第24話 神の目
俺は、何のために生まれて来たんだ。
「神の目。それこそが神の目ですよ。そのメガネが神の目に違いない」
何を言ってやがるんだ、何を。
「偶然ですよ。偶然。星が昇ったという場所にあなたがいた。リリアンヌさん、あなたが」
……リリアンヌ?
違う。星を放ったのはメイのほうだ。メイがあの星を空へと放ったんだ。
いや、まて、そうだ。なんでそっちも考えなかったんだ。あの場にはリリアンヌもいたじゃないか。
もし、星が昇ったオルニールの屋敷にリリアンヌがいたことをこいつらが知っていたら、そっちを考えてもおかしくはない。
リリアンヌが悪魔の子。空へと昇る星の元に、見えない目を見えるようにした魔法のメガネを掛けたリリアンヌがいたのだ。
つまり予言の通りだとすれば魔法のメガネ、つまり俺が神の目と言うことになる。おそらくベーコンたちはメイのことを知らない。メイも目が悪く予備のメガネを掛けたことで目が見えるようになったことを知らないとしたら。
「悪魔の子は潰さないと」
ヴィルヘルムの十三予言。世界から希望を奪い、永遠の冬が来る。
「そんなもんただの予言だろうが!」
「ええ、ただの予言です。しかし、的中されては困る。だから潰す」
くそがっ、どうすりゃいいんだ! どうすりゃここから逃げられる!
戻るのは無理だ。あんな化け物たちの戦場に飛び込めるわけがない。
ロックにはもちろん頼れない。ベーコンの相手で手いっぱいだ。といか、あの加工肉野郎あんなに強かったのかよ!
だとしたら、この目の前にいるヒュームとかいう赤目をどうにかして逃げるしかない。だが、こいつも、普通じゃない。こいつもロックと同じで俺の解析鑑定を弾きやがった。
ヤバい! ヤバいって! みんな動いてくれ!
「リリアンヌ! オルニール! メイ! レオ!」
ダメだ! 聞こえていない! 俺には精神操作を解く機能はどこにもない!
クソッ! 電気ショック機能でも追加しとけばよかった!
「
しかも、なんだこの黒い炎は!
いや、待て。
こいつは、確か。
「闇魔法……!」
そうだ。闇属性魔法だ。光属性と同じレア属性。神を支配する魔法も闇属性魔法だ。
どうするどうするどうするどうするどうするどすうる!
俺に、俺に何ができるんだ!
「
「みんな!」
クソッ! 炎の檻の次は魔法の鎖かよ!
「動きを封じておきましょうか。用心のために」
なんで、なんでこんなことになっちゃったんだよ。
俺は、俺たちはただ、平和に暮らしたいだけなのに。
「しかし、二人いるとは想定外でした。まあ、しかし、やることは同じですが」
やめろ。
やめろやめろやめろやめろ。
やめてくれ!
「まずは予定通り、あなたから」
リリアンヌ!
「
「やめろおおおおおおおおおおお!!」
なにか、何か手はないのか。
闇、闇、炎、闇の炎。どうにか、どうにか……。
「おねえ、ちゃん……」
……メイ。そうか、メイだ!
メイは光だ!
「光れええええええええええええ!!」
発光! 発光! 発光だ!
「う、お、ねえ、ちゃん……」
いやダメだ! メイも意識がはっきりしてない! これじゃあいくら呼び掛けてもどうにもならねえ!
どうするどうする、このままじゃリリアンヌが。
……いや、違う。諦めるな、諦めるんじゃない。
メイが光れないなら、そうだ。
光るのは。
「俺だああああああああああああああああ!」
……はは、本当に何が役に立つかわからないな。
「輝けええええええええええええええ!!」
フラッシュ機能。こんなものいつ使うんだと思っていたけれども。
「クソッ! 目が!」
状況は……。よし! 奴の黒い炎が晴れた! どうやらフラッシュ機能は光魔法にカウントされるらしい。
闇を払う光。光魔法は闇魔法を消し去ることができる。
これなら!
「逃げるぞみんな!」
「……え?」
「あ……」
「わたくしたち、なにを」
「いいから走れ!」
どうやらヒュームの精神操作も解除されたみたいだ。いいぞ、いいぞ。このまま。
「逃がすか!」
「フラッシュ!」
「ぐぅっ!?」
浄化の光だクソッたれ! きれいさっぱり消えちまえ!
「うう、目が」
「目が見えませんわ」
「リリアンヌ! メイ! 二人の手の手助けを!」
「は、はい」
「うん、メガネさん!」
リリアンヌとメイは無事だ。魔法のメガネが彼女たちの目を激しい光から守ってくれた。オルニールとレオの目は一時的にやられた。だが、これは仕方ない。あの状況では仕方なかった。
それにそのうち見えるようになるはずだ。その間は、こっちで誘導するしかない。
奴の、ヒュームの目が見えるようになる前に、できるだけでも逃げなくては。
「一体何が起こったんですの!?」
「説明は後だ! とりあえず今は逃げるんだ!」
「逃げるっても、目がよぉ!」
「そのうち見えるようになる! 誘導するから走れ!」
走れ。逃げろ。
くそっ、これに何の意味がある。相手はもしかしたらロックと同等の力を持っているかもしれないんだぞ? そんな奴から逃げ切れるのか?
考えろ。考えろ。この場を切り抜けるために思考を止めるんじゃない。
「無駄、ですよ」
なんで、見えないはずだ。どうして正確に追ってこれる。どうして、目の前にいる。
「闇と私は相性がいいんです」
目が見えなくても魔力を感知できるのか? いや、それとも本当に闇の中でも、目が見えなくても見えるのか?
どっちにしろ、ふざけてる。
チクショウ!
「おかえしですよ。
毒霧!?
「口と鼻をふさげ!」
霧の濃度が濃い。前が見えない。
だが、こっちにはこれがある。
「フラ」
「させませんよ」
……あ。
「厄介なメガネですねぇ。でも、取り上げてしまえばもうあの閃光は使えませんね」
「妖精さん!」
見えない。
「そちらの物もいただきますよ」
「や、やだっ!」
何も見えない。
「返せ! それはメイのだ!」
「呪縛鎖」
「ぐがっ!?」
リリアンヌ! メイ!
見えない。何も見えない。クソっ、外された。取り上げられた。もっと簡単に外れない形になっておけばよかった。
これじゃあ、何もできない。どうにかヒュームの手から逃れないと。
「まったく、面倒な物を作りましたんねぇ、ベーコンは。しかし、こうしてしまえば何も問題ありません」
「やめなさい!!」
……なんだ? なにか、折れるような、割れるような。
「
な、にが。あ、お……。
「妖精さん! 妖精さん!」
「メガネ、さん!」
だめ、だ。離れたら、ダメだ。
メイは、まだ、魔力の、せい、ぎょ、が。
れに、りり、あん、ぬ。
りりあ、んぬ。
が。
「あ、あ、あ、う」
「メイっ! しっかりしろメイ!」
「危険ですわ! 離れて!」
「オルニール様! 何が」
「リリアンヌ! わたくしの手を離さないで!」
見え、な、い。なにも、き、こ、えない。
ない。
な。
「さあ、大人しく――」
お、れは。
あ。
が、ぎ
「妖精さあああああああん!!!」
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