お披露目パーティーの準備を進める ②
僕とサシャの衣装は決めたので、後は完成するのを待つだけである。とはいえ、他にも僕はやらなければいけないことがある。というのも折角の聖女である僕のお披露目パーティーなので、聖女らしい部分は見せておくべきだなと判断した。
守護精霊に認められたのが聖女や聖人であり、それ以外の証なんて正直に言えば必要はない。でも世の中にはそういうことを理解しない人と言うのは少なからずいたりするのだ。
ただの聖女を名乗る僕が帝国で好き勝手しているみたいに思われてもなんだかなぁって思うし。僕は割と好き勝手させてもらってはいるけれど……、それでサシャが悪いように言われたら僕は悲しいと思うから。
そういうわけで僕の得意の障壁を使ったパフォーマンスでもして、聖女は特別なんだよって示してみようかなと言う話になっている。障壁って案外色んな活用方法があるからね。あとは傷を治したりするとかそういう系統のことも僕は出来るんだけど、そういうのって勝手に進めるのもそれはそれで問題ではある。
誰かを癒すことを生業にしている人だっているので、僕がそれを請け負い続けてもそういう人たちの生活を奪ってしまうことになる。王国には僕がどのくらい傷を癒せるかとかはちゃんと報告していない。というかあの人たちは僕が守護精霊に認められた聖女であること、そして僕が聖女として相応しい行動をとることが重要だったから僕が実際にどの程度何が出来るかどか興味がなかったのだと思う。
そういう癒す系のパフォーマンスをしてもいいかなと思ったけれど、それはやりすぎると僕が攫われる要因になるそうだ。僕もそういう風に狙われたいわけではないので、なるべくそういう狙われそうなことはしない方がいいからね。
「こういう感じの障壁の使い方だと目立っていいかなぁ」
「そうですね。良いかと思います。聖女としてのウルリカ様の力を示す良い機会かと思います」
僕は障壁をどのように周りに見せるかというのを考えて、試行錯誤している。ただ見せるだけではどうかと思うので、そのあたりは考えている。
「あとはオペラ隊に参加したいから、それでよい感じの歌を披露したいなぁ。まぁ、流石に次のパーティーまでにサシャのことを崇める歌は完成しないけれど」
そのお披露目のパーティーで僕は歌を作ることが出来ない。そこまでに作れたらかっこよかったと思うのだけど……僕はそんな簡単に歌を作ることは出来なかったのだ。
これで歌作りの天才ならば簡単に歌を作ってしまうのかもしれないけれど、僕は流石にそれは出来なかったのが残念だった。
そういうわけで今回のお披露目パーティーでは歌は既存のもの。僕が歌いたいっていったら交ざって歌ってもいいよって言ってもらえたんだ。だから一緒に混ざって歌うことになっている。
そのあたりの練習も僕は一生懸命やっているんだよ!
本格的に歌をやっている人たちに混ざるのって大変だなと思った。僕みたいな素人が入っていいかなとちょっと心配だったけれど、オペラ隊の人たちはエブちゃん先生の教え子も多いみたいで受け入れてもらえたんだ。
僕の歌声を褒めてもらえて嬉しかった。
それにパーティーで着る服とは別にオペラ隊の人たちが着る服とお揃いのものも着るんだよ!!
楽しみなことが盛りだくさんだなって、僕はワクワクしている。ちなみに周辺諸国の人たちも呼ぶらしい。とはいえ、ルズノビア王国の王族は呼ばないらしいけど。
まぁ、一番僕のことを取り戻そうとする確率が高い人たちだからね。
僕としても連れ戻されたくないし、居ない方が安心する。あと帝国と関係が悪い国は当然来ないよ。
サシャが仲良くしている国の人たちが来るだけらしいので、僕は安心して参加できると思っている。
皆、サシャの言うことをちゃんと聞く人たちばかりみたいだからね!
