短編「殺人ノ最後」(完)

不可世

一話完結

とっくにプライベートなんて消え去った

あるのは取り締まられた現実

厳重警戒の殺人クラスが潜んでるみたいだ

まぁ死んでもいいから

むしろ遭遇したい

にしても、暑い

血を流してるくらいの熱さだ


残酷な光景は

突如として香り出す

ああ、君か

死にたいのは君か


君は死にたそうな顔をしてるね

だから殺さないよ

僕はね、生きたいって強く願う奴を殺すんだ

そっちの方が、悲しみは大きいだろう


そうか、じゃあ俺を殺しても意味がないのか


そうだ


お前は悲しみのために人を殺しているのか


そうだね


そうか、

じゃあ、捕まる事さえ怖くないのか


ああ


生きてる人が憎いか?

幸せが憎いか?

それとも、自分を見てほしいのか


何言ってるんだ、俺はな


お前はきっと殺すことで、注目されたいだけだよ

それほど孤独だったから

悲しむ理解者が欲しかったんだ



俺は・・・


いいか、人はな殺しても

生きるんだよ

心に生きるんだよ

だからお前が殺しても

その死者は愛され続ける

決して、不幸だけを与えるわけじゃないんだ

そりゃ、愛しい人を失えば悲しむが

それだけじゃない

花を添え、墓を参り、感謝をする

手を合わせて、祈って、幸せを願う

それが死者の成り行きだ

お前は、悲しませたいなんて言ってたが

そうはならないのさ


じゃあ、俺は、俺は・・・


生きて償え

生きて理解しろ

その遺族の心を

わかってやれ

そしていつか手を合わせて祈れ

幸せを祈れ

お前は、間違えた、

でもな、遺族だって、お前を邪険になんてしない

人は、情がある

だからその情を遺族の涙を汲み取って

立派になれ

”立派に生きろ”


ごめんなさい


いいさ、これからは

お前の誠意を見せるんだ

そして、本気で間違えたと、そう思えた時

お前を、人並みに裁いてやる

これは執行猶予だ

決して、逃げず、戦え

この世界で、真に心に耳をすませろ。

じゃ、早くいけ。

見逃してやる

そして自主出来るまで優しくなれ。

じゃあな


はい。はい・・・。

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