えんがわなすび

あまり接点のない同期が今日、無断欠勤していたらしい。上司に言われて嫌々彼の家を訪れるが、部屋は鍵がかかっておらず、無人だった。 諦めて帰ろうとして、着信が鳴る。画面には無断欠勤し…

その人魚は、黄金の紅茶に蜂蜜を混ぜたような髪を持ち、肌は淡雪のように白く、尻尾は虹色を丁寧に置いた絵画のようで、朝日が昇る瞬間の澄んだ空みたいな瞳をしている。

俺の指が三本しかないのが気になるって？ じゃあちょっと昔話でもしよか。酒の肴になるか分からんけど。 自主企画、【三題噺】「子ども」「木枯らし」「祭りの後」によせて。

ここ数年で廃墟探索の趣味に目覚めた。 今日行く場所は初めての廃墟だ。 その奥で見つけたノートは、どうやら誰かの日記らしい。 興味を引かれたので、最初のページから読んでみることにし…

昔、祖父に連れられてプラネタリウムに行った。 誰もいないその場所で、祖父は虚空に向かって何かを摘む動作をした。 今でもそれを覚えている。

あの世の果ての、河原でのこと。 今日も小さなそれを迎えに行く。 ジャンル迷いに迷って現代ファンタジーにしましたが、あの世が現代なのか分かりません。異世界でもないような気もしま…

ある場所に閉じ込められた男との話。 柵越しなら、見なければ対話は可能だって、昨日辞めていった前任者は言っていた。

教室の中。窓の外では飛行機雲が通り過ぎていく。 今日、あの子は学校に来なかった。 いつも平気で約束破るじゃん、そういうところあるよねって、みんなは言う。 どうでもいいよ。

ある日の放課後、僕は彼女に話しかけられた。 「梶くん家、自転車屋さんだよね？」 今まで話したことのなかった彼女は、自転車のことで相談があるという。 夕日に照らされる中、彼女と二…

通勤途中にあった自販機がない。 撤去されたのかなと思った。 けれど、その日の帰り。自販機の代わりに鎮座していたものは――

彼と私の日常の話。 きっとそんな世界。 思いつきで書いているため、更新は不定期になります。 完結はさせたいと思っています。 結局上手く筆が動いて毎日更新で完結しました。

これは夢だ、と気づいた。 集団の最後尾に並んでいた。 何かの集会だと思った。 でも、背後から、ゆっくりと近づいてくる音がする……。 生暖かい吐息が、嗤っている。

ある日突然、俺達のクラスで殺し合いが始まった。 毎日十八時に現れる、くじ引きの箱。 当たりを引いたものは鬼。 鬼は誰か一人を殺さなければならない。 自分が死にたくなければ。 …

「口を開けば婚約破棄だの、溺愛だの、聖女だの、義妹だの、お飾りだのと。 そういうの、もう飽きてしまったのよ」 物語に飽きた令嬢の話。 ジャンルは迷いに迷ってホラーにしてますが…

友達の上着の裾から、一本の毛が垂れ下がっていた。 それに気づいてしまったら、もう気になって仕方ない。

まだまだ初心者で綺麗に捌けなかったので、先輩に上手に捌く方法を教えてもらいました。

ぼくはいつも友達のよっちゃんと一緒に帰っていたのに。今年から、よっちゃんと会わなくなった。 同題異話SR -December- 『見上げれば降るかもしれない』によせて書きまし…

この街は一年中毎日欠かさず雨が降り続く。そうしないと僕らは生きてはいけない。雨に濡れいていないと僕らは死んでしまうのだ。 雨の降る街の、少年と少女のお話。 前後分けていまし…

真っ青な空に赤と青と橙がチカチカと踊り狂っている。 自主企画『【三題噺 #40】「観光」「パイロット」「衝動」』によせて書きました。

すべすべとした触り心地で、少しひんやりとしていた。 空き巣に遭ったらいきなり部屋に入る前に静かに110番した方がいいと思います。

彼はほぼ毎日遅くに帰ってくるようになり、私は一人広い家で彼のご飯を作って待つようになって、そして彼のスマホが何かを受信して光る回数が増えた。 カクヨム公式企画『第2回「夫にナ…

俺の冷たくなった鼻に凝縮されたスープの匂いが漂ってきた。 自主企画『路地裏の扉な物語』に向けて書きました。 ちゃんとふらっと非現実に飛んでる、はず。

日常に潜む、怪異の話を纏めた短編集(の予定) 更新は不定期とさせていただきます。なにせ、いつ怪異が出てくるか分からないですから。 ※ここに纏められる話はフィクションです…

郷土祭りに興味を持ったぼくは、半ば導かれるようにその村を訪れた。 自主企画『異形頭のお話』に向けて書きました。 企画用に話を書いたのは初めてでした。内容に沿っていればいいのです…

二十年越しに、高校の友達から連絡が来た。 冒頭部分は実話です。 他の作品と文章の書き方を変えています。

宛名のない手紙が届きました。 開封しますか？ 読みますか？ ほんとうに？

日曜日の早朝。 森崎静香は突然の訪問に朝食を作る手を止めた。扉を開けると立っていたのは刑事を名乗る二人の男だった。 「長谷川香菜さんが亡くなりました」 会社の後輩が、マンショ…

火葬も水葬もなくなった時代。 人は死ぬ瞬間にデータ化され、保存される。 死にゆく母と娘の最期の一幕。

木曜日。九時三十分。 熱々のお湯を張った浴槽に、タブレットで読む本。 カツ、カツ、――… いつもの時間に鳴るヒールの音。 遅い時間まで仕事なんて大変だなと思ったんだ。 だか…