第5話 AI v.s. AI

 首都高速湾岸線。鉄橋付近にて激突する二体のAI。

そこへ二機の高速移動式ドローンが到着した。


「Xiさまぁ! お待たせしましたですぅ!」


Xiの足元にサポートドローン【Rz(リズ)】が滑り込む。


「遅せぇぞ! Rzリズ!」


Rz本体は二つの部品からなる。

円形からなる足場本体と腕輪型ハンドルだ。


脳内イメージまたは腕の振り方次第で方向変換と速度調整とを可能にする。

通常ハンドルは腕輪として装備し、脳内で伝えることが多い。


脳内転送でハンドルなし操作は可能だが、誤作動回避のため、Liは念のためハンドルも用意した周到ぶりだ。


「ヤツも同じ型を持っているのか」


Xiはサーチアイで眼前のステータスを割り出す。


相手のAIも足元にドローンが敷かれ同じ高さで浮遊している。

上腕ブレードが解除されていないため、反対側の腕にハンドルを通して装備している。


「Rz、マックスバトルフォームで行くぞ。時速五百キロまで出せるように気合い入れろよ」


「えぇーっ! そんなぁ!」


「Xi先輩、嬉しいですよ! 現実世界であなたと一戦交えられるなんて」


若汐ルオシーの配下の一人【ハオユー】は笑いながら告げる。


「ハオユーか、若汐ルオシーが手下を寄越よこすとはな」

「いつも社内のVTRバーチャルトレーニングルームでしか戦っていないから、運動不足なんですよ」


「不完全燃焼といったところか」


「もうちょっとお手合わせしてくださいよ、先輩」


刀剣と化している右腕を瞬時にぎ払うと、それを恐れるように風はいた。


「絶対に死人を出すなよ。ここは首都高の上空。東京湾に水没して故障しても知らないぞ」


Xiはおどけてみせる。


「フフッ! 現実世界リアルワールドで戦ってみたかったんですよね」


恐ろしい速度で斬りかかってくる。


ガキィィィ―――ン!!!


双方の剣が激しく火花を散らすと、二体の口角がともに上がった。



  ❇︎



「Xiちゃん、大丈夫かなぁ」


Liは心配そうな面持ちで遠隔で自動運転している。


「あなた方は本当に敵じゃないんですか?」


妹は少しずつ落ち着きを取り戻してきている。


「えぇ、敵じゃないわ」


「どうして、助けてくれるの?」

「……それを話すと長くなるわ」


「――私たちは無事に帰れるの?」


「帰れるわ。それは約束する」


「約束……」


AIに約束と言われても私は釈然しゃくぜんとしなかった。


「さっきのAIたちはもう追いかけてこないの?」


若汐ルオシー影人シャドゥがどこまで場所を把握しているかは分からない。でも、これだけは言えることがあるの」


「――な、何ですか?」


妹は少しおびえた表情で口元を震わせた。


「キミたちは死なない」


「えっ!?」


意外な言葉に妹の声が上擦うわずる。


「キミたちは死なないし、殺されもしない」

「どういう意味ですか?」私も切り返す。


「キミたちは私たちと同じ、ピーターパンなんだよ」


Liは意味深な発言を特別抑揚もつけずに言い放つ。


「どういうこと? さっぱり意味が……」


妹の反応も当然だ。私の理解も越えている。


一体何を言っているのだろう。



前方右側、方角にして南東。洋風のお城のような建物。


東京ディズニーリゾートが見えてきた。

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