第374話 安らかに眠れ




「──いや、だけどこんな状態の八津やづに思い出させるようなのは、マズいだろ」


「今だからこそでしょ。八津くんの記憶が正確なうちがいいんだよ」


夏樹なつきお前、自分がなに言ってるかわかってんのかよ。八津がどんなに怖がってるのか。あんなになったんだぞ」


「それを僕が肩代わりする。僕も背負う。八津くんが見たモノを僕も見る」


 目の前でイケメンオタの古韮ふるにらと弟系の夏樹が言い合っているが、俺にはどうにもピンとこない。まるで大型犬と小型犬の喧嘩みたいだなと、ふと失礼な感想がよぎるくらいだ。


 というか、ものすごく精神にキテいるものだから、なにかテンションが突き抜けている夏樹についていけてないんだよ。アイツ、なんでこんなに熱くなってるんだろう。


 決まってるか。俺が情けない姿をさらしているからだ。無様だなあ。


 夕方の日差しが飛び込む談話室で、ギャイギャイとやり合っている二人を見ていると、ここが地上で、今は平穏な時間なのだと実感できる。

 だからといって今すぐ【魔力観察】を使えといわれてできるかといえば、恐ろしくてムリだろう。反射的に【観察】は動かせているが、やっぱりまだちょっと。



「わたしも見る。見て、背負う。これからも一緒に歩きたいから、描いてほしい」


 そんな古韮と夏樹のバトルに参戦したのは、サメを浮かせた綿原わたはらさんだ。


 迷宮の中で錯乱してしまった俺を見て、彼女もおかしくなってしまっていたのは、おぼろげに覚えている。抱き着いて泣いてくれていたことも。

 気恥ずかしさはもちろんあるけれど、それ以上に温かさがあった。男女がどうのこうのじゃなく、二層滑落から戻ってきた時に滝沢たきざわ先生に抱きしめられたのに、どこか似ていたんだと思う。


「わたしたちはこれからも迷宮に入るの。八津くんだけを地上に残してなんてのは、絶対に嫌よ」


 俺がぼんやりと迷宮での出来事を振り返っている最中にも、綿原さんの言葉は続いていた。


 思った以上に強い彼女の口調に、さっきまで言い争っていた夏樹と古韮が引き気味になっている。


「さっきのせいで八津くんが迷宮に入れないなんてなったら、わたしが引きずってでも連れていく」


「それは怖すぎるよ、綿原さん」


 メガネ越しの目をガンギマリにした綿原さんがあまりに物騒なコトを言い出し、俺は思わずツッコミを入れた。


 入れてしまったんだ。

 ああ、これっていつもの俺がしていることか。あまりの勢いにてられて、俺の素が出た?



「なあ、綿原ってあんなキャラだったか?」


「古韮くん。僕は結構さ、一大決心で提案したのに、なんか綿原さんが……」


「持ってかれてるよなあ」


「やっぱり親友より女子がいいのかな、八津くんって」


 会話の主軸から外されてしまった二人がボソボソとやっているが、夏樹、最後のソレはどうなんだ?

