HSA

村雨廣一

ファントムレター編

#焼肉焼く話










「飲み物、好きなの頼んで」


 白い小皿に盛られたキムチやら野菜スティックやらユッケやらが店員さんの丁寧な説明とともに次々と運ばれてくる中、隣に座っているまだらんがメニュー表を突き出してくる。本人はメニューも見ずに「黒ウーロン一つ」と店員さんに伝える。そして見たこともない切込みの入った札束のようなお肉を手慣れた様子で網の上に乗せ、じゅわわわわ……!と威勢のいい声で鳴かせながら、


「君も好きなの頼んで。全部奢りだから」


と目の前の――リュックを抱きしめながら小刻みに震えている女子高生に告げた。


「ちょ、……ちょっと待ってまだらん。僕まだ状況が理解できてないんだけど……?」


 女子高生にも目線をチラリとやると、食い気味に頷いてきて全力で同意される。

 なにせ僕たちは今、とくに説明もないまま――話でしか聞いたことのない超の付く――高級焼き肉店の広い個室に連れてこられて、たぶん想像よりもずっと高い金額のお肉に囲まれているのだ。

 まだらんはキレイに盛られたお肉の皿を次々と受け入れながら、「肉を食いに来た」と言うまでもないだろうという表情で答えた。


「いやそれは分かるよ?! そうじゃなくて」

「じゃあまずは飲み物頼んで」


 まだらんがスッと目線をやった先には、困ったような笑顔の店員さんが立っている。慌ててメニュー表を開いてソフトドリンクのページを探す。女子高生も同じくメニュー表を開いたが、――お肉の金額を見てしまったのだろう、「ひぇ……高……」という言葉とともに固まってしまったので、


「ウーロン茶二つでお願いします!」


と笑顔の店員さんに伝えてまだらんに向き直った。

 まだらんは店員さんが扉を閉めるのを見送ってから、僕を生肉用トングで指しながら女子高生に声をかける。


「こちら、HSAのシュク」

「えっ、あっ、はじめまして」

「こちら、件の茂歩あいねさん」

「あっあ、あの! この度は母がご迷惑をおかけしました! ごめんなさい!」

「まあまずは食べなよ」


 まだらんは早速やってきた黒ウーロン茶をぐびりとあおりながら、僕らの取り皿に焼き上がったばかりの肉の塊を無造作に置きはじめる。てらてらと輝くその完璧な焼き加減の肉の塊に、僕と女子高生は話をぶった切られたのを忘れてごくりと生唾を飲み込んでしまう。


「久万さんがよく言ってる。腹割って話し合うには腹が減ってたらダメだって」


 肉がじゅうじゅうばちりと網の上で焼かれる音と匂いが、ひどく暴力的だ。


「いやでもなんで焼肉に……? 喫茶店とかじゃダメだったの?」

「……ああいう安いところには誰がいるか分からない。高い店ってのはそれなりの選ばれる理由がある。……別にシュクと二人っきりで会わせても良かったけど、こういうのは第三者がいるほうが話が進む」


 大人みたいな言い草にきょとんとしてしまうが、それもそうかと女子高生をちらりと盗み見る。現役アイドルと女子高生が二人で密会は確かに絵面がマズい。もうその文字列だけで週刊記者がウジのように這い出てきそうな勢いだ。超高級焼き肉店にはふさわしくないであろう網の上の肉山にどきどきしながらも、どうやらまだらんなりに気を使ってくれたのだなと理解する。


「君もそんな身構えなくていいよ。別に、どうこうしようって呼んだわけじゃないんだから」

「あ……はい」


 まだらんは肉を食いに来たと宣言した通り分厚いタンを炙るようにサッと焼いて、薄切りレモンの浮かぶタレに付けてがぶりと食べる。そのままさっき僕らにも分けてくれた分厚い札束肉を今度は辛そうなタレに付けてほおばり、柔らかかったのかすぐに咀嚼し終わってごくりと飲み込む。そして黒ウーロン茶を一口飲んで、またもくもくと肉を焼き始めた。

 絶対にまだらんが焼肉を食べたかっただけだなと察しがついたが、お昼からなにも食べていないことを思い出したお腹がきゅるると唸る。まだらんは困惑する僕らを気にするでもなく、美味しそうな肉をもぐもぐと食べ続けている。これは本当に食べ進めるまで話をしないつもりだなと観念して、恐る恐る札束肉を口に入れる。すると、言葉では表現しきれないほどの肉汁と甘さが口の中に広がった。

 なんだこれは。なんだこの美味い肉は!


