第70話 道立山士幌高校一年一組クラス名簿:資料




 本話では一年一組のキャラクター設定を紹介します。

 あくまで現段階のものであり、予告なく新しいプロパティが追加されたり、設定が変更される場合もありますので、フレーバーとしてお読みください。



 ◇◇◇



出席番号零(暫定)

●滝沢昇子(たきざわしょうこ)二十五歳、女性

●【豪拳士】五階位:視野拡大、睡眠、集中力向上、平静、身体強化、反応向上、体力向上(69話終了時点の所有技能。なお技能には熟練度が存在するため、取得していても効果には各人の差がでる)


 山士幌高校に勤務する英語教師。身長は百七十センチのスレンダー美人で、ブラウンカラーのボブカットに伊達メガネのクールな女性。鋭い目つきがちょっとコンプレックスになっている。地元、山士幌の出身。


 一年一組全員がアウローニヤ王国に召喚されたときに英語の授業をしていただけで、担任ではない。それが貧乏くじか運命かは今後次第だろう。

 教師というモノを職業として捉えるように心掛けており、必要以上に生徒の人格形成までに踏み込まないようにしている側面がある。そのためあえて、穏やかな表情と丁寧口調を自分に義務付けている。


 大学四年次に全国大学女子フルコンタクト空手道選手権ベスト4に輝いた実績を持つ、実戦派のアマチュア空手家。武力はクラス最高峰だが、本職はあくまで教師。一時期『北方中宮流』を学んでいたため中宮凛とは旧知の間柄でもある。


 召喚初日に『教師を辞める』宣言をし、教師としての仕事ではなく、ひとりの人間として彼らを守るために全力を尽くすと決意表明した。それに伴い能力のある生徒たちに役割分担をぶん投げる。

 熱血漢でありながら、目標達成のために最善の手段を取ることができる冷静さを兼ね揃えている。だからこその強者なのだ。武は全てに通づる。


 実は異世界系小説に造詣があるが、好物は『婚約破棄されたけど公爵に溺愛されて困っちゃう』系なので、異世界なのにそういうことになりそうもない今の状況を、酷く残念に思っている。未婚。



 ◇◇◇



出席番号一

●藍城真(あいしろまこと)十五歳(以下同年齢のため省略)、男性

●【聖騎士】三階位:体力向上、平静、痛覚軽減、聖術、睡眠、身体強化


 山士幌高校一年一組学級委員長。身長は百七十センチ、しっかり整えた短めの髪にメガネという優等生男子のお手本のような容姿を持つ。クラス召喚モノでいう『勇者ポジ』な存在。

 神授職の【聖騎士】は治癒魔術たる【聖術】が使える騎士。まさに勇者だ。


 父親は山士幌町長。そのため幼いころから大人の綺麗さと汚さを見て育ってきた。お陰でリーダーたる存在は調停能力で判断されるべきと考えるようになった。思考は大人びているが生来の善性が前に出るため、人間関係に対して強行を避けて自然に和で接するようになった。


 そんな彼の本質を周りが理解してしまっているが故に、中学一年の時点から無投票で委員長に選出され続けている。

 自分にできることとできないことをしっかりと分析できていて、他人の面子を立てながら役を割り振るという、そこらの大人ですら難しいことをやってのける。ただし長年の付き合いがあるクラスメイトが相手だからではあるが。


 根本的な気質は気弱であるが、判断が必要とされたときに決断することをためらわない、やればできるタイプ。口調は丁寧で基本真面目。

 成績はクラスで上位だが、運動能力は中くらい。SF好きであり、異世界の非常識を科学的に捉えようとする傾向がある。



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出席番号二

●上杉美野里(うえすぎみのり)女性

●【聖導師】四階位:体力向上、聖術、魔力浸透、平静、睡眠、魔術強化、治癒識別、解毒


 身長百五十八センチでちょっと太目。シニヨンヘアでタレ目気味の優しげな風貌が特徴。

 クラスのお母さん役で、召喚されてからは【聖導師】というレアジョブもあり、一部から聖女呼ばわりされている。その証拠に謎の温かいフィールドを展開し、彼女と会話をするだけでクラスメイトに【平静】が生えるというすさまじさを見せつけた。これは神授職とは無関係である。


