第2話 転生者に求めるもの

「・・・は?」


ぱっと目に飛び込んできた文字を見て私は固まっていた。

目の錯覚か、ともう一度よく確認する。

しかし、何度見てもそこにはこう書いてあった。


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【本日のおすすめ】

異世界転生付きケーキセット

 ・お好きなケーキ1つ

 ・お好きなドリンク1つ

 ・みんなの憧れ異世界転生


なお、本日に限りクリスマスプレゼントとして

願ったタイミングで不老不死になれる特典付き☆

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~


えーっと、どういうことだろう。

異世界転生とは、今巷で人気のあの異世界転生だろうか。

もしかして、ここの超絶美形な店主も見かけに寄らず、そちら方面の造詣が深く、流行りにのったメニュー名にしてみたのだろうか。

まさか本当に異世界転生なんてあるわけがないしね…その上、不老不死とか…


などと頭の中でぐるぐると考えていると、店主に声をかけられた。


「あ、もしかしなくても疑ってるのかな?まぁ、それもそうだよね。でも本当に異世界転生付きで間違いないよ」

と、ウィンクしながら何てことないかのように言う。


「え?これネタじゃなくガチで言ってます?まさかそんなわけないですよね?」


「いやいや、本当だよ。軽く説明すると、転生してもらうのは私が管理する別の世界。あ、自己紹介が遅れたけど、私はこことは違う世界の創造神フォルティナだよ。呼びやすいように呼んでね!ちなみに、君たちの世界でいうところの魔法があるファンタジーな世界だよ」


「はぁ創造神様、ですか。」

もしかして、この人は妄想と現実の区別がつかなくなってしまった残念な美形なのだろうか…


などと少し残念な人を見るような目て見ていると自称創造神様はくすりと笑い

「ふふっ、全く信じられないって顔をしてるね。いいよ、それじゃ信じられるようにするまでだ。」

と言いながら、軽く右手を振ったその瞬間。


「――――っ!!」

なんと、さっきまで座っていたはずのカウンター席がなくなり、私は真っ白な空間で宙に浮いていた。

フォルティナ様は微笑みながら少し見上げて私を見ている。


「さて、こんなこと、ただの人間に出来ると思う?」


「お、思いません!!あの、とりあえず降ろしてくださいぃ!!」

創造神様相手に、半ば叫ぶようにお願いしてしまったのは仕方ないことだろう。

すると、また同じように右手を軽く振ると、何事もなかったかのように元居た店内でカウンター席に座っていた。


「さぁ、信じてくれたということでいいかな?どうする?異世界転生するかい?ちなみに断った場合は、ただケーキを食べて帰ったという記憶だけを残して他は全て忘れるだけだから、心配しないでね」

などと、また何でもない事のように問いかけてきた。

記憶いじられるとか普通に怖いんですが?


こんな体験をさせられて、信じないわけがない。夢だと疑うレベルだが、不思議と現実だと理解できた。

異世界転生かぁ…正直、心は惹かれる。

きっと私の断れない性格は今後も変わらず、なんとなく周りの人間にいいように使われながら、そしてそんな自分を嫌になりながら生きていくだろうことは容易に想像がつく。

そして、いま転生してやり直すチャンスが目の前に転がっている。

ただ、家族や良くしてくれる友人のことを思うと安易には決められない。

ちなみに、会社の人間はどうでもいい。


「フ、フォルティナ様、疑って失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。えっと、分からないことは何でも聞いていいと最初におっしゃってましたが、質問よろしいでしょうか」


「もちろんだよ!基本的に答えられないことはないと思うから遠慮せずにどうぞ。…と、その前にケーキと飲み物を用意しようか!飲み物はどうする?さ、ケーキは好きなのを選んでね」

そう言いながら、指をパチンと鳴らすと目の前に5種類ほどのケーキがふよふよと浮かんでいた。私はそれにまた驚きながら、フルーツがたくさんのったタルトと、飲み物はコーヒーをお願いした。