「……! ……!」


 思わずまだらんと取り皿を交互に見ると、公園で野良猫にでも会ったかのような顔でそっと肉を追加してくれた。なんだかくやしいが、お肉がおいしすぎるので全部許せてしまうのが憎い。肉だけに。


「こ……、これが最後の晩餐に、なりませんか……?」


 絞り出したような女子高生の声にまだらんがフンと鼻で笑う。「そんなこと本当に言う奴初めて見た」とか言いながらまた肉をほおばったので、脇を強めに小突いておいた。





「母がご迷惑をおかけして、本当に、申し訳ないです」


 まだらんが好き勝手に頼んだ肉をほぼほぼ食べ終わり、網も交換してもらい、おずおずと注文してもいいか聞いたご飯と追加の肉も食べ終わった頃。いくぶんか表情がゆるやかになった女子高生が、僕に向かってゆっくりと頭を下げてきた。


「わーっ、顔上げてってば! そういうつもりで会ってみたいって言ったわけじゃないんだ。そもそも君のせいじゃないし」

「……でも、シュクさんやスタッフさんに迷惑かけてるのは事実なので……本当にごめんなさい……」

「う~ん……そう言われちゃうと弱るんだけどさ……。そうじゃなくて、話が聞きたくて」

「話ですか?」


 実際のところ、スタッフさんたちのサポートと黒服さんたちの屈強な警備によって直接的な被害はない。なんなら僕自身もある程度は立ち回れるので、ちょっとやそっとでは困らないのだ。

 それでも“ファンレター”が届き始めて一月が経ち、徐々に歪んできている内容にそろそろ周りにも被害が及ぶのでは……?という話が出てきた辺りで、僕はまだらんに一つお願いをしたのだ。


――相手のことが知れるだけ知りたい、と。


 まだらんは明日の天気を調べるくらいの軽さで「いいよ」と答えてくれて、数日後には分厚い茶封筒を渡してくれた。僕はてっきりアンチによる悪質な攻撃だと単純に考えていたのだけれど……。


「うん。君の“お母さん”の話とか、……“弟さん”の話、とか」


 実際は、――僕のことを亡くした子どもだと思い込んでいる母親によるものだった。


 まだらんがくれた茶封筒には、ある一家の資料がたくさん詰め込まれていた。

“ファンレター”の差出人である母親、父親、長女、……そして、三年前に亡くなった長男のことがそれはもう事細かに。

 数日で調べ上げたような内容ではなかったのでどんな手を使ったのか尋ねてみたのだが、「言えない」と真正面からはぐらかされたのはつい昨日のことだったか。


「……弟のことまで、知ってるんですね。私に直接連絡来たときもびっくりしたけど、やっぱ、アイドル事務所ってすごいな」


 僕の貰った資料には連絡先なんて書いてなかったんですけど?という顔でまだらんを見るも、〆の冷麺をずるずるすするので忙しそうだった。というかこの空気の中どうして平然と食べ続けられるのだろうか……。心臓に毛でも生えてるに違いない。


「……でも、どうしてこんなことをしてるのか、知りたいですよね。どうしてシュクさんをまるで弟のように扱っているのか……。母は、あまりテレビを見ない人でした。最近はさらに仕事に没頭する形でニュースすら見なくなって、帰ってくるのも夜遅くとかで……。でもある日『透太を見つけた!』って、慌てて帰ってきたんです。出先で見た大型ビジョンで透太が――弟が、アイドルになってたって。きっとレッスンが忙しくて今まで連絡できなかったのねって、……ホントに嬉しそうにしてて……。最初はなんのことか分からなかったんですけど、次の日に母が買いあさってきた雑誌を見て驚きました。そこには、弟に似た男の子がいたんですから」


 困ったように笑う女子高生が見せてくれたスマホの画面には、小中学生くらいだろうか、はにかんだ表情の黒髪の少年が写っていた。


「シュクに似てなくもない」

「ですよね。……並べて見るとぜんぜん違うけど、パッと見の雰囲気が似てるんです。笑ったところとか」


 僕の横からスマホ画面をチラリと見たまだらんが、もぐもぐしながら呟く。口に物を入れながらしゃべるなって久万さんに言われているのを何度も見たことがあるけど、ぜんぜん懲りてないな。今度久万さんに会ったら言いつけてやろう。


「なるほど……。でもあの……、弟さんはもう、亡くなってるんじゃ……?」

「そうです。……三年前に、交通事故でした。母は仕事中毒っぽい人だけど、家族のことは好きだったと思います。この仕事の山が終わったら家族で遊園地に遊びに行こうねって、いつ叶うかもわからないような約束もしてたのに……。それなのに本当に急に死んじゃったから、心の整理ができなかったんでしょうね。葬儀が終わったあたりから、家での母は魂が抜けちゃったみたいに、どこかぼーっとしてたんです。あの日、弟を……、シュクさんを見つけるまでは」

「……」

「あの日以来、母はすっかり元通りというか、毎日毎日シュクさんのことばっかりで。みなさんが出る番組も雑誌もくまなくチェックしてて。すごく楽しそうでした。手紙を出してることは気が付いてたんですが、まさかあんな内容だとは思ってなくて……。その、びっくり、しましたよね」

「……、うん、そうだね」

「……、シュクさんにはご迷惑をかけてることは分かってます。でも、母にとっては、きっと、救いだったんだと思います」

「……、そっか」


 祈るような女子高生の言葉に、喉が詰まってしまった。

 なんて言葉を続けれればいいのか分からず目線を手元に落とすと、スッとまだらんがメニュー表を差し出してくる。


「〆のアイス食べるけどシュクも食べるか」


 ……まだらんは生きたいように生きててすごいなと思う。

 まあせっかくなのでシャーベットとケーキセットを頼んでもらったけれど。

 もちろんめちゃくちゃ美味しかったけれど。





「……救い、かあ」


 実は両隣の個室にいた黒服さんの車に女子高生を乗せて見送った後、別の黒服さんの運転で宿泊するホテルへと向かう車の中で呟く。隣でスマホをいじっていたまだらんが顔を上げて、「いっそのこと宗教でも立ち上げる?」と冗談交じりに聞いてくる。


「違う違う! 僕は神様になんかなれないよ?! ……ホントはアイドルなんてしてちゃダメなくらい真っ黒なんだから」

「知ってる。でもああ来るとは思わなかったから」

「ああ~……、あはは。実は僕も、びっくりした」


 まだらんは呆れた顔で小さくため息をついた。

 あの後――、デザートの後、冷たいシャーベットとケーキセットを食べてとんでもなく満腹になってしまった僕の口は、ぽろりというか、ついうっかりというか、

『じゃあさ、遊園地に行くとかはどう?』

と、言ってしまったのだ。

 つまるところ、女子高生と母親と僕とで、遊園地に行くという約束を果たしに行くのはどうか、と。

 もちろん女子高生は目をまん丸くしていたし、まだらんはシャーベットを食べようとした口のまま「はあ?」と低い声を出していた。それ以上にびっくりしてしまったのは僕自身で、慌てて取り繕うように「も、もちろんまだらんも一緒にね! ね!」と至極めんどうくさそうな顔のまだらんを巻き込んだのだが。


「……アイドルしてるとさ、ファンの人たちが『カワイイ』とか『大好き』とか、すごく幸せそうな顔でたくさん言ってくれるでしょ」

「シュクは特にね」

「最初はさ、本当の僕のことを知らないくせにって気持ちだったんだ。……たくさんの人を傷つけたり苦しませたりした。一生恨まれても仕方ないことをした僕なんかのことを、アイドルってだけで、なんでそんなに手放しで好きになれるの?って。でもアイドルの仕事をしているうちに、だんだん分かってきたんだ。ファンの人たちが見てるのはHSAのシュクであって、殺人機から地続きのシュクじゃない。その人の目に映る、キラキラ輝いてる姿を見て笑顔になってるんだって」

「……勝手に期待してるだけだよ」

「そうかもしれない。でも最近はね、その気持ちに答えたいなって思うんだ。今の僕に――HSAのシュクにできることがあるならさ。僕がアルに――、いろんな人たちに救ってもらったように」

「……、おやさしいことで」


 まあやりたいようにやればいいよと、まだらんは革張りのシートに深く座り直して深く息をつく。


「ふふ。なんかまだらんにはお世話になってばっかだね」

「金で解決してるだけだから、気にしなくていい」


 めんどうくさそうにしているのに、今日の焼肉も送迎車も次の遊園地の手配も全部してくれるのだからまだらんだって優しいと思うのだけれど。

 そう言うと鼻で笑われそうなので、今回は黙っておくことにした。

 それにしても高級焼肉は美味しかった。あんなに食べたのに、ぜんぜんお腹に残っていない気がする。アルとレイとも食べに行きたいけど、「今日のところは内緒にしなきゃかな」と呟くと、まだらんに匂いですぐバレると笑われた。

 案の定ホテルに帰ってすぐ、リンゴを片手に持ったアルに「いい匂いさせやがって」とチクチク小言を言われてしまうのだった。




 その夜、シャワーを終えた僕は濡れた髪もそのままにベッドにぼふっと倒れ込んだ。

 完璧にベットメイキングされたベッドに体を預けつつ、ガラス張りの窓から見えるビル群をぼんやりと見る。

 いつもなら――僕らをある日突然この世界線に「一緒にアイドルになろうよ!」と事後承諾で連れてきた旅人――アペリが、仕事終わりに元の世界線に不思議なカギを使って連れて帰ってくれている。でも今は相方のノマドと一緒にドームツアーの真っ最中で、地方に行っているこの数日だけ、まだらんが手配してくれたこの高級ホテルに滞在しているのだ。ちなみにアルとまだらんは隣の部屋である。まあまだらんはこの世界のまだらんのお仕事の手伝いをしているらしくて、夜はほとんどいないのだけれど。

