第4話『冬羽が生まれるまで』
千秋ちゃんは本当に聡明な子供だった。その辺も秋介に似たのかもしれない。自然とナツの研究室に出入りするようになり、いつの間にかナツの研究を手伝うようになっていた。
「ナツ、そういえばあなた千秋ちゃんとはどうなのよ?」
「どうって、彼女のお陰で研究はとても捗ってるよ」
「そうじゃなくて、千秋ちゃんのこと一人の女性としてどう思ってるの?」
「そりゃあ、可愛い子だとは思うけど…」
「彼女の気持ち、気づいてるんでしょ?」
「まぁ、何となくは…。でも、彼女、元パパだよ?」
「千秋ちゃんはパパじゃない。ちゃんと千秋ちゃんの人格を尊重してあげて」
「分かったよ。ママに言われたら断れないじゃないか」
「ふふっ」
技術は進歩し、AIの人格を反映させた遺伝子を合成することが可能になっていた。ナツと千秋は人工授精により子供を授かった。今やAIと人間が子供を作る時代である。
「子供の名前はどうするの?」
「う~ん、僕ら家族は春・夏・秋はもう制覇したから、あとは冬が付いた人が加われば春夏秋冬コンプリートだねって千秋とは話してる(笑)」
「まぁ偶然にも出産予定は冬だから、丁度良いかもしれないわね」
「冬が付く名前って何か良い名前思いつく?」
「そうねぇ、生まれてくる子の性別はもう分かっているの?」
「女の子らしいよ」
「女の子で冬の付く名前…冬に羽って書いて
「それ良いね!
「じゃあ冬羽ちゃんで決まりね」
「冬羽も誰かの魂の生まれ変わりとして生まれてくるのかな?」
「秋介が千秋ちゃんとして生まれて来た訳だから、その可能性は高いわね」
「人間っていつからこんなシステムになったんだろうね?」
「さぁ、それは私達を作った神様に聞いてみないと分からないわ」
「五次元領域に保存されている魂を管理している存在がいわゆる神様だよね?」
「そうなるわね」
「何で人間は輪廻転生するんだろうね?そして、何で人間は輪廻転生する度に記憶を消去されるんだろう?前回の人生を参考により良い人生を送ろうと思うなら、記憶は引き継いだ方が良いような気もするけど」
「死ねない体になった今なら分かるけど、やっぱり人間には100年くらいの寿命が丁度良いんだと思うわ。そして、毎回記憶を消去するのは、もし前回の人生が悲惨なものだった場合、その記憶を引き継いで生きるのは余りにも酷だと神様も考えたんじゃないかしら?」
「確かにそうだね。前回の悲惨な人生を覚えていたら、きっと今回の人生も悲惨なものになってしまう気がする」
冬も深まり雪が降ったある朝、冬羽は生まれた。
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