第4話 宴会

『さぁチカ、どうぞ』

『ねぇチカ、こちらもおいしいよ?』

『チカ~! はい、あーん』

『あ、あーん……おいしいね、えへへへ……』


 私は今何故かギャルみたいなドワーフ女子に囲まれて、全力でチヤホヤされているという謎の状況にある。

 だが……悪くない。

 悪くないぞ!

 …………後で凄い請求書とか来ないよね?

 

『それにしても地竜を一人で倒すとは、なんと素晴らしい』

『地上から来たというておったが、今でも戦争は続いておるのかの?』

『流石に800年もしとらんじゃろ』

『エルフどもはどうしたんじゃろな?』


 なんだか髭もじゃのおじいちゃんドワーフたちが、すぐ横で物騒な話をしている。

 どうやら、このドワーフとその仲間たちは、エルフの連合軍に負けて、800年前に地下へと移住してずっと暮らしているようだ。

 とはいえ、もともと地下が好きな種族な上に陽の光が苦手らしく、地上にいたころよりも、むしろ快適に過ごしているとか。

 というかおじいちゃん800年以上生きてるの……とっても元気ね。


 ただこの快適な地下暮らしにも、深刻な問題があるらしい。

 それが先ほどの地竜ということだ。

 実はこの地下空間は複数の階層からできており、この階層の下には、地竜達が暮らしている場所があるらしい。

 そいつらがごく稀に、この階層に迷い込んでくるというわけだ。

 一旦地竜が出てくると、とんでもない大暴れをし、街に甚大な被害をもたらすこともあるらしい。

 そこで、巨大な罠を仕掛けたり、ドワーフの戦士たちが数百人規模で戦闘を行い何とか倒しているらしい。

 今回の地竜は特別強力で、何度も討伐に失敗し、相当苦戦していたらしい。

 多くの犠牲が出たせいで、次に打てる戦略の幅も狭まり、行き詰まったっていたらしい。

 そうしてドワーフたちが悲哀に暮れていたさなか、突如私が現れサクッと地竜を倒しちゃったもんだから、一気に英雄へと祭り上げられた模様。

 ちなみにギュンターはこの街の長の息子らしく、前回の遠征で指揮したものの、大量に死傷者を出してしまったらしい。

 その責任を感じ、地竜をすこしでも街から引き離そうと、体を張って一人で地竜に挑んだらしい。

 流石に無茶やろ。

 私を皆に紹介するとすぐ、怖い顔をした父親に引きずられていった。


『お前にはじっくり話しておかねばならないことがある』

『ぁぁっぁあああ、痛い…………。 父上! 私はチカを案内せねば! …………チカ父上に何とか言ってくれっ』

『私も反省した方が良いと思うよ』

『チカ殿、地竜を討伐していただきありがとう。後ほど改めて礼を。今は息子と話がありますので、失礼いたす』

『アッー』

 

 やーい怒られてやんのー。

 ありゃ相当きつく説教されるんだろうなあ…………捨てられた子犬のような顔でこっちみんな!

 がんばれ!

 

 まあともかくドワーフ一般、とにかく陽気な種族で、中々たのしい。

 なにより念話で喋ることができるので、普段できないおしゃべりが全力で楽しめる。

 出てくるご飯は肉ばかりだけど、味付けが和風でめちゃおいしい。

 これ味噌とか醤油とかありそうだな……帰りに貰っていこっと。



 

『エルフがなんぼのもんじゃいー! ここにきてドワーフに襲い掛かるようなら、私が相手になってやる!』

『いいぞー! チカー! かっこいいー!』

『きゃー! 素敵ー! チカー!』

 

 そんなわけで、美味しいものをたらふく食べ、可愛い女の子たちにチヤホヤされ、勇者様と褒めたたえられた私は、かつてない程超絶調子に乗りまくっていた。


『チカ殿、今日は泊まっていかれますか?』

『ありがとう。出来ればそうしたいんだけど…………あっ』

 

 今日は、礼儀作法についてお母様に教わる日……。

 家、帰んなきゃ……お母様に…………ああ、ギュンターさっきは馬鹿にしてごめんよ。

 わたしもお説教コースだよ……。

 うわーん!

 

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貧乏子爵令嬢と地下帝国 あいおいあおい @ds1980

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