 山士幌町に古くからある小料理屋『うえすぎ』の一人娘であり、次期店長と目されている。店の常連には学校関係者のみならず各業界の人物が多いため、彼女の社会的影響力はクラス随一となっている。高校生にそんな力があってたまるかという話でもあるが。

 常に微笑みをたたえていて、激高するところを見た者はいない。だけどなぜか怖い時もあり、その場合は無条件降伏が推奨されている。


『二班滑落事件』で迷宮二層に転落し、役割を果たしながら生還を成し遂げる。結果として四階位を達成して【聖術】使いとしてはいっぱしの技能を持つに至った。

 一年一組にはヒーラーが三人いるが専任は彼女のみ。クラス最強の回復役だ。



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出席番号三

●海藤貴(かいとうたかし)男性

●【剛擲士】三階位:身体操作、平静、睡眠、身体強化、体力向上


 身長百七十二センチで筋肉質。坊主頭とまではいかないがかなりの短髪で、いかついが割と整った顔立ちをしている野球少年。普段はぼんやり気味の昼行燈を気取っている節がある。左投げ左打ち。

 中学までは野球部に所属していたが、山士幌高校には野球部が無いため陸上に転向する予定だった。近郊の帯広には甲子園凖常連レベルの強豪校もあるが、そちらには進学せずのんびりと草野球を楽しむつもり。


 神授職の示す通りモノを投げるのに適した技能を取得できるが、現在はまだ基礎作りの段階だ。【投擲士】の上位であるが、戦場、つまり城外で光るタイプの職であるため近衛騎士には格下と見られているのが面白くない。クラスの男子としては最強レベルの身体能力を持っている。


 家は酪農を営んでおり、将来は継ぐ予定。同じ酪農家を実家に持つ八津とは牛談義が可能なので、ちょっと喜んでいる。

 姉が獣医を目指し帯広農業畜産大学の獣医学科に入学、パラレルワールド主人公の芳蕗文音が先輩として同じ研究室にいたりする。


 ヤンキー風の佩丘とつるんでいることが多いが、性格は温厚にして熱血。むしろクラスメイトと佩丘の橋渡しになることも多い。



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出席番号四

●加朱奈ミア(ミア・カッシュナー)女性

●【疾弓士】五階位:身体操作、身体強化、平静、睡眠、一点集中、上半身強化、体力向上


 身長百六十二センチで細身。ブロンドヘアを雑なポニーテールにまとめ、緑色の瞳が特徴的な妖精を思わせる容姿を持つ美少女。『耳の短いエルフ』と呼称される。八津的クラス美少女ランキング番外。

 属性過多のサブヒロイン。日本生まれの日本育ちであるが、父母共に元カナダ人(現在は日本に帰化)のため、容貌は完全に金髪外人である。父は帯広農業畜産大学の教授、母は山士幌で手作りチーズのオシャレな店を開いている。

 語尾が『デス』なのは家庭内会話をあえて英語とフランス語でやっているから。キャラ立てなんてない。召喚されてフィルド語をマスターしたお陰で四か国語の話者となる。某英語教師の立場が危ない。


 性格を一言で表現するなら明るいやんちゃ坊主。野生のエルフが現われた。

 運動部には所属していないが『北方中宮流』道場で弓術を齧ったことがある。その身体能力は一年一組でもトップクラス。戦闘センスならばナンバーワンの可能性が高い。


 いつも明るく陽気だがそれが突き抜けた感があり、空気を読まない時も多い。一年一組のメンバーらしく、根は完全な善性に寄っている。



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出席番号五

●草間壮太(くさまそうた)男性

●【忍術士】四階位:体力向上、平静、気配察知、身体強化、睡眠、気配遮断


 身長百六十五センチで細身。前髪長めのメガネ男子。実はファッション陰キャ。

 父は普通の営業マンで母はパートという、都会目線でごく普通の一般家庭なのだが、逆に一年一組ではそれが特徴になるところが怖い。本人に将来展望がなく、召喚時の帰還問答でも最後まで帰ることを渋った。状況を深刻にとらえきれていなかったがゆえである。


