サシャがお世話になっている武器屋に行く。
「サシャ、街は本当に色んなものが溢れているね。僕、どれもこれも新鮮な気持ちで見ちゃう」
本当に僕にとっては目新しいものが沢山溢れている。どれもこれも僕にとっては知らないものばかり。街によってさまざまな特色があるって話だから、帝都以外だとまた違うものが見られるのかな。
そう考えると楽しみな気持ちがいっぱいになった。
まぁ、そもそも帝都に関しても初めてぶらついている状況だから、楽しみなことが盛りだくさんなわけだけど!
「ウルリカ、此処は我が女帝の位を継ぐ前からお世話になっている場所だ」
「此処って武器屋? 僕、武器屋に来るのも初めてだなぁ」
サシャが連れて行ってくれた場所は、剣のマークの描かれている武器屋であった。
僕は武器屋に来たのは初めてである。それにしても女帝としての地位を継ぐ前からお世話になっていただなんて、なんだかサシャの昔を想像してみると楽しい。サシャはきっと昔から自由気ままで、武器を振り回していたりしたんだろうなぁ。
「ワゼラギよ、久方ぶりに我が訪れたぞ」
サシャはそんなことをいってバンッとその扉を開ける。中には僕ら以外には客が居ない状態。というか、店員も居ない。本当にお店が開いている状態なのかな? などと思っていたらバタバタとこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「サシャ嬢か! 今日はどうした?」
サシャのことを、サシャ嬢などと呼ぶその人は背が低くて、髭が生えていて……僕は初めて見るけどドワーフと言う種族だと思う。確か鍛冶が得意な種族だよね?
僕はその存在は知っていたけれど、会ったことは全くなかった。というか、聖女である僕に人間がほとんどを占める王国で他種族とあわせようとは彼らはしていなかったから。今考えればなんでだろ? 聖女はそういう他種族と会うべきではないみたいな思考だったのかな?
それにしてもサシャのことをサシャ嬢呼びしているなんて、この人は見た目では分からないけれど長生きしているのかな? 種族が違えば見た目では年齢が分からないものだとは聞いたことある。
僕がそんなことを思っていたら、そのワゼラギと呼ばれたドワーフはサシャの後ろに居た僕に目をとめる。
「サシャ嬢よ、この娘はどうした!? 攫ってきてはいかんぞ!」
……サシャが釣れているという点で、僕の事をすぐ聖女だと気づく人は多かった。でもこの人はそのあたりを気づいてないらしい。
というかユエバードも僕が無理やり連れてこられたのではないかと心配していたけれど、僕はそんなにか弱く見えるかな? 僕は自分が本当に許容出来ないぐらい嫌なことならば全力で抵抗をするつもりなんだけどなぁ。
「ワゼラギよ、攫ってなどおらぬ。というかおぬしはやはり噂などには疎いのぉ。我が聖女を連れて帰ってきたことは帝国中で噂になっておるというのに」
「聖女?」
ワゼラギさんはそう言って僕の方を見る。
僕がにっこりと笑いかければ、ぐるんっと顔をサシャの方へと向ける。
「やはり攫ってきたのだろう! 帝国には聖女はおらぬだろう! どこから攫ってきたのだ!」
「同意の元だ。無理やりではない」
「本当か? このような幼気な少女を無理に攫ってきたのでは?」
「……どいつもこいつも我に対して酷いのではないか? 我は同意の元、連れてきた。それとウルリカは聖女ではあるが男である。我と三つしか変わらぬ」
サシャの言葉に驚いた顔をするワゼラギさんは、僕の方をまじまじと見る。
「男? 聖女で、男?」
「はい。はじめまして。僕はウルリカです。ルズノビア王国の意向で男だけど女性として振る舞ってました! ちょっと色々あってサシャに誘われて、この帝国に来たのでよろしくお願いします」
にっこりと笑ってそう言ったら、ワゼラギさんにはなぜか涙ぐまれる。
「男だというのに、女子のふりをさせられていたとは……辛かっただろう」
「え、いや、そこまでは?」
一般的に考えて男でありながら女性のふりをさせられることは、辛いことらしい。僕はそこまで深く考えていなかったし、偉い人たちの言うことは良く分からないなぁとしか思っていなかった。
可愛いと言われることも好きだったし、冤罪で色々言われて面倒なことにはなったけれど、それ以外は平和に過ごしていたと思う。
最も帝国の方が自由が多くて、楽しいなと思っているけれど。何よりサシャがいるしね。
「そんな風に強がらなくても良い」
そんな風に言われたので、本当に気にしてないというのを伝えるのに時間がかかった。僕が「可愛いって周りに言ってもらえるのは嬉しいことでしたからね」とにこにこと笑っていたら、「おぬしはそういう性格か」と呆れたように言っていた。
あとサシャに呼び捨てとため口を利いているのを見て、ため口でいいとは言われたのでそうすることにする。
「僕、武器屋来たの初めてだから、色々見ていい?」
「もちろんだ。ただ気をつけるように。これらはあくまで武器であるから、怪我をする恐れはある」
「うん。もちろん。まぁ、ちょっとした怪我なら自分で治しちゃうけれど」
僕はそう言って笑って、並べられている武器を見て回ることにした。
これだけ沢山の武器が並べられているのを見るのも初めてだから、僕は店内を見渡すだけでワクワクした気持ちでいっぱいになっていた。
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