だから、なんだっていうの?
激しい赤い光が瞬きをするように、ものすごい速さで、目が追い付かない。
剣と剣のぶつかり合う音が洞窟に響く。
そしてある時、ほんの一瞬の油断で、その糸は切れた。
とても残酷な音がして、血液が落ちた瞬間、幼馴染は洞窟とともに、天井に貫通されていた。
「おい、嘘だろ」
「ユ、キ……?」
気が付くと周り物音と騒音があり、その場はとても居心地が悪かった。
救急を呼びかける声やら、悲鳴やら、もう脈無いんじゃないか?なんと言う声が飛び交う。
私はただ、茫然とし、何もできなかった。
ユキ・ライアス、死亡。
医師からそれを聞いた瞬間、頬が濡れた。
ユキとパーティを組んでいた、私と、エナス・ファスト、アイラン・グヤは、悲しみに満ちた。
中でも私は、幼馴染のユキを亡くし、深い悲しみに包まれた。
弱いヒーラーであったが、すぐに動いていれば助かったかもしれない。
そう思えて気が気でない。
もちろん、葬式には参加した。
そして、それから2年たち、15歳。
今、吹っ切れたと言われれば、そんなこと在りえない。
そうして今に至る。
「僕たちのパーティに入らないか、っていうこと」
頭に一瞬、うれしいという感情が巡った。
しかし、そんなこと、許されてない。許されてはいけない。
「……ごめんなさい」
「―――どうしてよ」
思いのほか早く反論が入る。
この強いまなざし。恐らく理由を話さない限り引かないだろう。
「―――私、役立たずヒーラーで……」
「そんなの、やってみないとわからないじゃない」
「それに、今まで通りの生活で悪くないというか―――」
弱く微笑んだ。
と、その瞬間
バンッ‼
オリーブさんが、テーブルを叩いた。
「情けないわ‼ダリア、あんた、嘘つきね。本当の理由を話しなさい」
冷たく見据えられ、俯いた。
「……昔、パーティを組んでいた親友が、冒険中に亡くなったんです」
彼女の形見の、中心にダイヤモンドの飾ってあるペンダントを撫でる。
「それは……」と居心地悪そうにアイルさんが目をそらした。
しかし、一方オリーブさんは、
「だから、なんだっていうの?」
予想外に全く動じていなかった。
「これからも、ずっとその親友を思って、って言って自分を追い詰める?それは、ただの一人で慢心しているだけ。その親友、お気の毒にね。自分がその立場だったら永遠に立ち上がれないかも。自分のせいで、アンタが不幸になった、って思うとね」
「あ……」
いままで、自己満足していただけだった。
ユキの為と思って発言していたことは、逆に彼女を苦しめていたのだ。
「このことを、前向きに受け取るか、後ろ向きに受け取るかはアンタ次第。でも、その子のことを考えたなら……答えは決まったようなもんでしょ」
ニヤリ、と笑ったような気がしたのは気のせいだっただろうか。
ただ、はっきりと覚えているのは、とっさに
「少し、時間をください」
と小さくつぶやいたことだけだった。
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