生物としてのヒト・食性について②

 今回はヒトがどれほどヤバいものを食しているのかという話をしたいと思います。

 ありふれた食材でも他の動物からすると致死的な毒物なものは多いのです。

 ペットを飼ってらっしゃる方はかなり気をつけているのではないでしょうか。



 別記事として書く予定ですが、毒に関してはパラケルススの言葉である、「全てのものは毒であり、毒でないものなど存在しない。その服用量こそが毒であるか、そうでないかを決める」  これが全てです。

 用量を間違えるとすぐに死に至るものを一般的に「毒」として扱うものとして、これを記載しています。


 さて、他の動物なら容易に死ぬ食べ物をはじめ、人間にとっても毒物であるものを、知恵と経験と経験とおかしな情熱で「何故これを食べようとした?」 というようなものまでいくつか紹介します。



 1. ネギ・玉ねぎ・ニラ

 有機チオ硫酸化合物であるアリルプロピルジスルフィドが原因物質です。

 溶血作用をもち、血中のヘモグロビンを破壊して溶血性貧血を起こさせます。ヒトに対しても過剰摂取は毒となりますが、かなりの量を摂らないと起こらないためにヒトに対する毒性は低いです。

 イヌやネコに与えてしまった場合、すんなり食べてしまうので危険です。

 食べてしまった場合は吐き出させるか、重症の場合は輸血するしかありません。特効薬は存在しません。

 今はペットに残飯を食べさせる家庭はもうほぼないと思いますが誤食しないよう置き場所には気をつけましょう。



 2. ニンニク

 アリインと、ニンニクが持つ酵素であるアリナーゼで変化したアリシンが有毒です。

 ニンニクは他の動物に食べられないために毒を生成するような植物だということです。

 加熱してもネギや玉ねぎやニラと同じく有機チオ硫酸化合物となるため、溶血作用があります。物質がどう変化しても一貫して強い毒性がある食べ物です。

 また、ニンニクは過剰摂取すると人体にもよろしくありません。

 ニンニクをまるごと1つ食べるのは避けた方が良いです。

 特に生ニンニクは危険です。

 すりおろしたニンニクを大量に摂取すると、猛烈な腹痛に襲われます。

 アリシンには強い殺菌作用があり、過剰摂取すると腸内細菌が全滅します。

 善玉菌も悪玉菌も無関係に皆殺しです。

 便秘などの後遺症も長く続くため、ニンニクの過剰摂取は控えましょう。

 生の場合はひと欠片、熱した場合も3欠片までにした方がよいです。


 ちなみに私もついこの間やらかしました。

 ホイル焼きを4欠片ほど食べ、ビールを3杯、ハイボールを1杯、大ジョッキのチューハイを1杯飲んだところまでは記憶していますが記憶が定かではありません。

 飲み過ぎなのは確かなのですがニンニクの過剰摂取により胃腸がやられました。

 人により許容量は異なりますが、同様の症状かもっと重い症状になる場合もあるのでお気をつけ下さい。

 入院する例も珍しくないです。

 でも、ニンニクは食べたくなるのですよね。

 なお、こちらもペットが食べないように本当に気をつけましょう。




 3. カカオ(チョコレート)

 メチルキサンチン類であるテオブロミンとカフェインが毒です。

 テオブロミンは人間にとっては良い効果がありますが、神経に作用する物質なのです。

 良い効果といえども幼児や妊娠中の摂取は控えた方が良いでしょう。


 人間の代謝能力が異常に高いのですが、テオブロミンも他の動物は上手く代謝できずに致命的な毒となるものの一つです。また、カフェインも毒性が高い物質です。人間でもコーヒーを短時間だと10杯程度飲むだけで中毒になります。(これもやらかしたことがありますが、結構苦しいです。)



 4. アボカド

 ペルシンという毒があります。

 分離に成功したのが1995年ということで割りと新しく知られた毒です。

 人間にはほぼ効果がないのですが、wikiによると鳥に重篤な症状が出るようです。

 また、それ以外の動物にも危険性が高いと言われており特に哺乳類に対しては乳腺に作用するようです。

 乳がんに対する治療効果がある可能性があるという研究結果があるようですが副作用も強そうですね。まだ治療薬として実用化されていないはずです。


 5. 香辛料

 だいたい香りの強い奴らは毒物と思って下さい。

 何でも食べる「黒いあいつG」ですらハーブは忌避します。唐辛子のカプサイシンも明らかに毒です。辛味からみは味ではなく痛覚なのです。

 また、温度の受容体に作用するために熱くないのに「熱い」と感じます。

 豊臣秀吉が寒さ対策に唐辛子を使ったことは有名です。

 また、メントールは逆に温度を低く感じる作用があり、例えば清涼感のある薬やシャンプーなどに使われます。目薬の冷たい感じも添加物としてメントールが使われているものがありますので、そういうものが身近にあれば成分を見てみてはいかがでしょうか。

