第11話 それから

 私たちは初めてひとつになった。


処女血に染まったシーツ。

白濁に凝縮された厭悪えんおたる分身。


それは快楽という名のトラウマとして、純真な心に癒ることのない深い傷を残した。

稲光がこれらの対比色を浮かび上がらせるように、悪夢としての色彩を磔刑たっけいの如く刻み込む。


あの夜、私たちはAIという赤い悪魔に被験者として捕らえられた。

緋社R&Dの白塗りのはこに個別に幽閉され、臨床試験を受験する運命を受け入れた。


そこで私たちは、かけがえのない記憶を抹消された。


屈辱に満ちた背徳の記憶も含めて。



  ❇︎



――あれから八年の月日が流れた……。



兄の記憶を取り戻すことが出来ない日々。

幼い頃の思い出も含め、おもいをいくら巡らせてみても、まぶたの裏色に阻まれ何も浮かんでこない。

決して思い出を手放したわけではない。本当に思い出せないのだ。


一番古い記憶は白亜の部屋。被験者として白い闇に幽閉され、さいなまれては木のうろのような瞳で過ごした、黒いイメージばかり。


今では日常の色を取り戻してはいるが、脳内に深く刻まれた悪魔の緋色から、逃れることはできないのだろうか。



十年ごとの経過観察……。

二年後、奴らはまた、記憶を奪いにやってくる。



その定めに抗おうと、彼女は心の中で叫び続けていた。


心の強さで変えられることを、彼女は運命とは言わないのだから。







❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎



ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございます。

次章から【主人公 ケイ】、【ヒロイン 金美カナミ】 が登場します。

伏線を数多く張っておりますので今後、お楽しみいただける内容となっております。


少しでも “よかったよ” と思えるようでしたら

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おつかれさまでした。



Fate Ⅰ 悲劇 完

Fate Ⅱ 虹彩 へつづく

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