第3話『秋介の生まれ変わりに会うまで』
ナツが秋介の研究を引き継いで数年後。
「ママ、ちょっと来て」
「なに、どうしたの?」
「ちょっと見てもらいたいデータがあって。僕ずっと前から五次元領域でのパパの魂の位置は特定していたんだ。それで、最近ふと思い出してもう一度位置を確かめてみたら、パパどうも五次元領域に居ないんだよ。しかも驚いたことに、この地球上に位置が変更されてるんだ。こんなことってある?」
「どういうこと?まさか輪廻転生でもしたってこと?」
「そうか、そういえば仏教の概念で輪廻転生ってのがあったね。パパもそれを経験したってことなのかな?」
「会いに行きたい!」
「そう言うと思ってた!早速支度をしてパパに会いに行こう!」
「突然の訪問すいません、私達、千春とナツと申します。おたくに小さいお子さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「あら、あの有名人の千春さんとナツさんがどうしてうちに?秋介さんの研究のおかげでうちの父も母も楽しく余生を過ごしていますよ、ありがとうございます。うちには3歳になる孫がおりますが、どうかされました?」
「実は、ナツが秋介の魂の位置を追跡した結果、おたくのお孫さんの位置と一致しまして。我々も信じられないんですが、おたくのお孫さんがもしかして秋介の生まれ変わりなんじゃないかと思って居ても立っても居られず訪問してしまいました」
「そんなまさか」
「はい、我々も正直半信半疑です」
「まぁとてもお世話になった千春さんとナツさんのお願いですから、聞くしか無いですね。ちょっと待って下さいね。千秋ー!千秋ちょっと降りてきてー!」
「はーい」
「お孫さん、千秋ちゃんって言うんですね」
「はい、秋の紅葉が綺麗な時期に生まれたので千秋と名付けました」
同じ秋が付く名前、不思議な縁を感じる。
「おばあちゃん、どうしたの?」
「千秋、こちら千春さんとナツさん。ご挨拶して」
「こんにちは」
「初めまして、千秋ちゃん。いい名前ね」
「うん、わたし千秋って名前大好き!」
「千秋ちゃん、変なこと聞いてごめんなさいね。突然だけど、私達に見覚えとか無いかしら?」
「千春さんとナツさんに会ったのは今が初めてだよ」
「うん、私達もそうなんだけど。なんか、懐かしい感じとかしない?」
「懐かしい感じ?別にしないなぁ」
「そっか。ごめんね、変なこと聞いて。すいません、お邪魔しました」
「あ、懐かしいって言えば、千秋さんとナツさん、懐かしい匂いがする!」
「懐かしい匂い?」
「なんて言うのかな?落ち着く匂い」
「そう…」
千春の声は震えていた。自然と涙が流れていた。記憶は消えてしまって今は千秋ちゃんとして元気に生きているが、確かに秋介はここにいる。
「最後に千秋ちゃんのこと抱きしめても良い?」
「良いよ~」
あぁ、本当だ。懐かしい匂いがする。秋介の匂いだ。柔らかい匂い。涙が止まらない。
「千秋ちゃん、ありがとう。元気に生きてね」
「うん!千春さんもナツさんも元気でね!」
「また会いに来ても良いかな?」
「もちろん!」
千春とナツは千秋の家をあとにした。
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