 俺はそういうチャラいキャラじゃないつもりなんだけど。



「召喚された時に言ったでしょう。ウチのクラスは八津くんを見捨てないの」


 古韮と夏樹のグチっぽいやり取りを意にも介さず、綿原さんはまくし立てる。


「だから八津くん、貴方もわたしを、クラスのみんなを見捨てたりしないのよ。諦めて付き合いなさい。付き合って、お願い」


 最後の言葉だけなら告白じみているんだけど、意味が全然違うんだよな。

 けれどなんでだろう、恋愛的な意味の告白よりも、今の俺にはこっちのほうが嬉しいかもしれないんだ。


 それとだけど、綿原さん。俺が言うのもなんだけど、少し落ち着いた方がいいんじゃないかな。


「ちょっと落ち着きなさいな、なぎちゃん」


りん、あなたはどうなのよ」


「え? わ、わたしは……、どうしようかしら」


 見かねた副委員長の中宮なかみやさんが仲裁に入ろうとするも、綿原さんは即座に言い返す。


 どちらかというと中宮さんに同意してしまいたい俺なのだけど、藪からサメを出すわけにもいかない。

 というか、弱いよ中宮さん。とくに綿原さんに弱い。



「八津くん、大丈夫? なんか綿原さんが横暴系ヒロインみたいになってるけど」


「暴力系よりはマシかもだけど、アレはちょっと」


 キャンキャンとし始めた綿原さんと中宮さんの隙を窺って、オタク系男子の野来のきが俺の耳元で囁いた。綿原さんには絶対に聞かれたくないという強い意志を感じるな。


 野来の横にはこれまたオタク系女子な白石しらいしさんが黙って立っていて、迷宮の中でポジションが離れているぶんを地上で取り戻しているかの様相だ。

 なんか微笑ましくていいな。


「けど綿原さん、あそこまで暴走するタイプだっけ」


「大丈夫だよ八津くん。あとでイジっておくから」


 思わず呟いてしまった俺のセリフを丸メガネをキランと光らせた白石さんが拾った。


 イジる? アレを? 中宮さんを圧倒しようとしている綿原さんを、白石さんが?

 女子同士の力関係が全然わからない。謎過ぎるぞ。



「ワタシは凪に賛成デス。広志こうしの絵を見たいデス」


 ついにはミアまでもが綿原さんサイドで参戦する模様だ。


「なんでいまさらミアまでっ。わたしは凪ちゃんに落ち着いてって言いたいだけで、反対なんてしていないのよ?」


「なんか出遅れた感があって悔しいからデス」


「あなたの行動原理、どうなってるのよ」


「お堅い凛には難しいかもしれまセン」


 ミア理論なんて、俺にもサッパリだ。

 ここまでの展開だと、俺って中宮さんの応援、というか擁護に回ってばかりだな。がんばれ、中宮さん。


 いや、べつに絵を描くのがイヤってわけでもないんだ。

 むしろ目の前で行われている、夏樹が発端になった大混乱の方に気が取られてしまっているくらいで。


 あれ? なんで俺はこんなに頭が回るようになっている?

 これじゃまるで普段通りみたいじゃないか。いや、まだ心の奥底にはドス黒いナニカが残っている。だけどむしろ、それが自覚できるくらいまで、俺は戻ってきているのかも。



「面倒くせぇ。上杉うえすぎ、そろそろメシ作るぞ。八津は勝手に決めればいい。俺はどっちでも構わねぇからな」


「そうですね。わたしも八津くんが自分で決めるのがいいと思います」


 心の底から面倒くさいと顔に書いた強面な佩丘はきおかが立ち上がり、上杉さんを促して夕食を作りに行くと言い出した。


 ついでっぽく俺の決めたことを尊重するって付け加えるあたりが、本当に佩丘だよな。上杉さんはいつもの笑みのままだし。


「当番は馬那まな深山みやまだったか。行くぞ」


「おう」


「うん」


 今日の給食当番を呼び出した佩丘は、そのまま厨房に消えていく。


「わたしも手伝いましょう。八津君、無責任な言い方になってしまいますが、まずは自分自身で折り合いを付けることだと思います。次回の迷宮までは間が空きますし、わたしも含めて出来る限り寄り添いたいと考えていますので、いつでも頼ってください」