 ごろりと体勢を変えて、サイドテーブルの上に置いた今日貰ったばかりのファンレターの束を手に取る。

 その中の、別でまとめられた7通の手紙。


(今週も来てる)


 丁寧な字で書かれた、僕宛の手紙。

 僕の母親を名乗る、女子高生の母親からの手紙。

 内容は毎回ほとんど定型文のように僕が出ていたテレビ番組や雑誌の感想から始まって、人間関係や体調管理への心配、僕も書き込んだりするSNSへの感想と苦言、手紙への返事がないことへの叱責……。枚数こそないけれど、こういった内容が毎日毎日届き続けている。最後の返事がないことへの部分に至っては、日増しに強くなっている気がする。


(早くなんとかしたいけど……)


 アペリたちのツアーが終わったら、次は僕たちのツアーが始まる。

 この“ファンレター事件”がずるずると続いてしまったら、もしかしたらツアーのスタッフさんにも、来てくれるお客さんにも迷惑がかかる事態になってしまうかもしれない。そんな危惧からまだらんに相談したのに。


「どうするのが正解なんだろうな……」

「髪、乾かさないのか」

「! レイ、もうお風呂から出たの?」


 声に驚いてばっと飛び起きると、今シャワーを終えたばかりといったレイが洗面所から顔をのぞかせていた。髪の毛からぽたぽたと水滴を垂らしながら「ガラス張りで落ち着かない」とうんざりしたようにぼやくので、少し笑ってしまった。


「あはは、分かる。お風呂もだけど、ベッドもふかふかすぎて落ち着かないんだよね。いつもはもっと固いから」

「アルも結局ソファーで寝てるって言ってたな」

「もっと簡素なところでよかったのに、警備面がどうのこうのってまだらんに押し切られちゃったもんね」

「飯は美味いけどな」

「それは間違いないね」


 ベッドから抜け出て、照明によって宝石店のように輝く洗面台の前に立つ。

 この世界にはアマルコルドにはないものがたくさん存在していて、このドライヤーもその一つだ。使い方を教えてもらう流れでいつの間にかレイの髪も乾かすことになっていたけれど、魔法を使っているみたいで少し楽しい。ボタン一つで温風と冷風の繰り返しに加えてなんとかっていう特別な効果も付くらしく、乾かすたびに髪の毛がつやつやになるとまだらんが言っていたような気がする。


「……、大丈夫か」


 曇り一つない鏡越しに、レイと目線が合った。


「えっ」

「気のせいならいいけど、最近、様子が変に見える」

「そう、かな?」


 その真剣な空鼠色の瞳に心を見透かされたような気がして、ドライヤーの風を当てるふりをしてレイの前髪をぐしゃぐしゃにする。


「……そうアルと斑に言ったら、」

「言っちゃったの?!」

「アルは気づいてなさそうだった。でも、斑はそうじゃないだろ。どっちかっていうと共犯の顔だ」

「……レイって、みんなのことよく見てるんだね……」


 ドライヤーをオフにして、「アルにはまだ言わないでね」と、一カ月ほど前にファンレターを受け取ってから今度遊園地に行くことに至ったまでの話をした。レイはなんとも言えない表情で最後まで聞いてくれた後で、


「どうしてアルには言わないんだ?」


と怪訝そうな声を出した。


「別に隠したいわけじゃなくて、タイミングを逃しちゃったっていうか……なんというか……」


 まだらんにも最初に相談したときにも聞かれたけれど、実のところ、僕にもどうしてこんなに言いよどんでいるのか分からなかった。ちょうどアルにドラマ主演が決まったというのもあるし、なんとなく心配をかけたくないような、手をわずらわせたくないような……、そんな心境だった。ここがアマルコルドだったなら、話は別なんだけれど。

 レイは納得したのかどうかは分からないが「そうか」とだけ言って、ふかふかのベッドに潜り込んだ。いくつかある枕から今日の気分の固さを選んで、眠たそうに頭をうずめている。


「……そういえば、アルが困ったら手を貸すって言ってたぞ」

「ふふ、アル言いそうだね。レイも気にしてくれてありがとう」

「別に、気になっただけだ」


 レイがした大きなあくびにつられて、僕も眠くなってきてしまった。

 あちこちにある照明を落として、僕もふかふかのベッドに潜り込む。借りているスマホで明日のスケジュールとSNSをちょっとだけチェックしてから、すでにうとうとしているレイに「おやすみ」と小声で告げる。明日の朝食にも出てくるであろうバターの香るサクサクのクロワッサンと季節の果物を使ったデニッシュに思いをはせながら目を閉じた。

