地雷を踏んでしまいまいした。〜パート1〜

 アイドルになれと言われても、かんたんになれるはずもなく『素晴らしい審査員の方々(嘘)に見てもらうために』オーディションを受けに行きました。


 まぁ、そんなことはどうでもよく『アイドルになりたい人はココに来てね?』なんて”The詐欺告知で〜す”って感じに公式の有名アイドルHPが出したらファンは、天地がひっくり帰ったのか、今日自分は死ぬのか、この世の破滅はもう目の前で、それによって夢見た幻想化とかいうまさにオタクの極みな考えてしまう。

 しかし、そんなことは思ってもやはり『いや、私なんかが...』とか『引きこもって〇〇たまの日頃のイケメンさで癒やされてるほうがいいですわ!』という思考に至るオタク勢が多い(という自分もそうだが、そんなことは自覚している。) のため、今回のオーディションに集まる人間の私以外全員が...(ドゥドゥン!)”陽キャ”だ。うん、わかってた。わかっていたんだよそりゃもちろん。故に、少しは『話、私以外にも陰キャくるかな?』と思った。


 しかし、冷静に考えて...無理だ。そう、自家栽培女子含み、夢女含み、家の中で推し関係のものなら何でもを舐め回しながら見ている人含み、好きな声優の声を何度もイヤホンやヘッドホンを付けて何度も聞いている人含みなどなどにそんな勇気あるはずがない、そう絶対ない!なぜなら、みんな”CHICKEN(臆病者)”だから。(いや、私もだけどね?うん。)

 と、言うことで、本日オーディション一日目。今日は夏休み中のためたくさんの女子が来ていることは知っていた。しかし、だからってこんな少女漫画の主人公みたいな娘ばっかとは聞いていないと今すぐ叫びだしたかった。だが!この女(つまり私)には秘密兵器がある!そう、顔だけは広瀬すずと歌われた顔面兵器(良い意味で)である。うん、本当にすごいね。色々と。


「寺田さん、出番ですよ!」

「ふぁい!」

 

 手足を同時に動かしてまるでロボットのように歩き出した。扉の前まで来ると、手足が震えて生きた心地がしなかった。そして、中に入るとそこには、あの時いた謎の女性と思われる人と、その他の審査員の方がいた。

偉い人とは思っていたが審査員だったのか、と心のなかで呟く。


「それでは、質問します。」

「は、はい。」


 一次試験の内容はこうだ。まず、審査員が、最初に出す応募用紙を見て気になることを問う。そしてその後に、決まって問うのが”アイドルをやりたいと思った理由はなにか”である。


「趣味は何ですか?」

「そ、そうですね...アイドル情報のハークでしょうか。日課にしているので。」

「(に、日課?)ン、コホン。アイドルに興味を持っているのはまぁまぁですね。」


 一瞬、”日課でアイドルのことを調べる”というオタク道を確実に歩んでいるだろう台詞(セリフ)を聞いて聞き間違えかと思うのも当然であろう。

 事実、この私だって『もう戻れないところにまで来ている、刑事ドラマのベタなやつに例えるならば、犯人が崖っぷちまで追い詰められているようなもの』と気づいているのだから。

 しかし、悲しきかな自分はオタク検定一級にいっていることを”わかりすぎている”がために、こんなやばい台詞を吐いていても気づかないのだ。いや、意識していないのかもしれない、もうすでに。


「ふむ...それではー」


 そして、それぞれの審査員が気になるところを言っていき、”主な質問”を終えた。


「何故、アイドルになりたいと考えたのですか。」

「…」


 その言葉に、すぐに返答できなかった。何もやましいことなどあるはずはない。ただ、なれと言われたからなる、というのが真実だ。しかし、それ以外にも”本当の気持ち”はあった。


「この質問、三回目の試験でもあるんですよね。」

「ええ、あなたがそこまで行けるかはわかりませんが。」

「なら、今の気持ちを言わせいいただきます。」


 私は、今の、今の本当の素直な気持ちを審査員の方々に伝えた。


「アイドルは、私の娯楽であり、憧れであり、生きる意味でした。」

「…」

「生きる意味と言っても、そんな大袈裟なことではなくてただ、起きて度々アイドルの情報をチェックするくらいには好きでした。至るアイドルの情報でも見て、興味のないアイドルの情報も徹底的に調べました。だから…」

「…」

「なれるものなら、そのアイドルに、誰もが愛せるアイドルのTopになりたいと思っています。」

「…そう、ですか。」

「はい。」

「わかりました。以上です。帰って良いですよ。」


 バタン!


(う…死ぬかと思った〜!)


 私は、今世紀最大の疲れが体に一気にきたきがしてそのまま家へと帰った。


「お帰り。どうだったの?」

「う、うん。できる限りは…あ!」

「ん?」


 その瞬間、自分の発言したことの重大さに思い至る。それは、あのときの『どうしてアイドルになりたいんですか』という質問に対する返答だった。なぜなら、私のした返答は『あ、私アイドルヲタなんで、アイドルなりたいっす。ハイ。』的な感じ(妄想)だってからである! 

 こんな、地雷も地雷な巨大爆弾を置いて、去った私は、本当に天岩戸隠れ(あまのいわとがくれ)見たく隠れてやりたい一心だった。そんな事を理解していない姉は、頭を抱えて泣き叫ぶ哀れな顔面兵器(ア・タ・シ)を生暖かい目で見つめるが、次の瞬間、その反応はかき消される。


 ピロリロリン!


「ウェ?」

「どしたん?スマホなってるけど。」

「うん…えと『おめでとうございます。あなたは合格しました。一次試験突破―』…ええ!」

「やったじゃん。」


 私は、天まで飛び上がりたいほどの喜びを抱え、両手を広げて思いっきりジャンプをした。その衝撃で、近くにあった花瓶が揺れ、地面に落ち、割れたことはきっと私のこの事を聞いたら母は許してくれるだろうと思う。多分。

 とにかく、今回の一次試験は無事突破し、大きな地雷第一弾、無事通過することができたのだった。

「To be continued...」

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