それにしても周りの国からの人たちからも敬われてたりするってサシャはやっぱり凄いよね。僕はサシャのことを知れば知るほど凄いなと実感するよ。
僕がそうやってパーティーの準備で忙しくしている間、サシャも女帝として忙しそうにしている。
僕はサシャと一緒に過ごしたいと思っているから、暇さえあれば会いに行っているけどね! こういう国外の人たちも呼ぶことになるパーティーは準備から色々大変なんだよ。他国から訪れる人だと泊りがけで、その間帝国に滞在することになるしね。
そのあたりも考えると本当に色んな準備が必要なんだなって思った。
僕は王国に居た頃、そういう偉い人たちが行っている準備なんて全然関わってこなかった。でもサシャやユエバードの仕事ぶりを見ているとそれだけ大変なんだろうなと分かる。
「サシャ、お疲れ様」
サシャに会いに行った時、サシャはちょっと疲れているように見えた。
やっぱり僕をこうして帝国に引き取った関係で、色々煩わしいことが増えているのかもしれない。
「ごめんね、サシャ。僕を帝国に連れてきてくれたから色々忙しそうだよね」
「ウルリカが謝罪する必要はない。我はウルリカを我が国に迎えたというのをちゃんと公表したいのだ」
「そっか。じゃあありがとうって言っておくね。僕は帝国にこれて楽しいし、僕もお披露目パーティー凄く楽しみだから」
「うむ。あとルズノビア王国の王太子に関してだが……中々暴走気味のようだ」
「暴走?」
サシャは女帝として王国に間諜でも放っているのかもしれない。僕はそういう人たちについて詳しくないけれど、偉い人たちは他国の情報もちゃんと集めているだろう。
それにしても暴走しているってことは、僕の直筆の手紙を見ても全く受け入れる気ないってこと?
そう考えると面倒だなと思う。だって僕自身が戻る気ないって言っているのに、それを受け入れないって中々問題だよ?
「ルズノビア王国ではウルリカを正妃に迎え入れる準備が進められておる」
「えー? 僕、男だよ? 普通に女の子、正妃に迎えようよ。手紙にも書いてあったけれど、僕ちゃんと断ったのにね?」
断ったのにも関わらず勝手に僕を正妃として迎えるための準備をしているとは本当になに……?
「というかさ、僕を正妃で側室を迎えるつもりみたいなことを手紙に書いてあったけどさ……。そういうのって誠実じゃないよね。王族や貴族だとそういう奥さんや旦那さんが多いのもあり得る話だろうけれど、僕はそもそもそういうのはやだなぁって思う。僕は恋とか分からないけれど、多分、好きな子が出来たら独占したいってそう思っちゃうと思うし」
僕はそういう気持ちは分からないけれど、誰かと大切な人を共有するとかはちょっと遠慮したい。僕は平民の出だし、そういう奥さんや旦那さんが大量にいるみたいなのはよくわかんないし。
それに本当に好きなら独占したいって思いそうだよね。その側室候補の女の子たちにとってもきっと良くないことだと思うんだけどなぁ。そもそも僕の意思を無視しすぎていて何とも言えない気持ち。
「そうよぉの。しかしあの王太子はウルリカを正妃にすることが誠実な行いだとでも思ってそうだ。ウルリカが帰ってこないのは国の環境が悪いせいだと思っているのか、聖女過激派を弾圧しておるらしい」
「えー? 聖女信仰が強い人たちのことを? 僕、その人たちがどうなったとしても帝国の暮らしが楽しいから帰る気ないけどなぁ」
「うむ。そうであろう。しかし、あの王太子はそれを成せば帰ってきてくれると思っておるのだ。そしてウルリカが正妃になることを受け入れるはずだと思って仕方がないようである」
「おおぅ、なんだろう? ここまで話聞かないタイプではなかったと思うんだけどなぁ。どうしてそうなっちゃったんだろ?」
ザガラはまぁ、暴走して僕を断罪とかしていたけれどそこまでアレな感じではなかったと思う。なのにサシャから聞く限り今の状況は中々アレな状況である。
「恋をすると愚かな行動を起こすものはおる。ウルリカへの恋心からこれだけ暴走しておるのだろう」
うーん、迷惑。
恋心を抱いているとしても暴走しすぎでは?
というかあれだね、権力者が暴走するとこんな感じになるんだなという例だよね、これ。
「なんだか、僕の事、無理やり攫おうとしそうだね?」
「そうよのぉ。今度のパーティーにも紛れてこようとするかもしれない」
「気をつけないとね」
折角楽しいパーティーだなと思っていたのに、僕を攫いに来る望んでない王子様とかいらないんだけどなぁ。
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