最終話 大事にしたいの
新岡君と、お互いのことを知っていこうと話してから数か月。新岡君は新しいより時給の良いバイト先を見つけており、そことたまに入る単発のバイトで生活していけるくらい稼いでいるようだ。中々貯金ができないとぼやいていたけれど。
そして、もうすぐクリスマスという時期になった。私はクリスマスにあることをすると決意していた。それは。
「決まった? 告白場所と内容」
そう、梨沙の言う通り、私は新岡君にクリスマスに告白することを決めたのだ。
「うん。だいたいは」
最近はおすすめのデートスポットや、必ず成功する告白方法などを調べて計画を練っていた。それの確認をしていたら、そういえば、と話しかけてきた。
「新岡君は誘ったの? バイトしているんでしょ? クリスマスは時給高くなるからっていっぱい入れてそうだけど」
「……あっ!」
「え、まさか」
「まだ誘ってない!」
そう。何を言うか、どこで言うかに気を取られていた私は、告白相手を誘うことをすっかり忘れていたのだった。
「おばかね」
「うっ! でも教えてくれてありがとう」
「どういたしまして」
私は急いで新岡君をクリスマスデートに誘ったのだった。
そしてクリスマス当日の18時。私は新岡君との集合場所に来ていた。梨沙の指摘通り、新岡君は既にクリスマスにバイトを入れてしまっていた。キャンセルする、と言っていたが彼の生活がかかっていることを知っている私は、バイト終わりに話がしたいと言って彼と約束をしたのだった。
「山野さん」
「あ、新岡君。お疲れ様」
「ああ、お疲れ。今日はありがとうな」
「ううん、こちらこそ。バイト終わりで疲れているのにごめんね」
「いいって。バイト後に山野さんに会えるのとか最高だわ。まじ、毎日こうなればいいのに」
「毎日にする?」
「えっ?」
「ん?」
新岡君が私に会えてすごく嬉しそうな顔をするから、思わず言ってしまった。
「いや、違う」
「違うの?」
「にやにやしないで。予定くるって今焦ってるの」
「いいじゃん。予定はあくまで予定。続き聴きたいんだけど?」
新岡君に、好きな人にそう言われて顔を覗き込まれたら、予定なんてどういでもいいと思ってしまった。
「私、新岡君が好き、大好き。新岡君のことをたくさん知って、大好きだなって思った。昔の話聴いて、救えて良かったと思うと同時に、そばにいたいと思った。今度新岡君に何かあった時にすぐに気が付けるように、すぐに助けを求めてもらるように。あのね、大好き、です」
そう言って新岡君の顔を見たら、ものすごく嬉しそうにしていた。今まで見たことのない笑顔だった。
「うん、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。俺も好き、付き合ってください」
「はいっ!」
そう言って私は彼に抱き着き、彼はたやすく私を受け止め抱きしめ返してくれた。
「大事にする。絶対に。だから俺から離れないで」
「離れないよ。私も大事にしたいの。そばにいるって約束するよ」
大好きな新岡君と付き合えることの嬉しさをかみしめていた。
「それで付き合い始めたんだよねー」
大学時代のことを思い出していた私は、隣にいる穣にそう話しかけた。
「ああ。懐かしいな。顔真っ赤にして大好き、って言ってきたお前、まじで可愛かった」
「今は?」
「今も可愛い。あの時より大人になって美しい、も入ってきているけど。お前は可愛いよ」
穣は、5年たっても愛情表現をたくさんしてくれる。そのたびに恥ずかしくなってしまうのだけど。
「お前は? 俺のことどう思っているの?」
「大好き。かっこいい、世界一」
「ん、ありがと」
そう言って穣は私を抱きしめてくれたのだった。
「そういえば、俺の家族がお前に会いたがってる。結婚するならいずれ会わせないと、と思っていたけど、どうする? もしいやなら俺からなんとか言っておくけど」
穣は大学卒業後大手企業に就職。わがままな弟さんにお金を使い過ぎて借金まみれになったご両親が彼に泣きついてきた。今まで悪かった、と言って。穣はいろいろと悩んだ末、彼らを多少援助することにしたらしい。ここで見捨てたら俺はあいつらと同類になる、と言って。それから少しずつ関係は修復されているらしい。完全に元に戻ることは無いと言っていたけれど、連絡を取るくらいにはなっているようだ。弟さんのことはご両親が何とかしているそうだ。わがまま相手に奮闘していると穣が言っていた。
「会いたい。穣のご家族だもの。あなたと家族になるなら会っておきたい」
「分かった。じゃあそう言っておくよ。あ、援助するときにお前には手を出すな、って言っておいたから大丈夫だよ」
用意周到だ、と言ったら、愛する女性を守るのは当たり前、と恥ずかしくなるような言葉が返ってきた。
「愛しているよ、紫織」
「私も、愛しているよ、穣」
私たちの幸せの旅路はこれから先も続いていくのだ。
大学の同期に急に落とします宣言されました しがと @Shigato
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます