第362話 当人たちがいない場で




「それほど突飛な発想ではありませんよ」


 いやいや、女王様自らがなにを言い出すのだ。構想? 報告書?

 しかもミルーマさんまで怪しげなナニカを認めている節がある。まるでそれがシャルフォ隊に対する報奨であるかのように。


「ヘピーニム隊を王都軍から外し、王室直轄の迷宮専属とさせます。いわば『緑山』の後継として」


「それって大丈夫なんですか? 本人の希望とか、その、格とか」


 女王様の決定じみた発言に、顔色のすぐれない藍城あいしろ委員長が無理やりな指摘をする。


 俺たち『緑山』がワリと勝手に迷宮専属の騎士団をやれていたのは、勇者という肩書があったからこそだ。しかも王家のお墨付きまで付け加えて。

 それを持たない人たちが同じ役割に就くことは難しいのではないかと、委員長はそれを言っているのだろう。本人の希望というのは、上からの命令ではどうしようもないけれど、今回はご褒美的な話なので強引なのはちょっと……。


「この場で続けるのは……。詳細については階段を降りながらお話し致しましょう」


 すでにミルーマさん率いるヘルベット隊には、ある程度伝わっているのだろう。

 たとえそうでも、これ以上はここで吹聴するようなことでもないと判断した女王様は、いったんはここまでにしてくれるようだ。本当にこちらの心臓に悪い。



「ではミルーマ、行ってまいります。王城守護の務め、見事果たしていただけますね」


「お任せください。必ずやご期待に応えてみせます」


 ミルーマさんが団長をやっている第三近衛騎士団『紅天』は、女性王族を守護することを専門に任された騎士団だ。

 規模も小さく、王城の守りは本来の仕事の範疇にならないはずなんだけどな。


 現状の王都における女性王族は女王陛下一人だけとなる。王妃様はすでに北方に避難し、元第一王女と第二王女はそれぞれウニエラ公国とラハイド侯爵に嫁いでいるので王都からは離れている上に、南方と違い王城の騒乱や帝国の圧力が影響しそうな場所にはいない。いわば安全地帯だ。


 よってたしかに『紅天』は手隙でもあり、ましてや王城の混乱は完全に収まってはいない。だから王城守護。道理は通らないかもしれないが、現実はそんな理屈を許さないということだ。

 たしかクーデターが始まる前の段階で『紅天』の掌握率は七割を超えていたはずで、今はさらに上だと想像できる。規模の小さい騎士団とはいえ、全幅の信頼を置くことができる騎士団長を擁した『紅天』は、女王様にとっては使い勝手が良いのだろう。


 次点ではキャルシヤさんが率いる第四の『蒼雷』だろうか。ほかの騎士団の状況について、俺たちはまだ詳しく聞かされていない。もしかしたら知らせる必要もないと考えられているかもしれないな。



「勇者の皆様、ミームス卿、陛下をよろしくお願いいたします」


 珍しく王女様以外に敬語口調になったミルーマさんが、俺たちとヒルロッドさんに念を押してきた。


「はい」


「はっ」


 それに答える委員長はごく普通だが、ヒルロッドさんの方は声が硬い。


 相手は女王様が第三王女の頃から側近中の側近をやっているバリバリの子爵で、片やヒルロッドさんは平民上がりの騎士爵。そりゃあ硬くもなるだろう。

 とはいえアヴェステラさんなんかも子爵なのだから、この辺りは慣れの問題もあるのかもしれない。


 ちなみにミルーマさんのヘルベット子爵家は代々第三近衛騎士団『紅天』の団長を輩出しているのだけど、男女の区別が少ないアウローニヤでも珍しい、完全な女系の家だったりする。理由は当主が女性限定の『紅天』団長になるためだ。

 本家はもちろん、分家も合せて生まれた女子は幼い頃から全員が騎士としての訓練を積むらしい。この世界に職業選択の自由などというものがそれほど存在していないのがよくわかる事例だ。貴族であればあるほどそういう傾向が強いので、偉いというのも考え物だと唸らされる。