 普段から積極的に料理に関わろうとする滝沢たきざわ先生は、今日も手伝いをするようだ。


 そんな声色は優しいのに、それがムリをしているように聞こえてしまうのは何故だろう。

 立ち去る背中がいつもより小さくなったように見えるのは、先生が己の無力に苦しんでいるように感じられて心苦しい。


 俺のせい、だよな。



 みんながみんな、いろいろな形で俺を励まそうとしてくれている。

 夏樹や綿原さんのように積極的になにかをすべきだという仲間もいるし、突き放すようなコトを言っておきながら、見守ろうとしてくれているヤツも。

 グダグダになっている中宮さんにしたって、暴走しかけた綿原さんを諫めているだけだ。むしろその光景がいつも通りで、俺の心に響くんだよな。


 気が付けば俺はそんな連中に、すっかりヤラれているじゃないか。


「僕は急がせることはないって思うよ。八津はそれだけ大変な目にあったんだ。明日の件は八津抜きでもなんとかなるだろうしね」


 そして藍城あいしろ委員長はバランスを取ったのか、それとも本音なのか、曖昧な表現をするに留めた。


 そういえば明日はヴァフターの勧誘があって、夜はキャルシヤさんやジェブリーさんたちを招いた宴会か。そんなことすら頭から抜け落ちていたな。



「そうだな。描いてみるよ。けど怖いからさ、夏樹と綿原さん、隣にいてもらえるかな」


「うん!」


「……わかったわ。ごめんなさい、急かすようなコト言っちゃって」


 とりあえず俺は、一歩を踏み出すことにしてみよう。

 仲間と一緒ならば大丈夫のはずだと自分に言い聞かせながら、俺は立ち上がる。



 ◇◇◇



 父さんの死に顔は綺麗だった。


 心不全だか心筋梗塞とかそんなだったから、事故死とは違って傷のひとつもない。ただ白く、蠟のように固まっていただけで。

 それを二次元にしたらあんな感じになるのかもしれない。父さんと総長を重ねるなんて考えるだけでも嫌悪感が湧くけれど、ここはそうじゃない。感情に蓋をしてみせろ。【平静】をぶん回せ。


「八津くん、大丈夫?」


「ああ。ほら手が震えてるなんてよくある表現だけど、今はそんなことないだろ?」


「うん。だね」


 心配そうに声を掛けてくる夏樹に、俺は手にした筆を持ち上げて見せてやる。


 壁際にあるテーブルに向かい、三つ並べた椅子には俺が中央で両脇を夏樹と綿原さんが座っているんだけど、二人とも距離が近い。

 どうやら綿原さんはさっきまでのテンションが恥ずかしかったのか口を噤んだままで、それでも俺の指先をじっと見つめている。そういう視線って、こっちの方が気恥しいのだけど。


