二人きりで出かけるってそれってもうデートだよね?
僕はサシャと一緒に出掛けられるんだと楽しみで仕方がない。
だってさ、僕はお出かけをするというのも聖女に選ばれてから全然していなかったからね。自分で何かを買うとかもしていなかったし……とそこまで考えてはっとする。
僕、自分でどうにか出来るお金持ってないな……。
今まで必要もなかったからあれだけど、自分で自由に出来るお金があった方がいいかもしれない。今だって全部サシャに面倒を見てもらっている状態だし。
そういうわけで僕はユエバードの元へと向かった。
「ねぇ、ユエバード。サシャと出かけることになったけれど、僕、お金持ってないんだ」
「サシャ様と一緒に行かれるのでしょう? ならお金の心配は一切いらないと思いますが」
仕事中のユエバードに声をかければそんな風に言われてしまう。
言っていることは最もなのだけど、僕は自分の自由に出来るお金が欲しいなぁと思う。
「うーん、でもサシャとのお出かけってデートってことでしょ? 僕、それで女の子にお金払ってばかりはなんだかなって思っちゃったりする」
そう、二人きりで出かけるということはそれはもうデートだと思う。
まぁ、サシャは女帝だし、僕は聖女だから護衛はもちろんついてくるだろうけれどもそれでも周りから見て二人でお出かけに見えるならデートじゃない?
僕はデートなんてしたことがないけれど、僕がエスコートするものじゃないの? 最も僕は外の世界なんて知らないから、エスコートされる側かもだけどさ!!
「ふはっ」
ユエバードは僕の言葉を聞いておかしそうに笑った。
何がおかしいんだろう?
「本当にウルリカ様は面白い方ですね。サシャ様の立場や強さを知った上で、本当に一人の女の子扱いしていますよね」
「だってサシャは女帝だとか、強いだとかそういうのを抜きにして一人の可愛い女の子じゃん」
僕はユエバードの言うことがいまいち分からなくて、不思議に思ってしまう。
「そうやって割り切って考えられることが凄いことですよ。そういう当たり前のことが頭にあったとしても、どうしても前に出ている肩書や目立つ点を人はどうしても見てしまうものですから」
「そういうもの?」
「はい。そういうものです。それと自由になるお金が欲しいということですが、私のお手伝いをしませんか? それで報酬を払います。他にもウルリカ様がお金を稼げる仕組みはこちらで考えますね。ウルリカ様も何もしていないのにもらいにくいでしょう?」
「本当? ありがとう!!」
僕はユエバードの言葉に嬉しくなって、にっこりと笑ってお礼を言った。
そういうわけで僕はユエバードのお手伝いをすることにした。ちなみにこの前やったお手伝いの分も報酬上乗せしてくれるって言ってくれた。
「僕、お金の価値もなんとなくしか知らないんだけど……」
「それもあわせて教えますね。ウルリカ様は聖女になる前は孤児だったんでしたっけ?」
「うん。孤児院に居たけれど、僕が聖女に選ばれるまで凄く環境が悪かったんだ。それで自分のお金なんてなかったしなぁ」
「……ウルリカ様は本当に苦労していらっしゃいますよね。お出かけも久しぶりなんですよね?」
「うん。孤児院にいた頃はそんな余裕なかったし、聖女になってからは聖女としての出る必要があるときしか出てなかったもん。僕は女としてルズノビア王国では振る舞っていたし、女の子とデートするなんて考えられなかったし」
それにしてもたまたま僕が凄く可愛かくて、身長も低いから女の子として振る舞うことが出来ていたけれど……、僕がもっと子供の頃は可愛かったけれど男らしくなるタイプの成長をする人間だったらごまかせなかっただろうなと思う。
僕が例えば誰かと恋仲になることも、僕が女の子として振る舞っているのもあってあの国では許されなかっただろうし。歴代の聖女は王族や貴族に娶られていったりしていたみたいだけど。性別偽っているとそうもいかないし。事情を知らない相手と結婚となると詐欺だしね。僕が男だと広められないままに男性に嫁ぐだと、向こうが事情を知っていたとしてもかなり気まずいよね……。
僕はユエバードと話しながら、お手伝いの内容も聞いた。
そのお手伝いの最中に他の文官たちとも沢山話した。僕が可愛いからにっこりと笑うと、男性も女性も顔を赤くしていた。僕よりもお姉さんな文官が「可愛い…っ」と呟いていたのもちゃんと聞こえていた。
帝国は女性の文官や騎士もそれなりにいそうだった。
国によってはその割合って全然違うっぽいけど。この帝国はトップがサシャっていう女帝だからというのもあるだろうね。
「ウルリカ、何しているの?」
「お小遣い稼ぎ!」
「お金居るなら珍しいものあげようか? 売れるよ?」
途中でやってきたブリギッドにはそう言われたけれど、首を振った。だって他の人からもらったものでデートするってなんか格好付かない気がするし。
「確かに異性でお出かけは人間の間ではデートっていうわね。サシャがいるなら大丈夫だろうし、私はデートの邪魔しないようにお留守番しているわ」
「うん、そうして! でも本当に何かピンチだったら呼ぶかも」
「それは構わないわ。どれだけ楽しいデートだったか、ちゃんと私に教えてね」
「うん! もちろん! それにしても僕、デートって初めてだから楽しみなんだ」
僕がそう言ってにこにこと笑えば、ブリギッドも笑ってくれた。
それからお手伝いを完遂させて、僕は無事に報酬をゲットした。
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