 とはいえレムト王朝が成立して百年とちょっとなので、女系の確立からは四代くらいしか経っていないのだとか。


 一年一組は、そんな話をクーデター前日の雑談でミルーマさんから聞かせてもらっていた。

 俺たちだって以前から資料として歴代の騎士団長くらいは確認していたので、ヘルベット家の特殊性は知っていたのだけど、いざ本人から聞かされるとなかなか重たく感じたことを覚えている。


 そんな系譜を持つミルーマさんだが、リーサリット女王に絶対的な忠誠を誓っているのは見ての通りだ。もしかしてあの御家自慢って忠誠度マウントだったとかか?


 ということで、ミルーマさんから女王様の護衛を委ねられるという意味は重い。

 クーデターの時は安全地帯を求めて迷宮に入ったわけだが、今回は違う。女王様の意志の下、レベリング担当者として『紅天』ではなく『緑山』が選ばれた形になる。


 女王様が勇者に惚れ込んでいるのは実感できているし、ミルーマさんも俺たちのことは認めてくれているんだろう。今回が最後の機会となるのだし、ご期待に応えてバッチリレベリングして上げないとだな。

 ただその、ヒルロッドさんたちミームス隊がミルーマさんにどう思われているかまでは、うん、考えないようにしよう。


「お気を付けて」


 階段を降り始めた俺たちの背後から小さく聞こえたミールマさんの声は、果たして女王様だけに向けられたものかどうか、定かではなかった。



 ◇◇◇



「先ほどのお話の続きでしたね」


「口を挟んで申し訳ありませんが、陛下」


 階段を降り始めてすぐに女王様がさっきの話を再開しようとしたが、そこで口を挟んだのはヒルロッドさんだ。


 ラウックスさんたちミームス隊第一分隊の六人は隊列の先頭を歩き、女王様や俺は後衛だ。ヒルロッドさんは女王様の直掩という形ですぐ近くにいるが、声の大きさでは全員に会話が聞こえてしまうかもしれない。


「構いませんよ、ヒルロッド。あなたたちミームス隊にも協力を仰ぐことになるでしょうから」


「私どもが……、ですか」


 ヒルロッドさんをファーストネームで呼んだ女王様が、イタズラな調子を含みながら前方にまで届く声で言い切った。


 先頭にいるラウックスさんたちの肩がピクリと揺れたのが、俺の【観察】で見えてしまう。なんか可哀想だなあ。

 ヒルロッドさんも一人称が変わっているし。やっぱり大人は大変だ。



「勇者様方、いえ、ここでは『緑山』と呼ぶべきでしょうか。その存在意義について、どう思われますか」


「……現状の迷宮において、確実に有効な戦力であると考えます。戦果だけでなく、手本としての姿勢も評価されるべきかと」


 口を挟んだせいかどうかはわからないが、女王様から話を振られたヒルロッドさんは、一拍溜めてから返事をした。


 勇者ではなく『緑山』と表現された以上、看板の問題ではないのだろう。だからヒルロッドさんは政治的な要素を含まない言い方で、意味があると言い切った。

 それを聞く女王様のお顔は大変満足そうだ。どうやらお気に召す解答だったらしい。


 俺もちょっと誇らしいけれど、難しいお話の最中のようだし、顔に出ないように気を付けないとな。

 すぐ横で満面のドヤ顔になっているロリっ娘な奉谷ほうたにさんがいるけれど、彼女の場合は可愛いから許される。俺には存在しない性能だ。



「ではシシルノ」


「なんでしょうか、陛下」


「『緑山』が解散されたとしてです。後継は可能だと思いますか?」


 つぎに指名されたのはシシルノさんだった。


 しかも後継ときたか。

 俺としても考える部分はあるが、ここはむしろシシルノさんがどう答えるかの方が気になってしまう。どことなく周りも一段静かになったような。


「完全には無理でしょうな。彼らが勇者であるが故に、可能であったことも多いのですから」


「完全には、ですか」


「まさに」


 シシルノさんの返答は、言外に勇者がチートであることを指し示していた。


 詳細な内容にシシルノさんは触れていないし、チートの半分である魔力量に優れているという『勇者チート』については女王様も承知している。もうひとつの同色の魔力という『クラスチート』は担当者だけが知る秘密ということになっているが、女王様はなにかあるとほぼ気付いているはずだ。

