第3話 後輩ちゃんとしりとり(えっちな言葉縛り)
「先輩。しりとりしませんか?」
ゲーム同好会の部室で、いつものように後輩ちゃんと駄弁っていると、彼女が不意にそんな提案をしてきた。
しりとり。
ルールについては詳しく説明する必要もないだろう。
子供から大人まで楽しめる遊び、ゲームだ。
いちおうゲーム同好会なので断る理由はない。二人でやるにもちょうど良いし。
「うん。いいよ。で、どんな『縛り』でやる?」
しりとりは、じっくりと無限にある言葉を選んでいけば、それこそ永遠と出来てしまう。
が、制限を付け加えることで、その難易度はいくらでも調整できる。
後輩ちゃんは、待ってましたとばかりに、笑顔で告げた。
「はいっ。ずばり、どんな言葉にも『えっちな言葉で返す!』です」
「……そんなことだと思った」
「ただし! 先輩は普通の言葉で大丈夫ですっ。むしろ普通の言葉縛りで。えっちな言葉縛りは、あたしだけですっ」
「それって、単に後輩ちゃんが、えっちな言葉を言いたいだけじゃ……」
「いいですよねー。真面目な言葉に対し、常にえっちな言葉で返す、そういう言葉のキャッチボール♪」
「……キャッチボールというより、ただの暴投では」
ま、いいか。
後輩ちゃんは楽しそうに手を合わせているし、どうせ暇なんだから、ちょっとぐらい付き合ってみよう。
「じゃあ最初は僕から、定番で……」
そう前置きして、最初の言葉を口にする。
『しりとり』
『リンパ!』
……リンパ?
それって、リンパ腺のリンパ腺? 正直、どこがエロなのか、わからん。マッサージは聞くけど、あれはエロなのか?
ただ、後輩ちゃんが、むっふんと、自信満々なので、たぶんエロ要素があるんだろう。
まぁ、始まったばかりだし、ここは続けよう。
えーと。ぱ、ぱ、だと。
『ぱん……や』
あ、危ない。思わず後輩ちゃんのえっちな言葉ルールに釣られて『ぱんつ』って言いそうになってしまった。
――けっして、『パン』と言って負けになりそうになったわけじゃない。
そもそも、しりとりって、たいてい縛りで言うネタが無くなって負けることがほとんどで、『ん』で終わって負けることなんて滅多にないし。
『ヤリマン――っぽい子っ!』
「ふぅ。危ない危ない。思わず、『ん』で終わっちゃいそうになりました。――やりますね、先輩」
あ、うん。
まぁ、気を取り直して……
こ、こ……
『こども』
『もじゃもじゃ』
俺に見せるように、後輩ちゃんが軽くスカートのすそをつかんで持ち上げる。
ああ、その部分の毛のことを言っているのね。
「むふふ。別にあたしが、もじゃもじゃ、って言ってるわけじゃないですよ。そこはシュテレンガーですからね、謎のままで良いのです。――あ、それとも『つるつる』の方が、先輩的にはえっちですか? いやん」
『やり』
後輩ちゃんの戯言はスルーして先に進める。
り、り……と後輩ちゃんは呟いて。
『りょうじょく!』
『くり』
僕が思いついた言葉をさっと口に出すと、なぜか目の前の後輩ちゃんが、恨めしそうな顔をして、僕を睨んでいた。なぜに?
――あ、そうか。
無意識だったけど、『り』の繰り返しになっていたんだ。
しりとりの定番。同じ末尾返しである。
すでに『リンパ』(?)と『凌辱』を使った後輩ちゃん。
他に『り』で始まるえっちな言葉はあるのか……?
「り、り、り……うう。負けましたぁぁ」
後輩ちゃんが机に突っ伏した。
――かと思ったら、急にがばっと顔を上げた。
「てか先輩っ。『くり』って何ですかっ。くり、って。『クリ』ときたら、『トリス』と、最後まで言うのが礼儀じゃないですか!」
……礼儀とは?
「いや。『くり』は普通に食べる栗のつもりだったし。さすがにそっちの意味はちょっと……ていうか、僕の方は逆に普通の言葉を使うってルールだったし」
「あ、そういえばそうでしたね。じゃあ今度『く』が来たとき、あたしが声高々に宣言しますっ」
「……って、またやるの?」
「大丈夫ですっ。そこはちゃんと問題ない言い方にしますので!」
後輩ちゃんは自信たっぷりに胸を張って言ったけど、大丈夫かなぁ(メタだけど小説サイト的に)
「では今度はあたしから始めますね。……んーと『しりとり』。言葉だけ聞けば、えっちですよね。お尻取り」
「そーだね。じゃあ、えーと」
り、り……
『料理……番組』
危ない危ない。
また『り』で、終わったら、後輩ちゃんがちゃぶ台返ししかねない。
慌てて付け加えた。
『み――、み・だ・ら(はぁと)』
『……ラッパ』
『パンツ!』
後輩ちゃん即答。
ごめん、ほんと、狙ったわけじゃないから――先輩ナイスパスっ、みたな表情やめて。
『つ……、つくえ』
『(先輩の)え・っ・ち』
『……ちくわ』
なんかツッコミするのも疲れた。
『わ……わいせつ!』
つ、つ……と、あ、きた。
俺はゆっくりと、後輩ちゃんにパスするように言った。
『つうがく』
「……えっと先に言っておくけど、ストレートに叫ぶのは止めてね。いろんな意味で怖いから」
「大丈夫です。ちゃんと伏字にしなくても大丈夫な言い方にしますから」
後輩ちゃんは、胸を張って、堂々と答えた。
『く――クリちゃん!』
あ。
「あ――」
後輩ちゃん、負け。
後輩ちゃんとシュテレンガーのおっぱい 水守中也 @aoimimori
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