【忍術士】といういかにもな神授職を得た、物語序盤で調子に乗って自爆するタイプのキャラ。【隠蔽】や【偽装】というスキルは存在していない。当人はそちら側の物語に疎く、むしろメジャーな大作洋画を好むごく一般的な高校生代表でもある。勉強も運動もそこそこ。


 しっかりとした義理人情は持っていて『八津ハーレムパーティ事件』では危機を顧みず技能を取得し、いち早く八津らの救援に駆けつけ、そのまま戦線に参加した。お陰で四階位に。

 基本無口ではあるものの、会話があればキチンと参加する、本当に普通の少年。



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出席番号六

●酒季夏樹(さかきなつき)男性

●【石術師】三階位:体力向上、平静、高揚、石術、睡眠、魔術強化


 身長百六十二センチで小柄な細身。子犬系弟キャラな女子顔男子。男の娘ではない。

 双子である酒季姉弟の弟の方。クラス内男子最低身長であり、姉の春風からは夏と呼ばれるため、周りからも夏樹、夏くんと下の名前を使われている。クラスの女子生徒全員から弟認定をされておりある意味幸せ者なのだが、本人は大層複雑な気分である。


 ゲーム関係に詳しく、召喚後の活動としては『システム・技能』の両方についての検証を担当している。

【土術師】の上位である【石術師】という石を操作することに長けた神授職を持ち、本人の趣味嗜好から、いつかは『ストーンバレット』や『ストーンウォール』を作ることを夢見ている。そんな技能はない。


 明るい性格で誰にでも好かれている。クラスの中で比較的ひねくれものの部類に入る佩丘や田村からも可愛がられているという、ある意味無敵キャラ。



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出席番号七

●酒季春風(さかきはるか)女性

●【嵐剣士】四階位:身体強化、平静、身体操作、体力向上、睡眠、一点集中


 身長百六十センチで細身。ベリーショートのボーイッシュお姉ちゃん。顔立ちは双子の弟、夏樹と瓜二つ。

 酒季姉弟の姉の方で一人称は『ハル』。周りからは『春』と呼ばれる。ニカっとした爽やかな笑顔が魅力的なカッコカワイイ系女子。


 小学から陸上短距離を得意とし、高校でも陸上部に入る予定だった。アウトドアでアクティブな女性。警官である父親を誇りに思っており、正義感が強い。堅苦しい正義ではなく人情味も忘れていないため、たまにお堅い中宮凛とぶつかることもある。


【豪剣士】の中宮と並んで【嵐剣士】である彼女はスピードタイプの剣士となる予定。一年一組の正統派前衛アタッカー、二枚看板の一人だ。ちなみに正統派でないのは空手家・滝沢先生。先生は番外だから仕方ない。



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出席番号八

●笹見玲子(ささみれいこ)女性

●【熱導師】三階位:熱術、平静、高揚、体力向上、睡眠、魔術強化


 百七十一センチでクラス女子の中では最高身長。長めの太い三つ編みを一本、肩に流している。いわゆるフィッシュテールブレイド(らしい)。

 中学から高身長が目立ちバレー・バスケで活躍する、いかにも運動会系のアネゴキャラ。実はそれをほど気が強いわけでもなく演じている部分がある。前衛系神授職ではないあたりにヒントがあるかもしれない。


 山士幌町北部にある山士幌温泉郷の老舗旅館の一人娘にして次期女将。温泉、とくに泉質について一言あるタイプ。【熱導師】というジョブを得て、異世界で自分が理想とする湯を沸かしてみせると意気込んでいる。


【熱導師】は熱を操る【熱術師】の上位ジョブであり、攻撃や敵の行動阻害に優れた術師になる可能性を秘めている。元々の基礎体力に優れているため、標準装備のバックラーの扱いも上手くこなすことができる。つまり自分を守りながら移動が可能な高機動型術師としての活躍が可能ということだ。