 というか上杉うえすぎさんが【聖導術】を使っていたあたりでバレているような気がする。


 何度も考えたことだが、もうバラしていいんじゃないだろうか。ミームス隊にも知られたところでなあ。


「勇者たちの特異な力を惜しむお気持ちは理解できますが、むしろ──」


「去るべき者に縋るのではなく、得られたモノを活かすべき……、なのでしょうね。わたくしたちなりの在り方も合せて」


「まさに仰るとおりかと。わたしも尽力いたしましょう」


 自分のセリフを途中で奪われたにもかかわらず、シシルノさんの笑顔は最高に輝いていた。

 あれは百点満点を見たってヤツだな。クラスの書記な白石しらいしさんとの会話でたまに見せることのある、シシルノさん会心の笑みだ。



「勇者の皆様方が去ったとしても、在り様は残されます」


 続く女王様の言葉は誰に向けたものでもなく、この場の全員は聞き入るだけだ。


「『緑山』の戦い、いえ、行動の全てを、我が国なりの形で引き継ぐ必要があるとわたくしは考えるのです」


「全部というのは、ちょっと」


 ここまで黙って聞いてはいたのだけど、思わずツッコミを入れてしまったのは他ならぬ俺だ。我ながら自分のこの癖が嫌になる。

 ほら、女王様が嬉しそうな顔になっているじゃないか。


「もちろん髪を黒く染めたりは致しませんよ」


「冗談、なんですよね?」


 全然笑えない冗談を真顔で述べる女王様に返事をしてしまった段階で、完全に会話の相手が俺で固定されてしまったのに気付く。


 サメを泳がせる綿原わたはらさんを含めて、まわりの連中は知らんぷりだし、頼りの委員長は最前列だ。綿原さん、俺は今、切実に綿原さんが必要なのだけど。


「この国では冗談になるのですが、ペルメッダではどうも……」


「どういうことです?」


 どう考えても話の本筋ではないものの、聞き捨てならないコトを言い出した女王様に問いかけずにはいられない。

 周りのクラスメイトたちも、口にはしないものの耳がこっちを向いている。会話担当者を俺に押し付けて聞くだけに回るなんて、ズルいじゃないか。


「アウローニヤに勇者が現れたとの噂が流れついたのか、かの国の冒険者たちのあいだでは、髪を黒く染めるのが流行のようでして」


「なんですか。それ」


「瞳の色を変えることはできないのに、ご苦労なお話です」


 コロコロと笑う女王様だけど、こちらとしてはなんとも微妙だ。なんで勇者が流行しているのだか。



「いいんじゃないかなぁ、ソレ」


 そこで会話に割り込んできたのは、紺色の髪をしたベスティさんだった。


 素を俺たちに晒して以来、ベスティさんは女王様の目の前でも、砕けた口調を崩さない。

 それはさておき、いいっていうのはどういう意味でだろう。


「黒髪が流行ってるならさ、キミたちがペルメッダで目立たないで済むんじゃないかなあって。そっちの方が都合いいんじゃない?」


「……そうですね」


 ついには文学少女な白石しらいしさんまでもが会話に参戦してくれた。ウェルカムだよ。


「少しでも目立たないのは、いいかなって、思います」


 白石さんらしい途切れがちな口調だが、言っていることはそのとおりかもしれない。


