第3話 二日目 午前七時 延びる期限
仕方ない。
朝帰りも今日で最後にしなくては。
昨夜、城を抜け出し庶民街に消えて行った俺は、一晩中酒場でバックギャモンなるボードゲームを仲間とワイワイプレイを堪能。朝七時に自室に戻った。
少し眠ろう。
そして、午後一時頃に父上様の部屋に行き結論を伝えよう。ギリギリだと慌てて決めたな? と思われ兼ねない。余計な火種は撒かないでおかなくては。
とりあえず、だいたい素性がわかる悪役令嬢とハレー彗星令嬢は却下して、シークレットにしよう。
俺は薄っぺらいリストを再度考察した結果、まさか選ばないだろうと言う二名をわざとリストに組み込んだのではないかと推察した。
厳しく恐怖の大魔王と化した、父上ではあるが、これは息子の為に優しい問題を出したと言う、せめてもの愛情表現だと思う。
コンコン、ガチャ
「おい! パンナコッタ!」
当然の様にノックと同時の開放の後、父上が入室。一応コンコンと二回叩いたと言う事は激怒ではないな。
「あ、父上様!おはようございます!」
俺はパジャマへの着替え途中の為、純白のパンイチに黒い靴下と言う最低なスタイルで、自分が持てる最高の笑顔を父上様に押し売り。
「パンナコッタ、期限を一日延ばすぞ……ん? お前、靴下なんか履いてまさか朝帰りしたんじゃないだろうな?」
「いえいえいえ!
とんでもございません! 私もお妃を迎えたる皇太子、これからは日常も正装で過ごし、品性を磨かせて頂こうと考えた所存でございますから! はい! あの……ところで期限を延ばしたと……」
俺の頭上から、喜びの天使の羽根が無数に舞い降りた。
「おう、そうだ。今日は三人のお妃候補を城に呼んである。さすがに紙切れ一枚で決めろと言うのは、時代錯誤で難儀だと思ってな。一人づつ面会して、話したのちに一晩考えて決めるがいい」
睡眠出来ない事が確定。
天使の羽根だと思ったのは、トイレットペーパーだった。しかも使用済みも混ざっている様な。
「はい!お気遣い誠に感謝致します!やはり、悪しき風習に一石を投じると言うお考えと革命力!父上様には感服以外の何ものでもありません」
確かにたった一枚の紙切れで決めろと言うのは、昔のやり方過ぎる。いや、昔は複数から選択と言う概念すらなかったと、老齢の使用人から聞いた記憶もある。ある日突然、今日からこの方がお妃だ――そんな婚姻を歴代続けて来ていたのだ。
「よし。まもなくフラフープ令嬢が到着する頃だな」
「え?ま、まもなくですか?!」
人生最大の選択を、精神・肉体的な準備が皆無な状況で迎える事になった。
俺は慌ててタキシードに着替え、特別応接室で待機する事にした。
そして静かに目を閉じつぶやいた。
いや、心で叫んだ。
「クソジジイ!勝手に決めすぎじゃね?」
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