物語は繰り返す
ブランコは動き続ける。前に、後ろに、動き続ける。
前進しては後退し、その場に囚われたまま動き続ける。
私の意識もこの場所に囚われたまま揺れ続けている。目眩は治まらない。頭上で風音を鳴らしながら前後するブランコ。その下で揺れる私。
「吾輩は猫である」の裏に書かれた歌が、その節を知らないはずなのに頭の中をぐるぐる廻る。
ブランコを漕ぐ人間の欲深さに吐き気がする。
ほとんどの人間が、夕陽が沈み切る前に他の欲望が頭をよぎり、ブランコから滑り落ちて、剃刀となったブランコによってその頭を転がしていた。
首から溢れる体液は、相変わらず穢らわしい。その体液を吸って生きる私はもっと穢らわしい。
ブランコを支える四本の柱は、下の方だけ不気味に白い。どんなに血を浴びても、真っ白なブーツを履いているように白い。
私の身体も、血を吸い続けているのに青々としている。
ただ、私と支柱、シュロの木以外は全て夕陽色に紅く染まっていた。
Swing Razor(スウィング レザー) 西野ゆう @ukizm
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