 この世界の魔術は総じて射程が短い傾向にあるため、動ける術師はそれだけ有利になる点を忘れてはいけない。



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出席番号九

●白石碧(しらいしあおい)女性

●【騒術師】三階位:体力向上、大声、奮戦歌唱、鎮静歌唱、平静、睡眠、音術


 身長百五十六センチで細身。ダブルおさげに丸メガネのベタな文学少女。おどおど系女子でもある。

 付け加えてオタ系でもあり、異世界転生・転移小説やアニメにも詳しい。古韮、野来、八津と並んで今回のクラス召喚における、女子側では貴重なブレーンとなれる存在。

 文章執筆能力が高く、調べごとの仕上げにおいて書記としても大活躍している。王国魔力研所属のシシルノに見込まれ、神授職と関係なく研究者として勧誘されるレベル。


 アニソン好きであり、歌を歌う時だけ元気になるという性格で、技能【奮戦歌唱】はクラス全員を奮い立たせる。空気振動を操り『音』に関する魔術を得意とするため、バフだけでなくデバッファーとしての活躍も期待される。


 家は大規模小麦農家だが後継が女子だけしかおらず、家同士で付き合いのある野来孝則との非公式婚約が成立している。本人たちが了承したわけではないが、すでに堀は浅い。

 なお白石当人は悪い気はしていない模様。



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出席番号十

●田村仍一(たむらじょういち)男性

●【聖盾師】三階位:体力向上、聖術、魔力浸透、平静、睡眠、造血


 身長百六十二センチで小太り。お坊ちゃん系の髪形をしているが、本人はそれが似合っていると信じている。

 祖父の代から続く田村クリニックを父が医院長、母が事務長として経営しており、三代目になることが確定している。当然医学部を志望しているが、父親が山士幌高校出身であるため、ブランド戦略として当人も同じ高校に行くことを決めた。田村本人は山士幌という町を気に入っているため、敷かれたレールであっても、自分の人生に全く不満をもっていない。


【聖盾師】という前衛か後衛か分かりにくい神授職だが、『師』である以上、後衛と見られている。王国の資料にはほとんど現れない職のため、現状は【聖術師】として行動せざるを得ない。

 現段階で【聖術】、つまりヒーラーとして行動できるのが藍城、上杉、田村の三人だけであるため、それが一年一組として三班行動をする理由のひとつになっている。


 幼いころからからの皮肉屋で、それが気に食わない佩丘とはよくぶつかるが、いざという時はしっかり協力できるくらいの度量は持ち合わせている。まあ彼だけでなく一年一組のメンバーが全員そうなので、それこそがこのクラスの特異性だろう。



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出席番号十一

●中宮凛(なかみやりん)女性

●【豪剣士】四階位:身体強化、平静、視野拡大、身体操作、睡眠、体力向上、一点集中


 身長百六十センチで標準体型。黒髪を高い位置でポニーテールにしているサムライガール。キツい目つきをしているが、名前のとおり凛とした印象を与える美少女だ。

 学級副委員長であり、藍城委員長とは幼馴染の間柄。いわば『勇者』と行動を共にする『女剣士』ポジション。藍城委員長に足りない規律と武を補う存在である。


 父は農協の役員であり、地元の名家。その関係で町長の息子である藍城と知り合うことになった。当人も農協への就職を希望しており、このまま大学へ進学する予定だ。


 文武両道を体現したような生き様で、先祖が富山から山士幌に移住してきた代から続く『北方中宮流木刀術』の継承者として修業を続けている。木刀振り回すガールだ。

 一時期同門となった滝沢先生を深く尊敬していて、心の中では昇子姉と呼んでいる。


 天才型ではなく努力型の武術家で、どちらかというと天才肌のミアや綿原を羨ましく思っている節がある。滝沢先生を例外とすれば、現時点で一年一組最強の武力を誇る。



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出席番号十二

●野来孝則(のきたかのり)男性

●【風騎士】三階位:体力向上、平静、痛覚軽減、睡眠、身体強化


 身長百六十五センチで細身。気弱そうな、言い方を変えれば優しそうな容貌を持つ文系オタク少年。

 家は大規模小麦農家で、孝則はその次男。同い年の娘を持つ白石農場が娘婿として狙っている。本人としては悪い気はしていない。


 八津と綿原をして【風騎士】という神授職がマッチしていないと言われるくらいには温厚な性格をしている。

 今回のクラス召喚に際して、異世界モノのお約束を知っていたのは八津、古韮、野来、白石、疋、そして滝沢先生の六名。その内冒頭の四名がオタグループとしてクラスでは認識されている。


 気弱、温厚、オタクと評されているが、いざ事が起きれば、とくに白石が巻き込まれるような事態になれば体が勝手に動いて守りにいくくらいの気概は持っている。もしかするとそれこそが騎士の資質なのかもしれない。



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出席番号十三

●佩丘駿平(はきおかしゅんぺい)男性

●【重騎士】三階位:体力向上、平静、痛覚軽減、睡眠、身体強化


 百七十五センチはクラス最高身長。ゴツイ輪郭に鋭い目つきと、微妙にツーブロックの髪形が昔風ヤンキーを連想させる。口調も荒くワルの印象を強めているが、中身は一年一組のメンバーらしく仲間意識と恥を知る気概を持っている。

 小学生低学年で両親が離婚、母一人子一人で生活してきたため、父親を亡くして山士幌に来た八津に対し思うところがある。微ツンデレ。

 母親はよりによって田村クリニックで看護師長をやっているため、佩丘と田村は表面上は仲が悪いのにつかず離れずという微妙な間柄になってしまった。


 大きな体格と粗暴な態度から勘違いされがちだが、将来の目標は母親と同じ医療職の理学療法士であり、大学進学組。成績もクラス上位を維持している。

 帰宅部で料理上手、買い物上手と、実は優良物件だったり。


 そうした性格を鑑みればまさに騎士としての素養十分であるとも言えるだろう。騎士系の王道にして上位職【重騎士】は将来クラス最強の盾になると予想される。



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出席番号十四

●疋朝顔(ひきあさがお)女性

●【裂鞭士】三階位:体力向上、平静、高揚、身体操作、睡眠、魔力伝導


 身長百五十七センチで標準体型。ちょっとだけ色を抜いた茶髪をウェイビーにした、オシャレ系だけどギャルになりきれないチャラ子。

 両親は美容室『ヘアサロン・HIKI』を営んでおり、当人も公言はしていないが後を継ぐべく美容師を目指している。


 こっそり異世界系小説を嗜んでは白石と談義しているが、クラスの連中にはバレバレだった。得意ジャンルは異世界恋愛。ただし溺愛ものはちょっと胃もたれしているらしい。

 そんな異世界適合率が高い彼女が故に、帰還問答では戻りたくない組のひとりとなるが、実家のことを考えあっさり態度を翻す。


 ピッチャーの海藤、アーチャーのミアと並び【裂鞭士】の彼女は、遠距離物理アタッカーを期待されている。しかし海藤、ミアが経験者であるのに対し、朝顔は鞭など使ったことがない。しかも鞭使いは遠距離魔力伝達攻撃がウリだと発覚したため、彼女の孤独な戦いが始まりそうになってしまった。現状唯一の【魔力伝導】持ちでもある。



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出席番号十五

●藤永陽介(ふじながようすけ)男性

●【雷術師】三階位:体力向上、雷術、平静、水術、睡眠、魔術強化


 身長百七十センチで標準体型。微妙に髪を伸ばした一見チャラ男だが、語尾が『っす』のため下っ端キャラ感が強い。

 もしかすると一年一組の中で一番気弱かもしれない人物。ヘタレ感バリバリである。


 雷使いという強力な神授職でありながら、現状できるのはちょっとした静電気でピリっとするくらいのレベル。微弱スタンによる牽制が手いっぱいという状況だが【水術】と【魔術強化】を取得したことで、もう少しマシな攻撃を見せられるようになるかもしれない。