 なんだかまだらんと行動するようになってから、食いしん坊になってしまった気がする。





*


「まだらん! 早く早く!」

「まあ待て。ここで遊ぶにはここのカチューシャを付ける必要がある」

「そうなの!? あっ確かにみんなつけて……ない!」


 王都アマルコルドに似通った街並みを抜けた先には、火山を中心にした遊園地が広がっていた。どこからか聞こえてくる楽しげな音楽や美味しそうな匂いに目移りしている僕に、まだらんがワゴンを指して真顔で告げてくる。一瞬そうなのかと信じかけたけど、よくよく見れば半々と言ったところだろうか。


「着けてたほうがここによく馴染む」


 まだらんはそう言いながらふわふわテディベアの耳付き帽子をくるくると回して、ぽすりと僕の黒髪にかぶせた。

 そう、今日の僕は頭のてっぺんから毛先まで黒色なのだ。

 いつもの黒色が毛先に残る白髪頭ではさすがに人の多い遊園地内といえど目立つだろうとまだらんに言われて、カラーワックスで軽くセットしてもらった。内側は白いままだけれど、雑誌で見たインナーカラーみたいでちょっとカッコイイのだ。

 それにしたって髪色ひとつでだいぶ印象って変わるんだなと、ワゴンの鏡に映る黒髪の自分をまじまじと見てしまう。


「この耳付き帽子、レイがかぶってたら可愛いかも……」

「じゃあ買っとくか。後で合流するし」

「アルに似合うのはどれかな……あっ、これはなんのモチーフ?」

「魔法使いの弟子」

「カッコいいね!これにしようかな」

「あ、あの、」


 まだらんと一緒にカチューシャや帽子をとっかえひっかえしていると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには私服の女子高生が立っていて、さらにその後ろには、年配の……女子高生とよく似た面立ちの女性がハッとした表情で立ちすくんでいる。


「今日はよろしく」

「あ、はい! お世話になります!」


 まだらんが女子高生に声をかけている間も、女性は僕の頭のてっぺんから足の先までを探るように見つめてくる。

 その視線に少し居心地の悪さを感じていると、まだらんがいつの間にか買っていたらしいテディベアの耳付き帽子をぐいと僕の頭に押し付けてくる。そして上着の胸ポケットから無造作になにかの紙切れをたくさん出して、女子高生に「はい」と強引に握らせた。


「並ぶとコレが目立つから」


 訳も分からないまま受け取った女子高生はまじまじと紙切れを見て、「ふぁちけ……!」と焼肉屋さんで震えていたときと同じ顔をした。

 コレ呼ばわりされた僕はむっとしながら一体なんの紙なのかまだらんに尋ねると、「時間を金で買った券」とすごく適当に返された。どうやら、列に並ばずにアトラクションに乗れる券らしい。


「じゃあ、まずは何に乗りたい?」


 ばさりと地図を広げたまだらんが、にやりとしながら聞いてくる。昼過ぎに遊園地に現地集合したときにはすでに着ていたアロハシャツと、さっき買ったらしいグラサンが似合いすぎていて柄の悪いお兄さんみたいだ。

 最初に目が合って以降まったく顔も見てくれなくなった女性と、それを気にする女子高生、ちらちらと僕らを気にしはじめた周りの人たち、HSAだってバレたら即ネットニュース……。やらなきゃいけないことがたくさんある気がする。

 考え抜いた僕が選んだ行動は――、


「ねえねえ! ホントに海底人っていないのかな!」


 遊び倒すことだった。

 なにを隠そう、この遊園地に来るのは初めてなのだ。

 空を飛びまわるのも遺跡探検で大岩に追いかけられるのも潜水艇に乗り込むのもめちゃくちゃ楽しいし、ポップコーンとチュロスはいろんな味があって見つけるたびに食べてしまった。買ってもらったポップコーンバケットには、食べきれなかったいろんな味のポップコーンが詰め込まれている。

 なにかと血と争いにまみれたお城を遊園地にするなんて発想はどこからくるのか……。そんな考えが吹っ飛ばされるくらい楽しいし、モチーフになっている作品を知らない僕でも夢に手が届きそうなこのワクワク感がたまらない。


「次はね……あのお城に行ってみたいな!」


 港沿いの要塞のようなお城を指して言うと、まだらんはちらりと女子高生たちを見て「そろそろ休憩するか」と地図を開く。

 少し風があるとはいえ、今日も日差しが強い。二人は帽子と日傘を指していたけれど、歩き疲れて少し疲れていそうだった。そこでようやく僕は本来の目的をすっかり忘れてしまっていたことに気が付いた。なんてこった。これが夢の国の魔法か……。


