夜合う約束は守れるのにね
好きな人が自分のことを好きとは限らない。そう気づいたのはごく最近のこと。
私と彼は、所謂セックスフレンドだ。セックスがしたい時に連絡をとりあい、どちらかの家やラブホテルで会う。
することはセックスのみ。2人で出かけたり、ご飯を食べたりはしない。それが暗黙のルールだった。
だから、会うのはだいたい週2回だった。彼には数人女の子がいるようで、私にはいつも土曜日に連絡が来る。
――足りない。もっともっと、会いたい。
〔今日会える?〕
〔今日?〕
〔いいけど〕
〔私の家でいい?〕
〔わかった〕
〔今から行く〕
はやくあいたいの、と打ち込んだ文字を、一つずつ消す。そんなこと言ったら、私達はこの関係を保てなくなってしまう。
ここ最近は私から誘うことが増え、週4回ほどセックスをしている。
好きだから、大好きだから、そういうことをしたい。相手のすべてを知りたいし、同じようにすべてを知ってほしい。
そう思っても、私と彼は結ばれない。
だから、都合がいい女のままであなたに会うの。そうすればあなたは、優しくしてくれるから。私が望む言葉を、私が望むように言ってくれるから。
イイ子のフリをしていれば、あなたは黙っていてくれる。本当の気持ちを押し隠して、私に夢を見せてくれる。私はとっくに中毒に成り果てているし、それが心地良いから今更戻れない。
本当は、独占してほしい。性欲処理の道具じゃなくて、私を直接見てほしい。
でもわかってる。あなたの本当の気持ちなんて、聞くまでもないの。知らない、知りたくないのに。
「・・・もう死にたい」
生きていても、あなたは手に入らない。私だけのものになってはくれない。
だから今日も連絡するの。あなたに愛してもらうために。
「・・・やっぱり、死ねない」
嘘の愛してるで満足してしまう自分が憎らしくて。
でもそんな自分が苦しくなくて。
苦しくない、そんな自分が苦しくて。
生きるのなんて、もうやめたい。そう言ったらあなたは、少し困ったように笑った。
嘘だよ、ワガガマでごめんね。
その言葉と同時に腕を差し伸べると、優しく手が回され、抱きしめられる。
耳元で囁かれる愛の言葉が、憎らしいほどに嬉しかった。
神の贖い 紫苑 @sbutgsa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。神の贖いの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます