守護精霊の力のこと
「ウルリカは凄いな。しかし我はいつかその障壁も打ち破れるぐらいに強くなってみせよう!」
サシャは僕の力を称賛した上で、そう言い放つ。
おそらくサシャって負けず嫌いなのかなと思う。
女帝として広まっているサシャはもう少し余裕があるイメージというか、何にも動じることなく冷静な為政者って感じがする。岩か何かみたいに不動なそういう感じ。でも実際のサシャはそうではないんだなと思う。
思えば僕も聖女だからといって様々なイメージを押し付けられたりしていた。それこそ聖女とはこうあるべきみたいなそういうのを決めつけられていて、それは実際の僕と違うのになといつも思っていた。
それと同じくサシャも噂されている姿と実際の姿は違ったりするんだなと思わず頬が緩んでしまう。
僕は噂されている厳格で怖い女帝であるサシャよりもこうやって年相応で可愛い女の子であるサシャの方が好きだなって思う。噂の通りよりも、実際の姿の方が好ましく思えるって良いことだよね。
「楽しみにしてるね。僕ももっと、サシャに打ち破られないように強いものにするね」
僕も自分が思っているよりもずっと負けず嫌いだったのかもしれない。僕って誰かに対抗されることってあまりなかったから自分では気づいていなかったけれど、サシャから打ち破るなんて言われたら負けたくないなって思ったんだ。
だって僕はサシャみたいに戦う力は持たなくて、サシャに敵わない部分って結構あると思う。僕のことはサシャが守ってくれると言ってくれているけれど、なんだろう、全部サシャにまかせっきりは僕は嫌だと思う。
僕が自分で出来ることはちゃんと磨いておきたいなってそう思う。それで何かあった時にサシャの役に立てれば一番いいよね。
「それにしても、守護精霊は壊れた物を修復も出来るんだな」
「私は土や風の属性と相性がいいから。ウルリカの障壁が硬いのも私の影響があると思うわ」
「そうなのか。それは素晴らしいな。精霊には相性の良い属性などがあるのだな」
サシャはブリギッドに興味深そうに話しかけている。
僕はブリギッドの選んだ聖人だから、繋がっている。なので、どちらかに何かがあれば少し大変なことになったりする。逆に互いに良い影響も与えあったりしているけどね!
「サシャ、ブリギッドは土地との結びつきでもっと力を強められるから、そういう場所を作ってもいい?」
「そうなのか? それなら、作って構わない」
「サシャっておおらかというか、色んなことを受け入れてくれるよね。僕やブリギッドがそういう力を持っているって怖がる人もいるのに」
僕とブリギッドはルズノビア王国の聖人と守護精霊だったわけだけど、実際にその力を目の当たりにすると怯える人もいたりする。聖女や精霊に対する信仰があの国は強いから表立ってそういうことを言う人はあまりいなかったけれど、でも実際にどんな力を持っているかと知ると怯えている人は少なからずいたんじゃないかな。
あの国の上層部でも僕とブリギッドが自由人だから、いつか国から去るのではないかとか国に対して反逆でもするのではないかとかそういう心配をしていた人っていたと思う。
サシャってそういうことを不安に思ったりしないんだ。その目を見ていたら、本気でブリギッドの力が強まるのを嫌がっていないのが分かる。
「怖がったりなどせぬ。二人が力を持つことは良いことであろう」
「僕たちがルズノビア王国からこっちに移動したみたいに、帝国からいなくなったらとか考えない?」
「それは我らが帝国に居たいと二人に思わせなかったのが悪いだろう。ウルリカもブリギッドも理由がなければ国を去るなどせんだろう」
サシャはやっぱり凄いなと僕は思う。サシャはそういうのを受け入れるだけの強さを持っていて、多分、僕たちがこの国から去ったとしても僕たちのことを恨んだりとかしないんだろうなぁ。
うん、僕はこういう性格のサシャに対して好感を抱いている。
「そっか。サシャはやっぱり凄いね。僕、サシャのこと、大好きだなって思うよ」
「……ウルリカよ、好意を伝えてくれるのは嬉しいがあまりにも好き好き言いまわるとよからぬ展開になるぞ?」
「僕だって言う人は選んでるよー。昔、問題になったことあるからね!」
好意を伝えるのは良いことではあるのだ。でも時にそれは勘違いをうんで、面倒なことになったりもする。可愛い僕を自分の物にしたい的な感情で暴走した人もいるのだ。
僕は可愛いからこそ、そういうのはちゃんと気をつけなければならない。
でもサシャはそういう暴走はしないんだろうなって僕は思っている。
サシャはなんだかんだ冷静なのだ。自分の状況や感情を整理して、最善の行動を起こす。
多分、サシャはそういう人なんだろうなって僕は思っている。
「僕ね、サシャの好きなところ沢山言えるんだよ。サシャはとっても可愛くて素敵な女の子なんだから、沢山伝えるね?」
「……恥ずかしい」
「恥ずかしがっているサシャが可愛いなーって思うんだよ。僕ね、サシャの可愛いところもかっこいい所もいいなって思うもん」
僕がにこにこと笑ってそう言ったら、またサシャが照れていた。
ちなみに照れているサシャを見て、騎士たちは驚いた顔をしていた。あんまりこういう姿、周りに見せてないのかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます