色付く爪は私の恋心のようで
赤猫
ほんのりピンク
爪が寂しく感じてちょっとネイルをしてみることにした。
ほんのりピンクの可愛いやつ。
一目惚れして買ったけど勇気がないからつけられなかったやつ。
慣れないことをしているからはみ出したりとかしてとても時間がかかったけれど私にしては上出来と言ってもいいくらい綺麗にできた。
自分の爪に色があると少しだけ心が弾んで足取りが軽く感じる。
自分が女の子だって言うことを自覚できるから。
好きな人に気づいて欲しいなんて欲張りなこと考えて貴方に会うけど、貴方はそんなことよりお昼ご飯を楽しみにしていて少しだけ寂しく思う。
でも隣にいるのが楽しいからそれでいい。
我儘を一つ言うとすれば、友達以上恋人未満な少しだけ私にとって不満のある関係というだけだ。
それは私が好きと貴方に勇気を出せないからだ。
弱気になって貴方に対して女の子になれなくて友達になってしまうからだ。
『すき』と心の中では何回も貴方がいない所では数えきれない程に呟いていてもいざ貴方と見ると口が縫われたかのように言葉が紡げなくなる。
「俺、好きな人いるんだよね」
突然お昼頃のファミレスで言われた言葉にはショックを隠しきれなくって相槌の声が震えたよ。
誰って聞きたいけどそんな勇気もないから私は、貴方に「頑張って、応援してる」って言うだけで精一杯でした。
そのあとはイマイチ覚えていなくってあっという間に夕暮れ時になっていた。
急に寂しくなって自分の爪を眺めるとキラキラと細かいラメが光っていて私の心とは真逆の感じがした。
「ありがと楽しかった」
いつものようなお別れの挨拶をして背中を向けようとすると貴方は大きな声でこんなことを言ってきた。
「…爪可愛い色してる、似合ってる!」
驚いて貴方の方を向くと夕日のせいかもしれないけど、顔が赤いように見えたのはきっと気の所為だ。
「…ありがとう!」
その言葉を聞けただけで胸が甘酸っぱい感情で満たされていく。
貴方には好きな人がいるのにそんなこと言ってきて、つい期待をしそうになる。
緩みそうになる頬を必死に引き締めて手を振って私は帰る。
家に帰るとたくさんの感情が抑えきれなくてワンワン泣いてぐっすり眠った。
…貴方の好きな人が私だったら良いのにって思っちゃったけど許して欲しい。
貴方に迷惑かけないためにこの感情は伝えないから。
だから…ちゃんと貴方の恋を応援するから、成功させてね。
ほんのりピンクに色付いた爪は、部屋の人工的な光に反射してキラキラ輝いていた。
色付く爪は私の恋心のようで 赤猫 @akaneko3779
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