 父親は地域密着型の電気工事士で、なにげに顔が広い。本人もそんな父親に憧れ、将来を見据えている。隠れ理系男子。


 現状では深山応援キャラとしてしか活躍していないので、今後に期待したい。



 ◇◇◇



出席番号十六

●古韮譲(ふるにらゆずる)男性

●【霧騎士】三階位:体力向上、平静、痛覚軽減、睡眠、身体強化


 身長百七十二センチの標準体型で、自称平凡、他称チョイイケメン顔がトレードマーク。

 主人公八津の高校における最初の友人にして、クラスのオタクリーダー的存在。またの名を『ギャルゲの親友ポジ』。要はお助けキャラだ。


 なにげに恋愛脳の持ち主で、良くも悪くもクラス内カップリングを楽しんでいる。当人のターゲットは聖女上杉であるが、憧れの方が強くて前に出れないでいる。

 異世界転生オタクトークは古韮、野来、八津の三人が頻繁にしていたこともあり、委員長から『異世界システム担当』のリーダーを任命された。


 父が八津の父親と同僚であり、入学前から八津が来ることを知っていた。

 八津の事情を知っていたからこそ、趣味と関係なく入学初日から話しかけるという優しさを持っている。彼もまた騎士に相応しい資質を備えていたのだ。



 ◇◇◇



出席番号十七

●奉谷鳴子(ほうたにめいこ)女性

●【奮術師】三階位:体力向上、平静、鼓舞、魔力浸透、睡眠、魔力譲渡


 身長百四十八センチはクラスで一番小さい。ショートカットにアホ毛を追加した元気ロリボクっ子という属性盛りだくさんな少女。


 古韮をして『おてんとさま』と呼ばせる、クラスのムードメーカー的存在だ。元気に我が道を行くミアや慈愛で引っ張る上杉とは別方向のカリスマを持っている。

 一班の班長決めの際には、古韮や田村を差し置いて満場一致で選出されるほどにクラスメイトの信頼は厚い。


 力でも賢さでもなく、心が強いタイプ。

 笑いたいときに笑い、泣きたいときには泣く、けれど明るさは忘れない。誰もが納得してしまう理由もあるが、彼女を見ている人たちはなぜか自然と勇気づけられるのだ。まさにクラスのバッファーである。


 異世界に来てもそれは変わらず【奮術師】という皆を奮い立たせて、力を与える職を得た。みんなを励ましているうちに【高揚】を生やしてしまうくらいにすごい。

 直近では【魔力譲渡】を取得しており、魔力タンクとしても活躍が期待されている。



 ◇◇◇



出席番号十八

●馬那昌一郎(まなしょういちろう)男性

●【岩騎士】三階位:身体強化、平静、痛覚軽減、睡眠、身体操作


 身長百七十五センチで大柄、筋肉質。短く刈り上げた髪が彼の実直さが表しているのかもしれない。

 自称ライト軍オタク。広く浅くをモットーにしていて、濃い連中には敵わないことをキチンと理解しているデキたオタ。

 運動会系ではなく実家の農作業を手伝い、さらに筋トレを欠かさないというセルフスタイルで身体を作り上げた。ぶっちゃけヤンキー佩丘より強い。


 そんな彼は自衛官を志望している。が、小麦農家の親は大反対。本人は弟がいるからいいじゃないかと思っているが、弟にだって職業選択の自由はあるし、いろいろ難しいのが親の感情だ。

 異世界転移において帰還を望まなかった生徒の一人だが、親としっかり話し合えというしごく真っ当な指摘を滝沢先生から受け、帰還に同意する。


 ミリオタを拗らせたのではなく、自衛官志望が故に詳しくなったタイプ。

 寡黙で口数は少ないが、戦闘においては【岩騎士】の名のとおり、正統派の騎士として佩丘と並び、頼れる盾となるだろう。



 ◇◇◇



出席番号十九

●深山雪乃(みやまゆきの)女性

●【氷術師】三階位:体力向上、冷術、平静、水術、睡眠、魔術強化


 身長百六十センチで細身。姫カットな栗色の髪と赤褐色の瞳、白い肌を持つ薄幸アルビノ風少女。

 気弱というよりビビり側の性格で、何事にも一歩目を踏み出すのに時間がかかってしまう。ただし度が過ぎるとキレるタイプ。けっこう面倒くさい。


 クラスの女子の中では一番大人しい。寒がりなクセに何故か雪が大好きで、冬場はダッフルコートにマフラーを巻き付けて散歩をするのを趣味にしている。

 父親が町役場の職員で家を継ぐということもなく、将来の展望をあまり深くは考えていない。藤永クンのお嫁さんなりたいなあ、くらいに思っているようだ。


 神授職の【氷術師】は氷を飛ばすのではなく【熱術】の温度低下特化型である。【熱導師】笹見の対極に当たる存在で、二人が組めば今のところ霧を生み出す。当たり前だが水との相性が良く、敵の行動阻害を目的とした床面凍結を得意技にしている。

