三人で可愛い恰好に着替える

 騎士たちの前で僕の障壁やブリギッドの力を確認した翌日、僕たちは衣裳部屋に居た。




 皇族の衣装部屋ってこんなに広いんだなぁって僕はびっくりしている。

 衣裳部屋の中には様々な服がおかれている。サシャはドレスなどを全然着ないからか、そのあたりはほとんどない。その数少ないドレスもサシャは全然着ないらしい。




 ちなみに驚くことにたった一日で、僕が指定した衣装を準備してくれたらしいんだよね。それも最初は僕とサシャだけ着る予定だったけれど、今はブリギッドも来たから三人分用意してもらうことになった。急遽だったのに、三人分用意しているって本当に凄いよね。






「……我が、本当にこのようなものを着るのか?」




 サシャは用意してもらったその服を前に、何とも言えない表情をしている。




「うん。サシャが着るんだよ。凄く似合うと思う。ね、ブリギッド」

「そうね。サシャは可愛いから似合うはずだわ」

「こういう恰好を今までしてこなかったのがもったいないよねー」

「そうよね。もったいないわ。それにしてもウルリカと同じ格好をするなんて初めてだから嬉しい」





 僕とブリギッドは、サシャに向かってそう言って笑いかける。




 ちなみにルズノビア王国では、僕は常に同じ格好だったんだよね。聖女らしい白装束。その恰好が神秘的だとか、そんな風に言われていたけれど他の恰好が出来るのっていいよね。

 なんか聖女らしい恰好をみたいに制限されていたから、なんだか楽しい。

 ブリギッドは精霊だし、着替えとかは必要いない。でも今回、僕と一緒の恰好が出来るのは嬉しいみたい。

 親しい人と一緒の恰好が出来るのって凄く良いことだよね。






「ほら、サシャ、皆で着替えにいこうね。一緒にお披露目だよ」

「そうよ。サシャはウルリカと一緒ならそういう服も着るって約束したんでしょ? なら着て」






 二人してそう言ったら、サシャが諦めて頷いた。




 その後、それぞれで着替える。侍女たちが着替えを手伝ってくれた。まぁ、ブリギッドはそういう手伝いなんてなくても着替えられそうだけど、面白いからって侍女に手伝ってもらったみたい。




「ウルリカ様、とても可愛いです」

「お似合いです。髪型も変えていいですか?」



 侍女たちからそう言われたので、頷いておく。




 僕は髪は長く伸ばしているけれど、髪型を変えたことはない。これもルズノビア王国にとっては聖女として相応しい恰好というのがあって、髪型は結ばず降ろしたままの方が良かったから。

 帝国に来てより一層思ったけれど、ルズノビア王国って聖女らしくあるべきって言いすぎだよね? 歴代の聖女もこんな感じだったのかなぁ。本当に大変だなぁって思う。




 僕は自分の可愛さを利用してルズノビア王国でも自分が生きやすいようにはしていた。でも歴代の聖女の中にはそういう風に出来ない人もいたんじゃないかなって思う。

 僕はそんなことを考えながら、侍女たちにされるがままで髪型をいじってもらう。






 サシャやブリギッドの髪もいじってくれているのかな? 二人の違う一面が見れるかなって思うと僕は楽しみで仕方がない。





 というかこの帝国だと僕が男だって皆知っているわけだし、髪切ってもいいのかなぁ。

 髪を短くしても僕の可愛さは損なわれないし、髪型も自由にしていいならそれもいいかも。この国にやってきたから心機一転ということで切ろうかなぁ。

 僕もあえて女の子と思われたいわけじゃないしね。見た目はどれだけ可愛くても僕が男なことには変わりないし。

 そんなことを考えている間に、髪型を整えるのが終わったみたい。






「わぁ、僕、こういう髪型も似合うんだね、可愛い」




 長い髪を上の方で一つのお団子にして、まとまらなかった部分の髪はそのままたらしている。うん、僕、可愛い。

 こういうのは髪が長いからこそできることかも。でも短くもしたいなぁ。髪が短くても髪型は色々変えられるだろうし。




「ありがとう」




 僕がお礼を言うと侍女たちはにこにこと笑ってくれた。

 着替えて、髪型も整えてもらった僕はそのままサシャとブリギッドの元へと向かう。




「ウルリカ、凄く可愛い!!」




 僕が向かった時には、もうブリギッドはそこに来ていて僕の姿を見るなり飛びついてきた。

 ブリギッドも可愛い髪型をしている。左右の耳の横で髪を結んでいて良く似合っている。

 ブリギッドも髪型を変えたり今までしてなかったから、こういう髪型を見れて楽しいなぁ。






「ありがとう。ブリギッドも凄く可愛い」




 二人で可愛いと言いあって笑いあう。

 それはもちろん楽しいのだけど、サシャはまだかな?






「サシャ、まだかなぁ。可愛いサシャ楽しみなのに」

「私も楽しみ。きっと似合うもの」

「ね、絶対に似合うよね。サシャも可愛い髪型しているかな? サシャって髪は女性にしては短めだけど、侍女たちの腕なら可愛い髪型にしてくれると思うんだよね」

「そう思うわ。ここの人間たちは腕が良いわ」






 ブリギッドと一緒にサシャが来るのは楽しみだなと話しているけれど、まだサシャは来ない。




 そうしていると、


「サシャ様は恥ずかしがっていて、こちらに来るのに時間がかかっています」



 と侍女の一人に言われたので僕とブリギッドはサシャの元へそのまま向かうことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る