 それにしても、そうか。俺たちがアウローニヤに呼び出されてから、かれこれ七十日。一般にはお披露目されたわけではないが、貴族や兵士の一部は俺たちの存在を知っている。

 迷宮で出会った王都軍の兵士たちのほとんどは平民で、城下町に家族がいるわけで、そうすると噂にならないわけがない。


 黒髪黒目は伝承にも残る、わかりやすい勇者の証だ。

 ペルメッダ侯国との交易が盛んなアウローニヤの王都でそんな話が広まっていれば、商人たちを経由して情報は広まっていくだろう。


 その結果が髪を染める流行とか、ちょっと意味不明だけどな。



「ベスティ」


「これは失礼。面白いお話だったもので」


「……まったく」


 本筋からそれまくった原因を作ったベスティさんを軽い調子で咎める女王様だが、お叱り効果は薄いようで、言われたベスティさんに悪びれる様子はない。


 昔からこんな感じなんだろうと想像できてしまうような、そんな気安さ。物語でよくあるように、偉い人がこうやってズケズケと言ってくる人を近くに置くっていうのはアリなのかもしれない、なんて思ってしまうのだ。

 それくらい女王様は静かな佇まいの中に楽しそうな色を見せているのだから。


「ではお話を戻しましょう。本題は、どのようにして『緑山』を受け継ぐのかです。その一環となるのがヘピーニム隊」


「なんとなくですけど、わかります」


 再び俺に向けて語り掛けるようにする女王様に、渋々ながら返事をするが、この人が言っていることは正しいとも思うのだ。


 そう、『緑山』を引き継ぐ部隊を挙げろと問われたとすれば、俺はヘピーニム隊と答えてしまうだろう。

 次点でミームス隊かキャルシヤさんのイトル隊になるけれど、両者とも近衛騎士スタイルが身に付きすぎていて、力押し重視を矯正するのに時間がかかりそうな気がする。

 さらにはミームス隊は教導がメインだし、イトル隊に至っては騎士団長直属だという立場が邪魔をするんじゃないだろうか。


「戦いのみならず、彼女らは『緑山』と迷宮での行動を共にしたことがあります。それが大きいのではないかと、わたくしは考えるのです」


 女王様の言いたいことがわかってしまえば、もはや俺からは返す言葉が出てこない。


「先ほどの朝食などが典型でしょう。ヘピーニムらは皆様が食事を作る光景すら見ていたのですから」


 そうなんだよな。

 シャルフォさんたちには、一年一組の全部を見せてしまっている。連携した戦い方もそうだし、索敵のやり方、釣り出し、迷宮での食事もそうだし、なんなら芋煮会を筆頭にした実験の数々もだ。


 おいおい、シャルフォさんたち、無事ですむのか?



「ヘピーニム隊を王都軍から独立させ、迷宮専属とするだけでは足りないでしょう。術師や騎士を糾合する必要もあります。その者らに勇者の在り方を伝える存在として、ミームス隊による教導も──」


 なにかとんでもないことを言っているようにも思えるのだけど、階段を進む女王様の歩みによどみはない。


 だけど妙なオーラが噴き出ているような。

 コレには記憶があるぞ。たしか、女王様が離宮に現れた時、あれは二度目だったか。アウローニヤの改革を語るあの熱気だ。当時はまだ第三王女だったリーサリット殿下が、この国の短い未来をまくし立てていたあの姿が思い出される。


