お出かけの準備をする。

 無事に報酬を受け取った僕は、にこにこしながらデートの準備をすることにした。

 だって、僕はデートするの初めてだから、どんな風にしていこうか悩んでしまう。世事よとして相応しい恰好を求められてきたから、自分でお出かけの服を選んだりしたことないし。






「ウルリカ様、陛下とのお出かけでは女の子の恰好はなさらないのですか?」




 ウィメリーにそんなことを問いかけられる。




「しないよ! だって折角のデートだよ! まぁ、可愛い恰好をしてサシャとデートをするのも楽しいと思うけれど、初めてのデートなのだから男の恰好はしたいなぁ」






 僕がそう言ったら、ウィメリーが少し驚いた顔をする。






「どうして驚いているの?」

「ウルリカ様はてっきり可愛らしい恰好をするのが好きなのかと思っていたので」

「好きだよ? 僕は可愛いから、女の子の恰好も凄く似合うからね。でも僕がそういう恰好を好きなのと、男としての恰好をしないというのはイコールにはならないでしょ?」






 僕は別に常日頃から可愛い恰好をした自分しか受け入れないとかそういうわけじゃない。そもそもどれだけ男の恰好をしていても僕の可愛さは損なわれないと思うけれど。






「そうですか。ウルリカ様にはどのような恰好だって似合いそうですね」

「ありがとう。僕もそう思う。僕にはきっとどんな恰好でも似合うって思っているんだ。あ、でもウルリカは僕が可愛い恰好してないとがっかりするかな?」








 僕は折角のデートだから、女の子のような恰好じゃない方がいいなと思っているけれど、もしかしたらサシャは僕が可愛い恰好をしている方が喜ぶのだろうか? 




「いえ、陛下はどのような恰好であっても気にしないと思います」

「それならよかった!」






 僕が笑えば、ウィメリーも笑ってくれる。




 それから僕はウィメリーや侍女たちにサシャとのデートに着ていく服を用意してもらった。動きやすそうで、それでいてかっこいい服装を選べたので僕は満足している。

 折角のデートだからサシャが可愛い服を着てくれると嬉しいけれど、流石に人前でそういう服を着たくないと言っていたサシャは着ないだろう。なんだか僕だけ張り切っているみたいだけど、まぁ、実際に僕はとても張り切っているのでいいかと思っている。






「ねぇ、デートの時のコツとかってあるのかな?」






 僕は周りにそのあたりも聞いておくことになった。






 初めてのデートの相手がサシャだというとても幸運な機会に恵まれたのだから

 僕だけが楽しむのもアレだよね。

 僕は外のことなんて分からないから基本的にサシャに案内してもらうことにはなる。でもだからってサシャに全部任せっぱなしにするつもりはない。僕だけが楽しんでいてサシャが楽しんでいないなんていう状況は嫌だしね。




「コツですが……ご本人たちが楽しむのが一番だと思いますが」

「サシャ様とのお出かけをデートだというのならば、ぜひ、手は繋ぎましょう。サシャ様のことをドキリっとさせてあげましょう」

「帝都内を見て回る予定なのですよね? それでしたらお勧めのお店を教えますよ」






 僕が問いかけたら、それぞれそう答えてくれる。

 なんというか、皆僕に凄く好意的で色んなことを教えてくれる。






「サシャ様も男性とデートをなさることは初めてだと思いますよ」

「そうなの?」




 一人の侍女の言葉に僕は驚いてしまった。






 サシャはあんなに綺麗で可愛い女の子で、その産まれも高貴なものだ。そんなサシャもデートが初めてなのだろかと不思議に思った。




「サシャ様は近寄りがたい雰囲気のある方ですから。それに女帝という立場のサシャ様と釣り合うだけの身分の男性もそこまでいらっしゃいませんからね。そういう男性もサシャ様に対して怖れや敬意を持ち、間違ってもデートに誘うなど考えられないのだと思います。私も自分が貴族の男性だったら……と考えると、仮にサシャ様にそういう感情を抱いていたとしても声はかけられないものだと思います」




 サシャは高嶺の花のような存在なのだろうなと思った。




 綺麗で可愛くて、この帝国一の身分を持ち合わせていて。だからこそ、おいそれとデートに誘ったり出来ないのかもしれない。

 でもなんだか本当に見る目がないというか、この国の男たちはもったいないことをするなぁって思う。

 サシャはあんなに可愛くて綺麗なのに。





 彼らが意気地なしだったからこそ、サシャの初デートの相手を僕がもらえるわけだけど。






「サシャは可愛い女の子なのにね。やっぱりサシャが女帝だから皆遠慮しているのかな?」

「そんなことを躊躇いもせずに言えるウルリカ様だからこそ、サシャ様とデート出来るんだと思います。サシャ様はきっと女帝と言う立場がなかったとしても、異性からは距離を置かれていたと思いますから」

「ふぅん」






 僕はサシャのことが可愛い女の子にしか見えないけれど、そういう風にサシャを見ない人ばかりのようだ。




「まぁ、いいや! サシャにとっても初めてのデートだっていうのならば僕だけじゃなくてサシャも思いっきり楽しめるようにしなきゃね。だから楽しむための事前情報もっと教えてね」


 僕がそう言ったら、周りは頷いて沢山のことを教えてくれた。






 そうやって僕はデートを楽しむための情報を山ほど手に入れるのであった。


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