「ここで休憩入れてもいい?」

「あっ、はい! 大丈夫です」


 まだらんは地図上で要塞付近を指して、なにか冷たいものでも飲もうと提案しているようだった。

 ごつごつとした岩を掘り進んだようなトンネルを抜けると、目の前には海と、入ってきた時に見た港町が視界に飛び込んでくる。左に視線を向けると格子の鎧戸を備えた城壁がそそり立っていて、遊園地だと分かっているけど少しそわそわしてしまった。お城にはあんまり良い思い出がない。

 入ってすぐの噴水のある広場でまだらんが、


「飲み物買ってくる」


と近くのカウンターへと足を運び、


「私もちょっとだけ失礼します! すぐ帰ってきますので!」


と女子高生はお花を摘みに行ってしまった。

 そして僕らは――僕と女性は、パラソルの付いたテラス席で二人っきりになってしまった。


「……」

「……、」


 まだらんは見える距離にいるけれど、なんだか気まずい。

 “ファンレター”や女子高生の話では僕のことを本当に“弟”くんだと思い込んでるはずだったのに、遊園地で遊び始めてから一度も会話をしていない。もっとこう……、話しかけられるイメージでいたのだけれど。

 要塞に隣接する火山はもうもうと煙を吐いていて、たまに悲鳴のようなものも聞こえる。

 なにかが吹っ切れたらいいなと思って「遊園地に行こう」なんて言い出したのは僕だけど、こういうときに“母親”となにを話せばいいのかなんて分からなかった。


「ごめんなさいね」


 どうしたものかとまだらんの背中を見つめながら考えていると、女性が申し訳なさそうに声を絞り出した。


「えっ、」

「あんな手紙、出してしまって」

「あ……、いえ、びっくりはしましたけど、その……理由が、理由だったので……」

「……そうね。だからといって私、どうしてあんな馬鹿なことしてしまったのかしら。本当にごめんなさい……謝って済む問題じゃないでしょうけど……いろんな人に迷惑をかけてしまったわ」

(ああ、そっか。この人……)


 そこで僕はようやく、女性とまったく目が合わなかった理由に思い至った。


「今日、貴方を一目見てね、透太じゃないって……、ようやく気付いたの」


 女性は閉じた日傘をぎゅっと握って、泣きそうな声でそう言った。


「今日貴方に会うまで、やっと透太と会えるんだって思ってたの。何度も何度も手紙を出したのにどうして返事をくれないのって、アイドルになるだなんて聞いてないわって、小言を言ってやろうと思っていたのに。……ずっとずっと、貴方は透太だって、そう思い込んでいただけなんだって、……思っていたかっただけなんだって、ようやく気が付いたの。一体どうしてそう思い込んでいたのか……。でも、そうね、頭のどこかでは分かっていたのね……。貴方を一目見て、なんだか、笑っちゃうくらいすんなり受け入れちゃったわ」

「……?」

「だって、貴方ったら、透太とぜんぜん違うんだもの」


 こんなに元気に遊びまわる子じゃなかったわと、女性は僕を見て少し笑った。

 その表情にどこかホッとしていると、ドリンクを器用に四つ持ったまだらんが帰ってきた。「炭酸は苦手だと聞いたので」と女性の前にアイスティーを、僕には「どっちがいい?」とさわやかな青色のドリンクを置いてくれた。

 夏みたいな空色のドリンクは日差しを受けてキラキラと輝いていて、氷の上には細かなレモンが散りばめられている。どんな味だろうとワクワクしながら飲んでみると、ぴりりとジンジャーの香りが鼻を刺す。予想していなかった辛さに首から下げていたバケットからポップコーンを取り出して口に放り込むとまだらんが「こっちにしとくか」と聞いてくれたので、その言葉に甘えてアイスティーと交換してもらった。


「貴方達、本当に仲が良いのね」


 女性がアイスティーを一口飲んで、ふふっと呟いた。


「ここしばらくで貴方達のこと知ったつもりでいたけれど、ぜんぜんそんなことなかったわね」

「あ、あの、今日のことは内緒でお願いします……」

「もちろん。……今日は娘と一緒に遊園地に来た。それだけよ」

「お待たせしましたー!」


 女性の言葉が終わると同時に女子高生が走って帰ってきて、まだらんが前に置いたレモンジンジャーをお礼を言いながら飲み始める。


「次どこ行くか話してたんですか? パレードも始まるみたいですけど」


 冷たい飲み物で一息ついた女子高生が、パレードの開始を告げる園内放送に耳を傾けながら尋ねる。この城壁や近くの船からパレードを見るのもいいし、たまに聞こえる悲鳴のアトラクションも面白そうだなと考えていると、