「あの」


「なんでしょうか、ワタハラ様」


 女王様の語りが熱くなりかけていたところに、たまりかねたように綿原さんが入り込んだ。


「それはシャルフォさんたちにとって、ご褒美……、報奨になるんですよね?」


 切実な口調で語る綿原さんの言葉に、一年一組の面々が顔を見合わせる。


 それもそうだ。そもそもこの話の発端は、ヘピーニム隊にどんな褒美があり得るのかというところからだったから。

 今している話題自体が、果たしてシャルフォさんたちにとって良いことなのかどうか、どうしてもそこが気になってしまうのだ。



「そこでお聞きしたいのです。勇者の皆様方から見て、この提案をシャルフォ・ヘピーニムが率いる者たちは受け入れると思いますか?」


「命令じゃなくて、提案、ですか」


「はい。迷宮専属となり、勇者のごとく戦い、強くなるのです。一般兵の任務となる王都での警備などは全て免除しましょう。戦場への参加も認めません」


「えっと、それなら……、八津やづくん?」


 押しの強い女王様の語りにタジタジになった綿原さんが、俺に助けを求めてきた。その姿勢は嬉しくもあるけれど、俺も手に余るよ。どうしよう、これ。



「シャルフォさんなら大丈夫じゃないかな」


「アタシもそー思うかなぁ」


 どう答えるべきか悩む綿原さんや俺を他所に、明るい声が階段に響いた。


 発したのは元気印の奉谷さんと、もうひとりはチャラ子なひきさん。


「ちょっと、鳴子めいこ朝顔あさがおも──」


「うーん、僕もいいんじゃないかなって思う」


夏樹なつきくんまで」


 二人の発言を綿原さんが咎めるけれど、今度は弟系男子の夏樹までもが賛成に回った。


 べつに綿原さんは反対だと考えているわけではないんだろう。軽はずみにイエスと言ってしまっていいのか、そこを気にしているだけで。


「俺も……、ヘピーニム隊ならやってくれるって、気がする」


 なので、俺は自身の言葉で態度を明らかにすることにした。


「あの人たちは誠実で真面目で、俺みたいな若造の指示に従ってくれた。軍団長から命令されてたからかもしれないけれど、一生懸命になって『緑山』のやり方を受け入れてくれていたんだ」


「……そうね。わたしもそう思った」


 俺がヘピーニム隊への印象を語り始めたところで、ついにみんなの足が止まったのが見えるんだけど、どうしてこのタイミングなんだろう。これじゃあ、最後まで言い切らないと動きが再開されないじゃないか。


 そんな風になってしまったのに、綿原さんは短い言葉で先を促すだけだ。困ったな、これは。


「気付いてる人もいると思うけど、迷宮で俺たちと一緒に戦ってくれた人たちの中で唯一……」


「そういえば、そうだったわね」


 思わせぶりな俺のフリに、綿原さんはすぐさま気付いてくれたようだ。さすがは迷宮委員だな。相棒。


「部隊単位で作戦をお願いして別行動をしたことがあるのって、ヘピーニム隊だけなんだよ」


 迷宮で最初に出会った時の模擬戦や共闘で、悪乗りしながらいくつものパターンを試したのは懐かしい思い出だ。挟み撃ち、回り込み、待ち伏せ、釣り出し。

 そんな経験が思わぬところで、そしてとてつもなく役に立ったのが、先日あった総長との死闘だった。もしもヘピーニム隊とのあの連携訓練がなかったら、俺たちは負けていたかもしれない。


「ヤヅ様の仰りたいことはわかるつもりです。わたくしとてベリィラントとの戦いで、あの者たちの活躍を目にしていましたから」


 したりとばかりに女王様が俺の言葉に同意してきた。

 ズルいよな、そういうの。俺が推薦したみたいになっているじゃないか。


「だからこそ、『緑山』を継ぐ者たちを想い描いた時、真っ先にかの隊が浮かんだのです。ミームス隊でも、イトル隊でもなく」


 それはもう、答え合わせのような光景だった。



「アイシロ様が懸念されていた、新たなる隊の格についてはご安心ください。考えがありますので」


「そ、それってどういう」


 そこで軽く悪い笑い顔になった女王様に言葉を返す俺の声は震えていたかもしれない。ちょっと離れた位置の委員長が肩を跳ねさせる。


 なにかこう、嫌な予感というか、とんでもない爆弾が出てくるような気がしたからだ。


「血筋のある者、説得力を持つ者を隊長に据え、体裁を整えます。ガラリエ・フェンタ」


「は、はいっ!」


 突如フルネームで呼ばれたガラリエさんが、裏返った声で返事をした。まさかっ!?


「男爵になりませんか? そして隊を率いるのです」


 なるほど、そうくるのか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る