第5話 6月4日 秀吉陣営 晴れ
「武士の鑑である」
秀吉は宗治が自死した瞬間そう述べ、その後の全てを家臣に託し、馬上の人となった。本当は報を聞いてから一刻も早く、京に向かわねばならなかったのだ。和睦など誰かに任せればいい。そのような考えは何度も秀吉の脳裏に浮かんだ。
けれども信長の死を意識した時、今後の禍根を断つため、宗治の死こそをその目で必ず確認せざるをえなかった。
備中から備前に足を踏み入れた時、秀吉は思わず天を仰いだ。これまでの重く張り詰めた黒天が突然割れ、まっすぐに光が差し込んだ。そしてその光は高松城の方角を照らすように見えた。
今、この国の未来が大きく動いた。
秀吉は大きく頷き、馬の腹を強く蹴飛ばした。秀吉が光秀を討ったのは、その間も無くのことである。
そして毛利軍が雑賀衆から信長の死を知ったのは、和睦の翌日のことである。秀吉を追撃すべきとの声も上がったが隆景が止めた。それは宗治の命と引き換えに得た信義だったからだ。
後日談。
宗治の次男は毛利との約定どおり小早川隆景から一字受け継ぎ
雨よ降れ 備中高松城の戦い Tempp @ぷかぷか @Tempp
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