「いいえ、もうお暇しようと思って」


 そう、女性が穏やかに言った。


「えっ?」

「へっ?」

「……チケット残ってる分は、二人で好きに使っていいよ。隣の遊園地に行ってもいいし」

「まあ……何から何まで……ごめんなさいね」


 急な展開にどういうことだとアタフタしている僕と女子高生を尻目に、まだらんはいつもと変わらない表情で対応している。さっきの会話でこの“ファンレター事件”は解決したことになるのかと心配になっていると、女性が僕をまっすぐ見て、静かに頭を下げた。


「シュクさん」

「はい!」


 こんなの注目の的だとどきどきしてしまったけれど、誰もが鳴り出したパレードの音楽に誘われて足早に歩いている。


「この度は、ご迷惑をおかけして、本当にごめんなさい。もう貴方達を見ることも、追うことも、止めておきます。頭では分かっていても、きっとまた重ねてしまうと思うから。もし不安でしたら、一筆書かせていただくわ」

「お母さん……」


 女子高生が、ドリンクの入った容器をぎゅっと握る。

 その顔はホッとしているというよりは、今まで見た中で一番不安そうな表情だった。唐突に僕は、あの日、焼肉店で女子高生が救いだったと言っていたことを思い出した。お母さんにとっての救いだった、と。

 でもそれは、女子高生にとっても救いだったのではないのか?

 悲しみの海に深く深く沈んでしまった母親が、僕という仮初めの灯かりを頼りに女子高生の乗る船に戻ってこれたのではないか?

 本当にこのまま、またなにもかも真っ暗にしてしまってもいいのか……?


「あの、」


 城壁の向こうを遊園地のキャラクターたちが通り過ぎたのだろう、歓声と拍手が聞こえる。


「僕は、確かに貴女たちの“透太くん”じゃありません。どれだけお手紙をもらっても返事はできないし、理想通りの人間じゃないかもしれない。でも、見てくれる人が笑顔になってくれればいいなって思いながらお仕事をしています。だから、……これは身勝手なお願いだけど、これからも応援してほしいです。HSAのシュクとして」


 僕は“弟”くんにはなれない。

 それでも、アイドルとして心の拠りどころぐらいにはなれるかもしれないから。




「なんとかなったな」

「……なんとかなってたら、いいな」


 手を大きく振りながら、ガリオン船の前で女子高生たちとお別れをした。

 二人はまだらんが押し付けたチケットの分だけ遊んで、帰りは美味しいものでも食べに行くと言っていた。何度も何度も謝罪とお礼を言われたけれど、これで良かったのかは僕にも分からない。それでも、二人の表情が少しだけ晴れやかだったことに安堵した。


「まあ、後はあの人たちの問題だから。どれだけシュクが頑張っても伝わらない相手には伝わらないから、その時は諦めなよ」


 まだらんはレモンジンジャーをずここと飲み干しながら、「その時は仕事受けるよ」となんでもない顔で言った。ここまで来たら穏便に済ませたいので、僕は丁重に断った。


「はー、なんかお腹空いてきちゃった」

「もう夕方だからな……。夕飯どうする?」

「アルとレイが来たら美味しいもの食べようよ! その後は一緒にアトラクション乗りたいな! あれとか! あれも!」


 僕はまだ行っていない火山やヘンテコな形のホテルを指さすと、まだらんが「絶叫系か」と呟いた。ぜっきょうけいってなんだろう。それを聞く前に、ポケットに入れていたスマホが電話だと唸り始める。掛けてきたのは今日一日ボイスレッスンの入っていたアルで、同じくレッスンの終わったレイと一緒に遊園地のエントランスに到着したらしい。


「アルとレイ、今地球儀の前にいるって」

「何食べたい?」

「お肉!」

「じゃあ……ここのレールウェイ降りたとこで待ってるって言って」

「分かった! もしもしアル? あのね……」


 そうして僕らは無事に合流してカチューシャを新たにし、グリルキャンプでお肉プレートを堪能し、古代遺跡を駆け巡り、走行車に乗って地底世界を探検して、恐怖ホテルの見学に行って「絶叫系」の意味を知り、お土産を片手にまた来たいねと言いながらホテルに帰る……はずだった。

 そう、――アルに


「そういえばお前ら、先に来てなにしてたんだ?」


と出合い頭で核心をつかれるまでは……。





「はーん、つまりなんだ? 知らなかったのは俺だけか?」

「ご、ごめん……。そういうつもりはなかったんだけど……話しそびれちゃって……」


 ベースキャンプみたいなレストランの隅の席で、僕はアルから取り調べ……否、お𠮟りを受けていた。レイはアルの横で緑色のキャラクター饅頭に興味津々だし、まだらんにいたっては持ってきてくれたグリルチキンプレートを「カツ丼だ、食え」と僕の目の前に差し出す始末である。確かに鶏肉に目玉焼きは乗っているけれど、ぜんぜん違うからね。