コーヒーを一口のみ、少し心を落ち着けてから私は気になることを質問していった。


どうして転生者をフォルティナ様自らが探しているのか。

転生者に何を求めているのか。

転生先は危険なところか。

転移ではなく転生ということは、どこかの家に生まれて0歳児から始まるのか。

不老不死とは。また、それ以外にも転生時に何か能力をもらえるのか。

転生を選んだ場合、地球での私の扱いはどうなるのか。

などなど、遠慮なく聞きたいことを聞いていった。



フォルティナ様は私が選ばなかった4つのケーキを自分の前にセットして、美味しそうに食べながら答えてくれた。



まず、地球の神様たちや目の前のフォルティナ様も含めて、あらゆる世界の神様同士は一応つながりを持っていて、数年に一度集まって交流をしているらしい。

で、今回の交流の場となったのが地球の創造神様のところで、

フォルティナ様は地球の発展具合に驚いたそう。特に日本の娯楽や、食へのこだわり、技術力には感心しっぱなしだったそうで、今も少し興奮しながら話している。


神様は原則、自分の創造した世界であっても下界に好き勝手に干渉出来ないらしく、どのように発展していくかは、そこに存在するものたち次第なんだとか。

で、自分の世界で生まれた娯楽や食べ物だけを、神様も神界にて楽しむことが出来るそうだ。

ちなみに先ほどのケーキとコーヒーは地球産のものを用意してくれたそう。

すごく悲しい顔をして、異世界産のものって持って帰れないんだよね…と言っている。


そして、今まで行った他の世界は自分のところと同じような発展具合だったし、以前来た時の地球もかなり前のことだったので、何も思わなかったらしいが、今回の交流会で食したものや娯楽品が忘れられそうにないと。次、楽しめるのがいつになるか分からないなんて耐えられないと。


そこで、地球の創造神様に頼みこんで、本人の同意を得られた場合に限り1人だけ自分の世界に転生させてもいいという事になったらしい。ちなみにフォルティナ様以外にも、同じようなお願いをしていた神様が数人いたそうなので、地球から何人か異世界転生することになるだろうとのこと。驚きだ。


とまぁ、こんなわけなので、フォルティナ様が求めているのは、地球の、特に日本の娯楽や食、技術などを自分の世界に広めて欲しいということだろう。

転生先は、地球に比べると安全とは言い難いが、人間や亜人種の生活圏では比較的安心して暮らせるほどの治安だという、なんとも微妙な解答をいただいた。

ちなみにほとんどの国が王制を敷いていて、明確な身分の差があるそうな。


どのように転生させるかは、応相談らしい。


そして、不老不死に関してだがこちらはある程度予想通りだった。自分で決めた年齢になった時に不老不死のスキルを使用すると、その年齢時のまま外見が変わらず年老いないとのこと。

不死は老衰などの理由では死ななくなる。もちろん、絶対に死なないというわけではなく、さすがに首と胴がさよならしたり、大量に出血したまま放置したりすると死ぬらしいが、それでも即座に回復魔法をかけると大丈夫なようで、かなり死ににくくはなるそうだ。

さらに、転生時に、いわゆるスキルをというものを授けてくれるそうで、その内容もこれから相談に応じてくれるらしい。


最後に転生した場合の地球での扱いだが、今回に限り地球の創造神様が下界に干渉してくれるようで、それとなく不自然にならないように2年ほど前に死んだというふうに周囲の人たちの認識を変えるそうだ。

そこは、もとから私という人間が存在してなかったかのようにしてくれればいいのでは?

とも一瞬思ったが、家族や大切な友人たちの中から私という存在が消えてなくなるというのは、それはそれで寂しいので、悲しませて悪いが良しとしよう。


さて、ここまで聞いてかなり転生に前向きな私ではあるが、ひとつ重大な気がかりがある。

「お話を聞いて、ぜひ転生をと言いたいところですが…食文化はともかく、地球の技術や娯楽をそちらに持ち込めるほどの知識なんてないんですけど、大丈夫でしょうか?」


そう、ただの一般ピーポーな私に、異世界で知識チートするには無理がありすぎるのだ。

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開拓島〜最強の不老不死になって、誰の指図も受けずに自由に生きます!〜 @Riiiisa816

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