 雪女ならぬ北国少女だ。



 ◇◇◇



出席番号二十

●八津広志(やづこうし)男性

●【観察者】四階位:観察、体力向上、平静、視野拡大、集中力向上、睡眠、一点集中、痛覚軽減


 身長百七十センチの標準体型。黒髪のザ・平凡ギャルゲ主人公な容貌をしている。

 ずっと文化系だったため体力がある方ではないが、ひ弱というワケではない。


 性格は慎重で温厚。年相応な調子の良さと、根拠のない万能感を持つ、いたって普通の高校一年生だ。

 変な方向で成熟しかけている山士幌高校一年一組の中では、とりわけ普通といえるだろう。


 引っ越してきてクラスに馴染めないうちにハズレジョブを引いてしまった主人公っぽい存在、それが八津だ。


 半年前に父親が病気で急死し、山士幌にある母親の実家、矢瀬牧場で母と妹と一緒に暮らしている。とはいっても山士幌に引っ越すのは父親が存命の頃からの既定路線であった。札幌本社勤務だった父親は、一家そろって故郷の山士幌支店長に赴任することが決まっていたからだ。八津家の両親はともに山士幌の出身である。

 当人も小学二年までは山士幌で暮らし、札幌に移住した後も年に一度は矢瀬牧場に遊びに来ていたくらいには、牧場や農場を見るのが大好きなのだ。


 完全なオタク気質で、将来はアニメ関連の仕事に就きたいと漠然と考えているが、だからといって何かしらの努力をしているわけではない。そういう意味では目標をしっかりと持っているクラスメイトとは大違いである。

 高校では文芸部をがんばって、なんとなく文系の大学に行って、なんとなく文化系サークルに入ろうか、くらいの将来像だ。よくある話。


 そんな彼は召喚され【観察者】となった。メインスキルは【観察】。ただひたすら視界に入るものが『やたらと見える』だけの技能である。

 相手が止まったり、スローモーションになるわけではないし、三秒後の未来が見えることもない。よく見えるからといって、何かができるような反射神経が加わるわけでもない。そんな技能の持ち主だ。


 階位を上げて『内魔力』を消費することで【視野拡大】【集中力向上】を使い、段々と動きが良くなってきてはいるが、戦闘力という意味ではクラスの真ん中程度でしかない。【身体強化】を持っている相手には絶対に勝てないのだ。

 今後、新しい技能を取得することでどう化けていくのか、外様だった彼がどういう風に綿原をはじめとしたクラスメイトたちと交流していくのか、そして皆がどうやって勝利していくのかが、この物語のメインテーマになるだろう。


 八津は主人公であると同時に傍観者であり、狂言回しとすらいえるかもしれない。

 だがそれは、見えている者だからこそできるロールだ。



 ◇◇◇



出席番号二十一

●綿原凪(わたはらなぎ)女性

●【鮫術師】四階位:鮫術、体力向上、平静、砂術、睡眠、身体強化、魔術強化


 身長は百六十二センチ、細身の美人。黒髪ストレートのクール系メガネ女子。本作のメインヒロインである。

 実家は北海道全域をカバーするコンビニ、サイコーマートの山士幌西店。今年の四月から大手を振って店番を始めたばかりの召喚だった。


 不思議クールなサメ映画大好き女子で、スプラッタ耐性は高い。

 クールといってもあまり雑談をしないタイプなだけであって、サメ映画が関われば饒舌になるのは基本だろう。

 それ故、なぜか普通に雑談できてしまう八津が気に入っている。その気持ちは何処へ向かうのか。


 術師系は操作をするにあたり、得意な物質が偏る傾向がある。空気そのものや水、風、土などなどだ。【鮫術師】は形状こそサメに限定されるが、様々な物質を操ることができる変わった術師。現状【霧鮫】【砂鮫】【空気鮫】が登場した。本人的には攻撃力も考慮して【血鮫】【肉鮫】を狙いたいらしい。


 中学までは陸上長距離をやっていたため、運動能力は高い。

 そのせいか、それとも【鮫術師】の特性なのか、『八津ハーレム事件』時に【身体強化】を取ることができた。素で殴り合えば確実に八津に勝つことができる、立派な殴りウィッチだ。

 暴力系ヒロインにあらず。やってやるぜ系女子。



 ◇◇◇



 以上、山士幌高校一年一組二十一名プラス教師一名の紹介でした。

 次話からは通常の進行となります。


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