わったらお腹空いた………っス…ね」


「シア!?」


あぁ


なんだか酷く疲れた


眠い


このまま眠ってしまいそうだ


「……………」


『……………』


2日後/V.P.B.C拠点/医務室


「うーっす,あのバカまだ起きない?」


「起きてねぇよ」


「まったく,シアは寝坊助だね」


「荒川,てめぇの傷はもう治ってる,さっさと出てけ」


「酷いじゃないか,誰の所為で刑務所の中に入って乱暴されたと想ってるんだい?」


「自業自得だ,文句言うなら乗せたジーナにでも言え,そしたらまた治してやる」


「死ねって言ってる?」


「はぁーったく…最近は依頼も立て込んできてるからなぁ…なんだかんだシアがいないとスムーズにいかない事もあってね」


「普段爆発ばかりさせてるけどなんだかんだで貴重な人材だからね,シアは」


「そもそもソフィーの話じゃロケランの弾頭で殴りかかったんだろ?そんな事して生きてる事が不思議だ,寧ろ目立つ傷がない,ただの出血多量で意識失ってただけだ,とっくに目を覚ましてもいいはずだ」


「Vでも原因は分からず…か」


「私の専門は人間なんでな」


「う〜ん………」


長い間眠ってた気がする


ここは…


医務室みたいだ


そうか


あの後私は倒れてしまったんだろう


じゃなければ私が医務室のベッドで寝る事は許されない


そもそも立ち入りすら禁止されているのだから


「よぉ目ぇ覚めたか,覚めたんならさっさと出てけ」


「相変わらずっスね……患者にはもっと優し……う"っ……ぐぅぅぅ…」


「あ"?おいなんだ!?どうした!?」


「は……ら……」


「腹?腹が痛むのか!?」


「腹…減ったっス………」


「…黒崎,荒川,食堂からありったけの飯持ってきてやれ」


話に聞けば私は丸2日間も眠っていたらしい


そりゃこれだけ腹が減るのも当然だ


「黒崎ぃ!ハンバーガー食べたいっス!あもあままむ」


「うるせぇ!!!口に物入れて喋んな!カスが飛んでんだよ!!!」


「いやぁ〜しかし…すごい食べっぷりだね…」


「異常なくらいにな,てめぇ病み上がりなんだから落ち着いて食え,胃が受け付けねぇぞ」


「んもも!むぐぐぐ!」


「2度と口開けねぇ様にしてやろうか?」


「まぁ今日くらいはいいじゃん,はいハンバーガー」


「ぷはぁ!やっぱこれを食べないとっスね!」


「ジャンクフードなんか体に悪ぃだろうに…」


「人肉の方が体に悪いっス」


「…………」


「珍しい,Vが論破されてる」


「はっはっは!やっぱりまともなのは私だけみたいだね!V!」


「おい荒川,少し泳ぐか?」


「ちょ…冗談!冗談だって!!黒崎!!助けぇぇぇええ………」


「はぁ…ったく相変わらずだ…で…シア,暫くは休んでていいぞ,動ける様になってから任務に戻ってくれ,そんじゃ」


相変わらず拠点は騒々しい


まぁ静かだった事なんて滅多にない


これが私の日常なんだ


私はそんな日常が好きだ


けれどこんな日常が世界では失われつつある


だからこそ私達の様な傭兵が必要な時代なんだ


「けふぅ……食った食ったっス……さて……もう一眠りしたら戻るっスかね…!」


たまには羽を伸ばすのもいいだろう


遠くから聞こえるVの怒号と荒川の悲鳴を聞きながら私はベッドに再び横になる


こんな日常こそが平和な世界と呼べるんだろう


私は失いたくない


その為に今一度決意を固める


V.P.B.Cとして


戦争を終わらせる戦争屋として


異能体,シア・ライリーとして


博士が願った平和な世界を実現させると


-Next war-

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V.P.B.C -Never war to Die- 狼谷 恋/V.P.B.C @Kamiya_Len

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