カフェのご飯は美味しい。

「わぁ」




 届けられた注文した料理を前に僕は思わず声をあげてしまう。

 イラストで描かれていたものより素敵……というか、僕に向けてのメッセージのようなものが添えられていた。






 それは食べられるメッセージみたいで、びっくりする。聖女様、ようこそと描かれているそれを見ると、僕のことを歓迎してくれているのだと嬉しい気持ちでいっぱいになった。

 なんだか食べるのがもったいないなぁなんて思うけれど、逆に口にしなければそのまま捨てられたりするだけだろうし……と食べてみることにする。

 うん、メッセージの部分も美味しい。






 こういう平民たちの訪れるカフェだと、高級な食材などは扱われていない。でもとても美味しいし、普段とは違うワクワクした気持ちになる。聖女になってからはいつも特定の場所で食事をしていて、代り映えのない光景が続いていた。だから

外でご飯を食べるというだけでも楽しいのだ。





「サシャ、凄く美味しいね」






 僕がそう言って笑いかければ、サシャも笑っている。

 サシャが笑ってくれていると、僕も嬉しくなった。






「ウルリカは本当に楽しそうに食べているのぉ」

「うん。だってこうやって外でご飯を食べるのは初めてだからね。サシャとこうやってゆっくり過ごせるだけで僕は嬉しいし、なんだか普段とは違う感じがするなぁって」




 僕の言葉にサシャは笑った。






「サシャ、こうやって笑顔で迎えてくれると嬉しいよね。僕らがこうしてカフェを訪れると喜んでくれるなんて」

「ウルリカがこれだけ楽しんでいるから、余計に皆、喜んでおるのだろう」




 そんな会話を交わしながら、僕たちは食事を進めた。

 パスタを食べてお腹いっぱいになってきたけれど、デザートも頼んだので食べてみる。

 うん、凄く美味しい。

 食べやすくて、ひんやりとしていて……思わず笑みがこぼれる。






 魔法で冷やしているのだろうけれど、これだけ冷たい果物のデザートって美味しいね。しかも見た目もなんだか可愛い感じだった。

 幾ら美味しくても見た目がぐちゃぐちゃだったら食べる気力も無くなってしまったりするもんね。

 美味しいデザートを食べながら、甘いジュースを口にする。

 口の中に甘さが広がって、幸せな気持ちになる。










「これだけ甘くて美味しいものだと皆が食べにくるのも分かるなぁ」






 僕が今食べているデザートはこのカフェでも人気のものだって並んでいる間に聞いた。

 美味しくて手軽で食べられるからこそ、このカフェが大人気なんだなって思う。








「我もこのカフェに来たのははじめてであるが、美味いのぉ」

「ね、美味しいよね」

「それにしてもウルリカはいくつ食べる気だ?」

「んー、いっぱい頼んじゃったから全部食べるよ。でも流石に頼みすぎたかも……」






 パスタはそこまで量が多くないものだった。それでいて食べやすいものだった。だからデザートを沢山頼んでも大丈夫じゃないかなと思っていたのだけど……流石に机一杯に並べられたデザートを見ると頼みすぎたかなという気はしている。






「入らなかったら周りに振る舞うか、持ち帰るか、どちらでもすればいい。我もウルリカが食べきれない分を食べてもいいしな」






 サシャは僕が頼みすぎたことを全く咎めない。どうにでもなるとでもいう風に笑って、なんていうかなんでも受け入れる雰囲気がある。






 僕はサシャに見守られながら、デザートをいくつも食べていく。

 基本的に今の時期によく採れる美味しい果物を使ったものが多いのだけど、同じ果物を使っていても異なる味に仕上げていて凄いななどと思う。

 これだけ一気に甘くて美味しいものを食べるのは僕は初めてだ。










「料理人の人って凄いよね。僕は自分で料理はあんまりしたことないなぁ。聖女になる前は簡単なものを作ったことはあったけれど。サシャは自分で料理とかしたことある? 皇族だからそもそもしない?」

「そうよのぉ。我は料理などしたことはないが、遠征の際は狩った魔物を丸焼きにして食らったりはしておる」








 サシャは女帝という身分だけど、なんていうか自分で戦うことも好きなんだろうなと思う。魔物の丸焼きを食べたりすることが本当に好きなんだなというのが分かる。








「魔物の丸焼きかぁ。結構大きな魔物の体を丸ごと焼くってこと?」

「そうだな。巨大な魔物を串焼きにして一気に焼くのは中々壮観な光景だぞ」

「僕も見てみたいなぁ」








 サシャの言葉を聞いて、その光景を想像してみる。

 巨大な魔物というのがどれだけの大きさのものを指すのかは分からないけれど、そういう丸ごと焼いている光景って面白そうだなと思う。








「では、今度、やってみるか?」

「うん、やってみたいな! でもそれだけ大きな魔物を丸焼きにした後って、どうするの? 皆で食べるの? 凄く大きいなら食べつくせないのかなと思ったのだけど」

「大人数で食べればそのくらいはすぐになくなるぞ」










 大きな魔物――それがどういう見た目をしているか分からないけれど、それを丸焼きにする。きっと香ばしい匂いがして、食欲をくすぐるんだろうな。それに建物の中ではなくて、外で焼くとなると、より一層楽しいのかな。






 そんなことを考えながらデザートを食べていたのだけど、やっぱり頼みすぎて全部は入らなかった。








 少しは持ち帰り、後は他のお客さんにプレゼントと言う形で振る舞った。

 皆、喜んでくれて僕は嬉しかった。


 

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