「だからって二人で犯人に会うなんて危な……くはないか、いや、なんかあったらどうしてたんだよ」

「それな」

「オイ斑、お前も共犯だぞ」

「そうだそうだ!」

「シュク」

「ごめんなさい……」

「別に謝ってほしいわけじゃなくて……。あー、もう食え食え。食ってから考える!」


 アルはフォークでぶすりとグリルチキンを刺すと、勢いよくがぶりと食らいついた。すでに長いベーコンを端からもぐもぐと食べ進めていたまだらんに習って、僕もグリルチキンにかぶりつく。色々食べ歩きした後だけど、やっぱりお肉は格別である。

 レイに聞かれるまま机の上に地図を広げて、ここはどういうアトラクションだったとか、どこのポップコーンを食べたかとか、次はここに行きたいだとか他愛もない話を食べながらする。その合間にちらりとアルを盗み見るも、どこかむすっとした表情で申し訳なくなってしまう。そういう顔をさせたくなくって言えなかったのもあるんだけど、裏目に出てしまったようだ。


「この世界のルールで一番根回しができる人間だったから、相談相手に選ばれただけだよ。それ以上でも以下でもない。まあアルに相談しなかったのはシュクの判断だけど」


 食後のジャスミンティーを優雅に飲みながら、援護射撃に見せかけたフレンドリーファイアを打ってくるまだらん。

 あんまり長い付き合いではないけれど、まだらんはさっさと問題を解決したいタイプだということは理解している。理解しているけれど、もうちょっとこう……手順を踏んでもらいたいものである。いきなり王手をぶっこまれたアルは一瞬ぽかんとした表情を見せたが、すぐに察したのか呆れた顔で僕を見た。


「で、なんで言わなかったんだ?」

「最初はただの嫌がらせかなーって程度だったから、気にしてなかったんだ。まだらんに相談した頃にはもうツアーが決まってたし、アルはドラマの仕事も入ってたでしょ? ……変に心配かけたくなくて」

「実は粘着ストーカーとお話しするために遊園地行ってきました、って後で言われる方が心配になるんだけど?」

「ぐ……」

「解決したから良かったものの、ツアーまで引きずってたらどうせ俺の耳にも入ってくるだろ?」

「うぐぐ……」


 ぐうの音も出ない正論だった。

 遊園地に行くことになったのはついうっかりなのだけれど、それを言うとさらに怒られそうなのでぼかして説明している。


「でもやっぱり、ツアーが終わるまで言えなかったかもしれない……」


 アルには笑顔でいて欲しかったから、としどろもどろに伝えると、アルはレイと顔を見合わせて呆れたようにため息をついた。


「まあ……、あっちでの事件だったらラジがなんか情報持ってたかもしれねーけど……、ここでは俺ら、ツテもなければ右も左も分からないからな。そういう意味では斑に相談したのは正解だな」

「うん」

「でもな、シュク、言わないってのは違うんじゃないか? それは気遣いでも何でもねえからな? 何の縁か知らねーけどこの四人で呼び出されてるんだ。俺らの活動にかかわってくることなら、気にせずに何だって言え。俺は心配されるほど弱くない」


「レイと斑もだぞ」とアルはビシッとまだらんに人差し指を突き付けて言った。

 そうだ。僕が心配することなんてなにもなかったのだ。アルはいつだって強くてカッコいいのだった。

 もうすでに秘密の塊であろうまだらんは「同じく弱くはない」とジャスミンティーをすすりながら言い、僕のポップコーンバケットを片手につまみ食いしていたレイは「オレは一般人だから強さは期待するな」と遠い目をした。うっかりレイも僕らと同じだと思い込んでしまっていたことにハッとして、なにかあったら僕らが守るからね、と力説しておいた。

 あぶないあぶない。

 普通のアイドルは投獄されたり手を血で染めたり裏の仕事なんかをしたりしないのだった。


 まだらんに閉園まであまり時間がないことを知らされたアルが、こうしちゃいられないと僕らを急かして絶叫系アトラクションに連続で乗った後、


「今後一切、変に気を使って隠し事をしないこと! いいな?」


と、トロピカル味のアイスキャンディを片手に念を押すように言った。

 まだホテルのエレベーターで上下に揺さぶられている気分だったけれど、僕はうんうんと頷く。


「今度何かあったら、絶対相談する!」

「トラブルはもう起こらないほうがいいけど……、まあよし! んじゃあ、もう一個ぐらい乗っとくか!」

「おー!」


 ナイトショーの花火の光に隠されて、ここに浮かれた格好のHSAがいると気が付く人はいなかった。

 僕らはもう少しだけ、この夢の国で遊びつくすことにした。




/end

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HSA 村雨廣一 @radi0_0x

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