上手に捌く方法
えんがわなすび
先輩の教え
お前さあ、入社から一カ月も経ってまだこんな作業もできないの?
もうちょっと綺麗に切らなきゃさ、ほらここ、歪んでんじゃん。これだと売値が下がっちゃうんだよ。な?
なに、学校で教わらなかった? 今どきの学校はこんなことも教えてないの? え、ゆとり世代ってやつ?
俺らの時代はこれくらい出来て当たり前だよ。古文と科学の間に実技があってさ、こうやって、ほら包丁貸してみ。こうやって頭との根元に包丁入れて、指で力任せに切るんじゃなくて。お前利き手どっち? 右ね。右の手首から真下に落とすように切るわけ。
ほら、上手くやればこんなに綺麗に切れるってわけ。な?
なに? 切るときに暴れる? そりゃそうだよ、生きてるんだから。当たり前だろ。うちは鮮度が命でやってるようなもんだから、生きたまま仕入れてんの。面接の時、店長に言われなかった?
そこを上手いこと縛って動かないようにして、ああ、泣き声もね、確かに煩いわな。そこを上手いことやって、あとはすとんと包丁入れてしまえばいいから。慣れだよ、慣れ。
じゃあ、ほら。もう一回やってみ。見ててやるからさ。
そこの、ほら、泣きそうな顔してるお嬢ちゃんならそんなに抵抗しないだろうから、やってみ。な?
上手に捌く方法 えんがわなすび @engawanasubi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます