サシャと一緒に階段を上った先に行ってみる
カフェを後にして、僕とサシャはまた帝都を歩いている。お目当てのカフェに行くことが出来たし、僕はご機嫌である。
だって侍女たちから話を聞いた時から行ってみたいと思っていた場所だったから。
行ってみたいと思うのと、実際に行くのはまた違うよね。実際に赴くと想像と違ったとがっかりすることもあるかもしれないけれど、カフェに関しては想像以上に楽しい場所だった。
「ウルリカ、この先の景色が綺麗なのだ。登るのは大丈夫か?」
サシャがそう口にしたのは、カフェを出て少し歩いた時だった。
帝都は広く、また知らない場所に出ていた。なんていうか狭い区間に沢山の建物や施設が立ち並んでいて、本当に帝都は迷路か何かみたいだ。
そしてその迷路のような道を進んだ先に、長く続く階段があった。
何段あるんだろう……? と分からなくなるぐらい長い階段。それを登った先の景色が綺麗だとサシャに誘われた。
「うん。僕はサシャがおすすめする景色を見てみたい。でも、僕の体力が持つかな……?」
僕はサシャがおすすめしている景色を見たいと思っていた。けれど、僕の体力が持つのだろうかというそれだけが心配だった。
こういう長い階段を僕は登ったことがない。聖女になる前はともかくとして、聖女になった後は特に自分の足で動くことは少なかったし。
「途中で疲れたら我が運んでやる」
「なら、そうしてもらおうかな」
僕の体力がもたなかったらサシャが運んでくれるようだ。それならばいいかと僕はサシャの言葉に甘えることにした。
僕とサシャは階段を上る。その石段を少しずつ登っていくと、また階段の下とは異なる光景が映る。
僕らが登っているのは、城の正反対の位置にある場所だ。帝都は城の向かい側にちょっとした山みたいな場所があって、そこの部分だね。サシャが言うにはこの上に見張り台もあるらしい。
帝都に敵が進軍してくるのは、此処からよく見えるんだって。あとは平地の部分に異常事態があった時に登った先に逃げたり出来るようにもなっているんだとか。
あとは平地の部分とは違って、この少し小高な部分は家賃が安い部分なんだとか。
田舎から帝都で成功したいと出てきた人たちは、最初はお金がないことが多くこういうところに住む人が多いんだって。
階段を上っている最中にそういう離れた場所からこの帝都にやってきたばかりという人たちにもあった。
彼らは女帝であるサシャにあえたことが嬉しいみたいで、感激した様子を見せていた。
僕はサシャがそんな風に敬愛されていることが嬉しくて仕方がなかった。
「帝都ってそうやって人が集まっていくんだね」
「都会で一発当てたいと思う人はそれなりにおるからのぉ。出稼ぎのためにきておるものもな」
自分が成功することを夢見て、こうして帝都にやってくる人たち。自分のやりたいことが明確に決まってそれに向かって真っすぐに進む人たちも多いんだって。そういう人たちって凄いなって思う。
一生をかけて叶えたい夢があるって語っている人もいたんだよ。そういうものがあるって素敵だよね。
僕にはそういうものがないから、なんだかいいなぁってそういう気持ちでいっぱいになった。
「ふぅ……」
階段をのぼりながら、平地の部分とは違う光景を見ることもそこに住まう人たちと会話をすることも楽しかった。
楽しかったからこそ、ちょっとは疲れも忘れられた。
とはいえ、僕はやっぱり体力がなかった。
そういうわけで幾ら楽しさでごまかせられる部分にも限界がある。サシャは全く疲れた様子など見せてないのに、僕は息切れをしてきてしまった。
「ウルリカ、抱えてよいか?」
「うん。ありがとう、サシャ」
流石に僕の体力が限界だと察したサシャに言われた言葉に僕は頷いておく。
僕はサシャと一緒に色んな場所に行けたらってそういう気持ちになっているから、もっとやっぱり体力をつけないといけないなと思った。そうじゃないと毎回、サシャに抱えられて移動することになりそうなんだもん。
まぁ、サシャに抱えてもらうのも嬉しいことだけどね!
今回はサシャは僕のことをおんぶしてくれた。僕が周りの景色を見えやすいようにそうしてくれたみたい。サシャの背中って大きいなぁ。なんだかおんぶされていると安心する。
「ウルリカ、落ちないように捕まっておくように」
「うん!」
「ちょっとスピードをあげる」
サシャはそういうと僕をおんぶしているとは思えないス速さで階段を登り始めた。
先ほどまでとは全然違う。僕のゆっくり登るペースにサシャは合わせてくれていたのだろうなとすぐに分かった。
サシャ一人だったらゆっくり登る必要も全くないんだよなぁ……。
「サシャ、凄い。速い!」
それにしてもサシャが勢いよく階段を登るから、周りの景色の移り変わりが速い。
それを実感してなんだか興奮してしまう。だって凄い!!
サシャは僕の言葉に気分を良くしたのか、また進む足が速くなった。
そしてあっという間に目的地であった一番上までたどり着いた。
一番上とはいっても、階段が繋がっている範囲と言う上での一番上だ。もっと先は通常、人が足を踏み入れないエリアらしい。
上に大きな塔のがたっていて、そこが見張りの騎士たちがいつも常駐している場所みたい。
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