第6話 執着
14時15分頃。わたしたちはヘリが着陸する予定の小丘の近くにいた。
地平線の向こうに閃光が見えた。嫌な予感がして、カメラの画像を拡大する。
サラマンダーと宇宙圏の
「僚機です!フラナガン大尉とユン少尉の
ルーク少尉は声を弾ませた。仲間が無事だったことを素直に喜んでいる様子だ。
いや、見捨てられたことを恨んでないのか?
「逃げろ!」
珍しく、
普通、サラマンダーの外装甲はアンバーホワイトか薄いグレー。しかし、このサラマンダーのそれはライムグリーンになっている。
化獣は、活動を活発化する時には太陽光の吸収効率を上げるため、外装甲の色合いを変える。緑系の色はかなり高稼動な時に限られる。
宇宙圏の
「援護したいです。私に、あの
あの
「何とかサラマンダーの動きを止めてくるわ」
朝耶に伝えて、後部の格納庫へ移動する。
「私が行きます。
わたしの
サラマンダーと2騎の
今回は、朝のようにサラマンダーの前に出て注意を引くようなマネはできない。外装甲を緑系にしている化獣は、運動能力も10~20パーセント上げている。前に出た途端に、踏み潰されるかも知れない。
サラマンダーの背中の外装甲の一部が砕けて、そこから発光する粒子が流れて出ていた。
化獣は、他の生物のように血液やリンパ液を循環させてエネルギーを身体各部に運搬しているわけじゃない。もっと直接的に過電粒子を循環させているらしい。
組織を破壊されると行き場を失った過電粒子が、熱を光に変えながら大気に吸収される。
発光する粒子は化獣が血を流しているのと同じ。このサラマンダーは手負いの状態だ。
「宇宙圏の開発した高出力レーザー砲が、効果があったのかしら?」
しかし、2騎の
「もしかして、レーザー砲のエネルギーを使い切っちゃったの?」
その可能性は高そうだ。それなら、レーザー砲をさっさと捨てて身軽になればいいと思うが、新兵器だから回収も命令されてるんだろうか。
どうやって、サラマンダーの動きを止める?
化獣にも急所と言える部分はある。肋骨に守られた、胸郭上部付近に
この、
右手に超高速で振動する高周波ブレード、左手には携帯式のロケット砲を持つ。
義手と義足へは最大出力で電力を供給する。この状態だと補助バッテリーは15分くらいでエンプティーだろう。
「さて、行きますか」
何でこんなコトやってるのかと疑問が脳裏をよぎる。宇宙圏の住民たちは嫌いだ。その先遣部隊のような機構が、勝手に化獣にちょっかいを出しただけ。勝手に戦死するも野垂れ死にするも、わたしたちには責任はない。
「ちぃ」
思わず舌打ち。
人間であろうとする「こだわり」だと思う。わたしの身体は、半分くらいは化獣の組織から造られてる。そのこだわりを捨てたら、自分が化獣と区別できなくなりそうな気がする。
多分、それだけだ。
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