二人で歩いていると凄く注目を浴びる

「サシャ様だ」

「陛下が一緒におられる方はもしかして聖女様?」




 サシャと一緒に帝都を歩いていると、視線が凄い。

 サシャはこの帝国をおさめる女帝だから当然だよね。ちなみにね、護衛たちはひっそりついているので、傍目から見ると僕とサシャが二人で歩いているように見える。

 道行く人が道をばって開けてくれるから、サシャ効果は凄いよね。




 あとサシャは帝都に凄くなじんでいるみたい。昔から帝都によく顔を出していたりしたのかな?




 サシャに対して悪い感情で視線を向けている人が居なくて、僕はそれが嬉しい。まぁ、もちろんサシャは女帝として色々行動して、目立つ人だからサシャのことを気に食わない人もいるとは思う。全員から好かれる人が居るとは思わないから。そういう人が出てきたら僕はサシャの味方をしたいな。






「サシャ、まずは僕がおすすめされた場所に連れて行くね? 僕も初めて行くからドキドキするなぁ」

「ああ」






 こうやって街中を普通に歩くのも僕にとっては聖女になってからは一度もなかったことだ。

 だからなんというか、僕は凄く自由を感じているというか、開放的な気分。外をこんな風にのんびりと歩いて、横にサシャがいる状況って、とても楽しい!!








「あれが聖女様? 本当に男なのかしら?」

「あんなに可愛いのに男? 嘘だろ?」

「陛下の手を引いてにこにこしてて、可愛い……」






 僕のことは皆、可愛い可愛いと口にしてくれている。やっぱり僕の可愛さは国が違っても通じるものなんだなと思った。

 目があった帝国民ににっこりと笑いかけてみる。

 きゃーきゃー騒ぎ出して、僕は気分がよくなった。








「ウルリカよ、あまりにも笑顔を安売りするな。おぬしは可愛いからそのようなことばかりはせぬほうがいい」

「大丈夫だよー。サシャが守ってくれるでしょ? それにここの帝都の人たちってサシャのことが皆、大好きなんだなって分かるから僕と同じだなって嬉しくなちゃって」




 この帝都の人たちは、サシャに好意的な目を向けている人ばかりだ。




 だからこそ僕と同じなんだなと思うと、僕は帝都民たちに好感を持ってしまう。単純だと思うけれど、サシャのことを慕ってくれている帝都民たちが僕の笑顔一つで喜んでくれるならば嬉しいしね。






 僕は侍女から渡された地図を左手に持ちながら、サシャの手を引いて歩く。






「うーん」






 しかし分かりやすい地図を書いてもらったとしても、初めての場所なので僕は道が途中で分からなくなる。

 帝都は広々としていて、お店も沢山ありすぎる。








「道に迷ったのか? 我が地図を見る」

「うん……。ごめんね、サシャ。これで案内を上手く出来ればかっこよかったんだろうけれど、難しくて」

「そんな風に落ち込むな。ウルリカはこうして街を出歩くのも初めてに近いだろう。それならば地図をもらっても分からないのも無理はない」






 サシャはそう言いながら優しく笑って地図を見る。




 サシャは地図を見るのも得意なのかな? 考えてみるとサシャって戦いの場に出たりもするから、そこで道に迷ったりしたら大惨事だもんね。そういう土地の感覚というか、地図を見る能力が凄く高いのかも。




 僕より少し年上なだけなのに、サシャって色んな経験をしているんだなとサシャと一緒に過ごしているとよく思う。




「ウルリカ、こっちだ」






 サシャに手を引かれるままに、僕はそちらに向かう。


 帝都は人が多いから、サシャは僕が迷子にならないように手を強く握ってくれている。まぁ、道を皆開けてくれているから逸れる心配は少なさそうだけど。






「……ウルリカ、此処か?」

「うん!! 可愛い物がいっぱい置いてあるんだって」

「そうか。我はこういう店には入ったことはないな……」

「サシャが好きそうなものもいっぱいあると思うよ?」






 僕たちが辿り着いたのは、侍女たちが日用品を時々買いに来るというお店。お店の外観も可愛い感じで、僕はその外観を見ただけで気に入った。

 僕とサシャがお店の中に入ると、当然、店員はあたふたしていた。サシャは帝都には顔を出しているみたいだけど、こういうお店に顔を出すことなかったみたいだからね。








「あ、あなたは聖女様ですか?」

「うん。僕は聖女だよ。侍女たちから可愛いものが沢山売ってあるって聞いたから来たの」






 話しかけられて、そう言って笑いかければその店員も嬉しそうに笑った。






「それは有難いことです! 聖女様に似合うものをお持ちしますね。是非、身に付けて欲しいです」

「うん。僕に似合うものは持ってきて欲しいんだけど、それだけじゃなくてサシャに似合うものも持ってきて欲しいんだ」




 僕がそう言って笑うと、驚いた顔をされる。




「ウルリカ、我の分は良い」

「僕がサシャに可愛いもの身に付けて欲しいもん。だから、ね? 身に付けなくてもいいけれど、プレゼントはしたいな。駄目?」

「……分かった。しかしプレゼント?」

「うん。ユエバードからね、お手伝いの報酬もらったの。折角のデートだし、プレゼントあげたいなって。僕はサシャに色々買ってあげたいなって思ってるよ。他のものも上げたいなって思うけれど、まずは最初のプレゼントってことで!」






 僕がにこにこと笑ってそう言ったら、サシャは僕のやりたいようにさせてくれようとしているのか頷いてくれた。






 さて、サシャに初めてのプレゼントをするぞー!

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