2人で前へ

「悲劇の…ヒロイン……。」

「虹七にぴったりーww」

「布まで被っちゃって…ww」


周りにいる子達もクスクスと笑い始める。最悪…。転けた上に笑われるなんて…。顔に熱が集まるのを感じる。心臓が嫌な音をたて始める。ここに居たくないっ…。やだ、誰か…。














「__お迎えに上がりました。お姫様。」

「…………へっ?」


声がした方に目を向けるとそこには能登山君が立っていた。なんで……。


「俺のクラス、執事喫茶なんですよ。」


あ、だからタキシードみたいなの着てるんだ。ぼーっと見てたから全然気づかなかった。


「…失礼します。」

「きゃっ…!?」


能登山君が私の背中と足裏に手を回す。えっ!?これって姫抱き!?ちょっ…ここ、みんな居るのに…っ!待って!ちょ能登山君!?


「先輩……。笑わせないでください…ふふっ。心の中渋滞してますよ…くくっ。」


だ、だって!恥ずかしいし…。能登山君はとんっとジャンプして舞台から降りる。その様子にきゃー!!と女子が黄色い悲鳴を上げる。あ、そっか。能登山君ってイケメンの部類に入るんだった。


「なんですか、それ。先輩、俺の事なんだと思って…。」

「え、変な人。あ、ごめん…。」

「ふはっ!いや、大丈夫です。」


と会話しながら体育館を出た。









「……ありがと、能登山君。」


体育館から少し出たところで降ろしてくれた。ご無事で何よりです。と執事っぽい演技をする。どうしようか。私もうみんなの所戻れないや。怖すぎる。能登山君の事聞かれるのも確実だし、みんなになんて言われるか…。


「もう、気にしなくていいんじゃないんですか?」

「え?………あ、手繋いだまま…。」

「先輩って鈍いんですか?じゃなくて、もう普通でいなくていいですよ。」


………そうしたい。けど私は…。先輩。と私の目線に合わせて屈む。


「誰が決めたか分からない普通を守る必要なんてないんですよ。」

「っ………!」

「俺はもうすり減っていく先輩を見たくありません。壊れて欲しくありません。………好きな人が無理して欲しくない……です。」


…………ん?好き…。え、誰が誰を?


「俺が先輩を。」


え、はい。は?ちょちょ待って頭追いつかな…。


「……そ、こは置いといて。でも私まだ怖いよ。誰になんて言われるか分からないし…。独りになりたくない。世界に置いていかれたくない…。」

「なんでそこに俺は入ってないんですか?」

「…え?」


目を合わせずらくて下を向いていたが驚いて顔を上げた。なんで…………。なんでそんな切なそうな顔してるの…。


「先輩の中で俺ってそんなに小さい存在ですか?確かにまだちょっとしか会話したことないし、俺は先輩の全部を知っている訳では無いです。でも、俺って…そんなに頼りなかったですか?そんなに先輩の凍りついた心に俺の言葉は届かなかったですか?」


違う。違う…そうじゃないよ。


「届いてる。ちゃんと。能登山君がちゃんと考えて私の事を思って言ってくれてる事だって分かってるよ。」


ああ。なんで私はこんなにも人に迷惑をかけることしか出来ないのだろう。こんなにも優しい言葉をかけてもらってるのに受け入れるのが怖い。不器用な私に腹が立って涙が溢れる。


「ごめんね。怖いの…。」

「………簡単に大丈夫だなんて言葉、使わない方がいいんでしょうけどあえて言います。先輩、大丈夫です。何かあっても俺がいます。先輩が変わって笑ってくるやつ、陰口を叩くやつ、急に媚び売ってくるやつは放っておいて大丈夫です。そんなの先輩の友達だなんて言えません。ありのままの先輩を好きでいてくれる人を探しましょう?」


変わりましょう。と私に微笑む。あ、私。能登山君の事……。バッと能登山君と握っている手を振り払う。


「先輩?」


わ、たし、今能登山君の事………好きって……。握られていた手をぎゅっと胸元によせる。待って待って、心臓が痛すぎる…。


「か、変われるように頑張る…し、やりたい事も出来るようにするっ。能登山君とならできる気がする。………でもちょっと触れるのは禁止。」

「えー!?何でですか!?い、嫌でしたか?もしかして執事の演技下手すぎました!?」

「ち、ちが………。今、心読まれたら……死んじゃう…。」


向こうは好きって言ってくれたけど私さっき好きって気づいたのに……。かぁぁ。と顔が熱くなる。


「今井先輩……。もしかして……熱ですか!?さっき保健室居ましたし…悪化した感じですか!?ちょっと熱はからせて……。」

「や、やだ!なんでこんな時は鈍感なの!?私に鈍いって言ったくせに能登山君も変わらないじゃん!」

「何の話ですか!?ちょ、逃げないでください!」


迫り来る能登山君の手から逃げる。……楽しい。今、私素でいれてる気がする。


「あ。」


能登山君に手をつかまれる。さ、最悪。なんて言われるかな…。ちらっと能登山君の顔を見る。


「……………だからつかまないでって言ったのに…。」


能登山君の顔は今までに見たことがないくらい赤かった。


「え、せんぱっ…。」

「………私も、同じ気持ちだよ。」


つかまれた手を握り返す。


「最後まで一緒にいてよ?」

「え?」

「私の事好きなんでしょ…。」


ポカン。としたあとぱぁぁ。と笑顔になる。ま、眩しい…。


「はい!一緒ですっ!」


繋いだ手を離すことなく2人で歩き始めた。

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普通からはみ出た私達 星空夢叶 @yumegamitai

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