 実際には冷たくなっていないのですが気持ちというものは大事だということですね。



 6. こんにゃく

 これはこんにゃくそのものが毒というわけではなく、コンニャクイモに含まれるシュウ酸カルシウムが毒です。

 コンニャクイモを茹でたりして口にすると灼熱感や腫れを生じるのですが、何故そんなものを食べようと思ったのか全く持って不明です。


 食品の蒟蒻こんにゃくの製法は以下の通りです。


 1: こんにゃく芋を粉にする

 2: 水と合わせて捏ねる

 3: 濃い石灰水と炭酸ナトリウム水溶液(または植物の灰を溶かしたもの)を混ぜたものを用意する

 4: 2と3を合わせて煮沸し、固めたものが出来上がり


 シュウ酸カルシウムがこれで無害化されるようなものではないと思うのですが、実際無害なのですよね。

 推測ですがゲル化したことによって全部排出されているのではないでしょうか。

 極端な低カロリーであることから考えても体内に取り込まれる量はほぼ無視できる量なのでしょう。

 しかし、どうしてここまでしてコンニャクを食べようと思ったのか全くわかりません。

 しかもコンニャクは栽培難易度が高いのです。

 あの食感が唯一無二だとしても……理解が難しいです。


 ちなみにシュウ酸カルシウムは尿路結石の原因になるものです。

 多く含まれるホウレンソウは医師いわく、あまり食べないほうが良いそうです。

 結石は怖いです。

 水分の摂取が少ないと起こりやすくなるので水分不足には気をつけましょう。


 イモ類では他にキャッサバというリナマリン(青酸配糖体)を持つものがあります。

 タピオカの原料ですね。皮と芯に毒がありますが毒抜きをすれば問題なく食べられます。



 7. 青梅

 アミグダリンという物質が毒です。

 キャッサバのリナマリンと同じく青酸配糖体の一種です。

 単体で毒ではない、という記載をどこかで見ましたが体内で代謝されると毒になるのならばそれは毒です。

 薬学的には毒ではないとしても取り入れたら死ぬのなら毒だと思うのですがどうなんでしょうね。


 なお、代謝されるとシアン化水素になります。

 シアン化物(青酸系)は青酸カリウムに限らず猛毒です。



 熟すと無害になるのですが、青梅のうちに収穫して作られるのがカリカリ梅や梅酒です。

 しかし、漬け込むことでも無毒化できるので安心です。


 普通の梅干しは完熟したものですので、漬ける前から食べられます。

 味はすももに近いですがあまり食べる機会はないでしょう。

 ただし、種を割ったら入っている仁は美味しいですが食べ過ぎにはご注意下さい。



 他にも銀杏ぎんなんなども毒性がある食べ物として有名ですね。

 フグも猛毒ですがどうにかして食べようとした結果、今のフグ料理があります。

 南米原産のナス科植物も大抵毒がありますが、人間にとって致死的なものはないです。ジャガイモの芽や青い部分、トマトのヘタ部分などが有名ですがトマトについてはそこまで強い毒性をもっていません。

 芽を除いたり青い部分は除いたりヘタごとトマトを食べなければ良いのですから、コンニャクと比べれば楽勝なもんです。


 何にせよ自然界の生き物は大抵は偏食です。

 毒が含まれているものを食べざるを得ない進化をした生き物としてはコアラがそうですね。

 パンダは人間とは逆に肉食をやめて笹や竹のように栄養価の低いものを食べる進化をしました。

 生きるために何でも食べたのか、それしか食べるものがなかったから偏食となったのか、同じ哺乳類でも多種多様で面白いですよね。


 人類の毒物代謝能力はおそらく脊椎動物では最強なのではないでしょうか。

 ヒトにだけ猛毒として働く物質があれば教えて下さい。


 では、キリがないのでこのあたりで。




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随時筆執記物 枚岡孝幸 @hiraoka_taka

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