死にかけたヒーラーですが、未来の勇者に救われ、最強のヒーラーになった件について。

ラッキーせぶん。

プロローグ

魔王を倒した、未来。

複数のトランペットが、めでたく喜ぶように、響き渡った。

どこまでも続きそうな人の波。

その一人一人が、この世を悪夢から救った英雄を待っていた。

しかし、予定時刻になっても、なかなか出てこない。

なにやらスタッフらが騒がしく『関係者以外立ち入り禁止』とかかれた道を走り回っている。


「入場サポート係‼勇者御一行は⁉」

「先ほどまでいらっしゃったのですが、ほんの一瞬目を離したすきに……」


上司に責められ、慌てて返事をする、勇者の入場をサポートするスタッフ。




「成功だよ」


狭い街角の一角、物陰で口角をにっとあげ、私は手でグッドマークを作った。


「まぁ、今まであたしたちを捉えた者なんていないしね」


鏡をうっとりと見つめて、軽く返してきた魔法使い。

自意識過剰である彼女だが、このサプライズを案外楽しんでいるようだ。


「当り前だ。もし失敗したら街ごと蹴散らしてやる」


時々さらっと怖いことをいう剣士。

実のところ、彼が一番この状況を楽しんでいる。


「あのスタッフ、ちょっと可哀そうな気もするけど」


眉をひそめ、苦笑する彼こそ、私たちパーティのリーダー、功労者で苦労人の勇者である。

そして、周りにスタッフがいなくなった瞬間、勇者が立ち上がった。


「さぁて。そろそろ行こうか」




『勇者御一行の登場予定時刻を過ぎてしまいましたが、こちらの準備不足で、予定時間を過ぎてしまっている状態です。大変申し訳ありませんが、今しばらくおまちください―――』


「えー!」

「勇者様たちはまだなの?」


などの批判の声が上がる中、


パァァァン―――


特設会場とは離れた、観客らの最後尾のほうからとても大きな破裂音が聞こえた。

その時、その音を聞いた人々は全員そちらに体を動かしただろう。

音のなった場所から、無数の風船が飛んでいた。


「みんな、待たせてごめんね」


「勇者様――⁉」


驚きの声が上がり、その反応を見た勇者パーティは、いたずらな笑みを浮かべるのであった。

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