「よっと」


 あえて軽めに声を出して、まずは輪郭線からだ。


 紙の上に筆先が置かれた瞬間、隣の綿原さんが息を呑むのが伝わってくる。頭が乗り出していて、ホント近いんだけど。

 けれどもまあ、そんな彼女が横に居てくれるだけで勇気づけられている俺がいるんだけどな。


 だから俺はソレを描く。



 ◇◇◇



「こんな感じだったんだ。八津くんの【魔力観察】ってすごいんだね」


 俺の描いた絵を見た、元気娘で撤退時には指揮官を替わってくれた奉谷ほうたにさんの感想はソレだった。

 なんだか力が抜けるなあ。いちおうそれ、平坦ではあるけれど総長の死に様なんだけど。


 輪郭自体はすぐにキマったのだけど色合いが難しくって、出来上がったのは似ているけれど微妙に違った絵が五枚。かかった時間は一時間くらいだろうか。

 それがクラスメイトたちに配られて、各々それを眺めている。


 俺お得意のアニメ調にデフォルメしたわけではなく、出来る限り忠実に描いたつもりだけど、実写系の絵は苦手だ。我ながら出来が悪いと思ってしまう。

 それでも仲間たちは、真面目な顔でその絵を回し見していっている。


「ほうほう。これはこれは」


 その中には当たり前のようにシシルノさんも混じってるのだけどな。



 俺が絵を描き上げたのとワザとらしいくらい同じタイミングで出来上がった夕食は、俺のぶんだけ肉の代わりに鮭がたくさん入った鶏がらスープの鍋だった。

 果たしてそれが佩丘か上杉さん、どちらの気配りなのかはわからないが、せっかくだからと俺は料理番の全員に心の中で感謝しながら、それを完食することで応えたのだ。


 ところどころで喉につっかえた気もしたが、俺の見たアレはあくまで影であって、リアルな物体じゃなかったのが幸いだったのかもしれない。

 むしろ食事中に全員から俺に向けられていた視線の方が気になったくらいだよ。


 そんな流れで現在行われている鑑賞会には一年一組全員はもちろんとして、シシルノさんだけでなく、アーケラさんとベスティさん、ガラリエさんも混じっている。

 こんなの食事前に見るモノじゃないからな。


「なんていうか、落書きだよなあ」


「ホントに影って感じだねぇ~」


「こういう絵って見たことあるかも、印象派?」


草間くさまお前、適当言ってるだろ」


「バレたか」


 仲間たちが勝手な感想を並べている。俺はそもそも印象派っていうのを知らないんだけどな。


 どうしてだろう、不思議な光景と感覚だ。

 クラスメイトのみんなが俺の描いた絵を見ていくうちに、少しずつ背中が軽くなっていく。俺の抱いた気分がみんなに共有されていくたびに心の中にある黒い塊が細かく砕けて、それを仲間たちが吞み込んでくれているような。


 最初はとんでもない提案にも思えたけれど、夏樹、すごいじゃないか。効果ありまくりだぞ。


 というより、さっきの大騒ぎも含めて、絵の件、夕食、ここまでの流れ全部が俺を励ましてくれているんだろうな。

 みんなが狙ってやったことではないだろうけど、すごく実感できているよ。



「ごらんよガラリエ、ベスティ。あれこそ君たちが受け継がなければいけないことだ」


「難しい注文を出しますね。顧問」


「そりゃあ顧問だからね」


 少し離れた場所で俺たちを眺めているシシルノさんが勝手な注文を出して、ガラリエさんを困らせているようだ。横に居るベスティさんは素知らぬふりをしている。

 シシルノさんが新部隊の顧問を名乗るのは良いとして、俺たちが今やっていることをどうやって受け継ぐ気でいるのだろう。絵を描く練習でもするのか?


「ヤヅくん。少し話があるのだけど、いいかな?」


 などとアウローニヤ組の様子を探っていたら、シシルノさんから名指しで呼び出されてしまった。



「なんです?」


「まずは感謝だね。勇気を出してコレを描いてくれたヤヅくんに」


 俺が描いた五枚のうちの一枚を手にしたシシルノさんが、本気ムードで感謝の言葉を述べてくる。


「見たかったんですよね?」


「もちろん見ておきたいと思っていたさ。資料としても残しておきたい。そう考えてしまうのがわたしだよ」


 やっぱりシシルノさんは明け透けだった。


 俺が迷宮で見てしまったモノを自分も、というこの人の考えは本当に科学者していてカッコいい。

 それでもさっきまでは俺に遠慮をして黙ってくれていた。一番に言い出したかっただろうに、それでもだ。


「シシルノさんの場合、それだけじゃないでしょ」


「なにがだい?」


「心に焼きつける、とか言い出すんじゃないですか?」


「そのとおりだよ。ヤヅくんと分かり合えるのは心地いいね」


 こういうクサいことを好んで言うのがこの人の楽しいところだ。


 悪い笑顔もセットなのがさらに良しだな。


「ヤヅくんは一度に迷宮の謎をふたつも暴いてみせたんだ。これはもう、アウローニヤどころか世界の歴史に──」


「そのネタはもういいですよ」


「どうやら調子が戻ってきたようだね」


 悪い笑顔を一変させて、優しげな微笑みを浮かべたシシルノさんはやっぱり大人なんだよなあ。


 同じような感じで俺を見ているアーケラさんやベスティさん、ガラリエさんも。そしてさらに向こうからこっちを窺っている先生もだ。


「気は楽になったと思います。みんなのお陰で」


「それは良かった。本当に」


 まだまだ自分の中で整理がついたとは思えないけれど、こうして言葉にして、笑うことができるようになった。


 硬軟織り交ぜてなんて言葉があるけれど、ウチのクラスの場合はマジと悪ふざけをごちゃ混ぜにして、か。うん、俺にはとても良く効いたんだと思うよ。

 こういうどんちゃん騒ぎが俺をなんとか奮い立てせてくれているんだ。


 そんなみんなには……、とくに夏樹には感謝しないと。



 ◇◇◇



「よっし、八津。トドメといこうか」


「古韮?」


 ある程度俺が落ち着いたと見た一年一組は、通常モードで就寝することとなった。


 で、男子部屋に入って自分のベッドで横になろうとしたところで古韮が掛けてきたセリフは、それなりに物騒だ。トドメってなんだよ。


「八津さ、【安眠】取っちまえよ」


「……【安眠】か。けど」


「コスト軽いだろ、これ」


 ツンツンと自分のこめかみを指でつついている古韮の言うとおりで、間違いなく【安眠】は取得コストが軽い。


 なにしろ【睡眠】の派生で、『普通に眠る』が『安らかに眠る』に変化するくらいの効果しか見込めないのだ。これが【仮死】とかならトンデモ技能だけど……、そういう想像は今の俺にはヘヴィだから止めておこう。


 そういう黒い意味ではなく、クラスメイトからは今の俺に必要に見えているのかもしれない。


「十一階位になって魔力は安定したんでしょ?」


 さらに推してきたのは野来だった。

 コイツら二人そろって示し合わせていたな。いつの間に。



「いいんじゃねぇか、誰かが取って検証すりゃ。それが必要としてるっぽい八津なら、なおさらだ」


田村たむらもかよ」


「俺は古韮と共謀なんてしてねぇぞ。けどまあ、シシルノさんが喜ぶんじゃないか、ってな」


 俺たちの知り合いで【安眠】を持っている人なんてひとりもいない。田村の言うとおり、俺が取得して具体的な効果をシシルノさんに伝えれば、あの人なら大喜びをしてくれるだろう。

 またもや歴史が、とか言い出しそうだけど。


「アヴェステラさんを出し抜いちまうな。自分で謝っておけよ、八津」


 つづけて海藤かいとうまでもが。


 野球小僧がイタズラな笑みでアヴェステラさんをダシに俺を煽ってくる。


「明日はヴァフターの説得と夜には宴会だ。八津が動けた方が便利だなぁ。あのキャルシヤさんが来るんだぞ? 八津にご執心のよ」


「佩丘、そのネタ使うのはどうなんだ?」


「へぇ、言い返すくらいには元気になったか。上等だ」


 キャルシヤさんネタは綿原さんにとって地雷だ。佩丘め、わかってて言っていやがる。


 今の俺はナイーブなんだぞ。もう少し気を使え。

 ──とっくに使われていたか。



「今頃女子部屋で綿原さん、イジられてるんだろうね」


「草間……」


「あ、ゴメン。想像したら可哀想になってきた」


 ベッドに横になっているのに、未だにメガネな草間が綿原さんを持ち出して、ついでに勝手に憐れんでいる。なにをしたいのやら。


 そういえば草間がメガネを外しているところって見たことがないような。風呂でもメガネを白く曇らせているし。

 不可視のレンズってわけでもないから、どんな目つきをしているのかは知っているけれど。


「僕も賛成だけどね。いいんじゃないかな、八津が【安眠】第一号で」


 そしてトドメが委員長だ。


 これでコイツら結託していないというのだから妙な連中だよ。

 もし俺以外がおかしくなったら、今度はソイツを必死になって励ますんだろうな。その時はもちろん俺も一緒にだけど。



「わかったよ。ほらもう取った。【安眠】」


 頭の中の光の粒をアクティベートして、俺は【安眠】を取得した。


「そっかそっか、ならおやすみだ。ゆっくり寝れるといいな、八津」


「ああ。おやすみ、古韮、みんな」


 なんかこう、永遠のお別れみたいなムードの会話だけど、普通の就寝だから俺は素直に目をつむる。

 ホント、安心して眠れると嬉しいんだけどな。


 あ、乗せられて【安眠】を取ったけど、これって【身体操作】がまたも遠のいたんじゃ……。


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